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12月18日
●Matech Ford GTは2月発表       ルマンへの参加も表明

Photo:Matech-Concept

 2010年にスタートするFIAGT1チャンピオンシップは、現在たった3種類の新制GT1カーではシリーズを行うことが不可能であるため、現在従来のGT1カーをダウングレードすることで参加台数を確保しようとしている。
 たった3種類の新制GT1カーの中で、真っ先に参入を表明したのが、スイスを拠点とするMatechだった。

 Matechは今年フォードGTのGT3カーをベースとしたGT1カーを開発して、幾つかのレースに出走させている。新制GT1カテゴリー自体、元々のコンセプトは、ロードカーの延長線上に存在するGT3カーの上級クラスであるから、Matechの行動は至極当然なものだった。ところが、その後新制GT1カーは、ロードカーとはまったく違う専用マシンでも参加出来ることが明らかとなって、Matechの戦略が的を得たものではないことが明らかとなった。
 そのため、Matechは完全に新しいGT1バージョンを開発している。現在パワートレイン、サスペンション、空力を中心として開発を行っており、2月に発表される。
 Matechは、2010年にスタートするFIAGT1チャンピオンシップだけでなく、ルマン24時間レースへの参加も表明した。


12月17日
●2010年ORECAがプジョー908を走らせる 2011年にプジョーはエンジン供給の可能性を示唆

Photo:Peugeot-Media

 これまでプジョーは、2010年に908を走らせることを希望するたくさんのレーシングチームと話し合ってきた。つい最近まで、アキュラのワークスチームとして2009年のALMSタイトルを獲得したハイクロフトが走らせることも噂されていた。17日プジョーは、2010年にプジョー908の2010年バージョンを走らせるのはORECAであることを発表した。
 2010年のルマン24時間とLMSでORECAはプジョー908を走らせる。

 2010年についてプジョーが発表したのは、これだけで、この内容をそのまま鵜呑みにしてしまうと、2010年にプジョー908を走らせるのはORECAだけで、プジョースポールは存在しないことになってしまう。もちろん、2週間前のテストで明らかとなったように、少なくともルマンではプジョースポーツが3台の908を走らせる。

 同時にプジョーは「2010年の(ORECAとの)ジョイントが、2011年にプジョーエンジンを供給する未来に繋がる」と、非常に興味深い発言を行っている。

 現在のORECAはフランス最大のコンストラクターだ。セアトのWRCプログラムやWTCCプログラム、現在プライベートチームのサポートだけとなったサリーンのGT1プロジェクト、そして2年前ACOを仲介してクラージュを傘下に治めて、ORECA自身によるLMPプロジェクトを行っている。LMPプロジェクトは、クラージュ買収によって必然的に手に入れたクラージュLC70のモノコックを使って、それ以外を開発したORECA01を走らせている。
 ORECA01にはAIMエンジンが組み合わされていることはご存じだろう。

 クラージュを買収しなくても、ORECAは、自身によって、充分にLMPカーを開発する能力を持っている。5年前までダラーラに委託してマシンを開発して、それにクライスラーのプッシュロッドエンジンを組み合わせるプロジェクトを行っていた。その時もORECAが求めたのはワークスエンジンだった。クライスラーのポテンシャルに幻滅した後、2005年ORECAはアウディR8を走らせている。アラン・マクニッシュが乗り組んだことでも明らかなように、少なくともヨーロッパにおけるアウディのワークスチームを目指していた。

 たぶん2011年に、プジョーは自身のワークスチームだけでなく、プライベートチームに対して、噂の3.7ℓV8ディーゼルターボエンジンを供給する計画を持っているのだろう。そのプロジェクトを実現するキーマンがORECAなのだろう。
  プジョーの発表に併せてORECAも記者会見を行って、2011年に向けてORECA02の開発を開始したことを公表した。
 既にペスカロロは青息吐息の状態で、よほどの幸運が訪れない限り、2010年に活動する可能性はない。しかし、ORECAがプジョー908を走らせることで、AIMエンジンはどうなってしまうのだろうか?

12月16日
●2010ルマン24時間レースのエントリー受付は12月21日〜1月20日まで

Photo:Peugeot-Media

 15日ACOは2010年ルマン24時間レースのエントリー受付について発表を行った。既にエントリーフォームについては発表されているため、一般に対する発表と言うべきかもしれない。
 エントリーの受付は来週月曜日21日に開始して、2010年1月20日水曜日に締め切られる。
 既に2009年の成績によってエントリーを行う権利を有する29チームは、2010年1月11日までにエントリーを表明してエントリー申請を行うことが、エントリーを確定する条件となる。

 受け付けられたエントリーは、ACO会長のジャン・クロード・プラサートを責任者とする選考委員会によって審査され、1月末に2010年のルマン24時間レースの55台のエントリーリストが発表される。既に29台が決定しているため、残りの26台の枠を巡って熾烈な闘いが繰り広げられることだろう。
 ドライバーについては、エントリー申請時に各々のクルマ毎1名は名前を登録しなければならない。この1名はエントリーが受け付けられた後も変更することが出来ない。他の2名のドライバーについては、LMSスパ-フランコルシャン1000km終了後の5月12日までに登録しなければならない。

 2月1日以降エントリーを取り消すチームが現れることを考慮して、10台のリザーブリストも同時に発表されるが、GTとLMPを別として、リザーブリストは2つ発表される。この理由は、LMPのチームがエントリーを取り消しても繰り上げとなるチームは常にLMPで、同様にGTのチームがエントリーを取り消した場合繰り上げとなるチームは常にGTとすることで、カテゴリー毎のクルマが偏ることを防ぐためだ。

12月14日
●2010FIAGT1ワールドチャンピオンシップカレンダー確定

Photo:FIAGT-DPPI

 2ヶ月前ステファン・ラテルは2010年のFIAGT1ワールドチャンピオンシップのカレンダーを公表した。しかし、新制GT1マシンはニッサンGTR、Match-フォードGT、レイター-ランボルギーニガイヤルドの3車しか存在しないため、エントリーを集まらないと考えられていた。そのため、公表されたカレンダーの多くは開催が不安視されていた。
 その後カレンダーの見直しが行われ、12月11日FIAのワールドカウンシルで10のイベントが承認された。

Rd1 4月4日 ヤスマリーナ(UAE)
Rd2 5月2日 シルバーストーン(GB)
Rd3 5月23日ブルノ(CZE)
Rd4 7月4日 ポールリカール(F)*ASNの承認が必要
Rd5 8月1日 スパ-フランコルシャン24h(B)
Rd6 8月29日ニュルブルクリンク(D)
Rd7 9月19日ポルトマヨ(P)
Rd8 11月7日ダーバン(ZAF)*ASNの承認が必要
Rd9 11月28日インテルラゴス(BR)
Rd10 12月5日サンルイ(ARG)

12月9日
●早くもアウディがIntercontinental LeMans Cup 2010への参戦を発表

Photo:AUDI AG

 ACOはインターコンチネンタル・ルマン・カップ2010に関する発表を12月8日午後8時45分に行ったが、その35分前アウディは、インゴルシュタッドにおいて、インターコンチネンタル・ルマン・カップ2010への参戦を表明した。

 2009年はアウディにとって100周年だった。DTMでチャンピオンを獲得する一方、R15 LMP1カーやR8LMS GT3カーによって新たな活動を行っている。
 2010年のアウディスポーツは、アウディスポーツ・チーム・ヨーストによってR15を走らせる。ルマンへは3台、そしてインターコンチネンタル・ルマン・カップ2010へは2台を送り込む。インターコンチネンタル・ルマン・カップ2010のルールは5レース以上への参加だが、残りの2レースについて、5月に行われるスパ-フランコルシャン1000kmへの参加だけが決まっているようだが、たぶん、もう1つはセブリングだろう。
 現在R15 プラスと呼ばれるR15の改良型の開発が進められていることも公表された。

 もちろん、DTMとR8LMS GT3カーによる活動も継続される。R8LMSについては、新たに2010年3月末までに298,000ユーロで20台をデリバリーすることも公表された。2010年北アメリカのALMSのGT3カップは、ポルシェ以外のGT3カーのデリバリーが間に合わないため、ポルシェのワンメークとなりそうだが、もしかしたら、当初の目論み通りオープンカテゴリーとしてGT3カップは実施可能となるかもしれない。

12月9日
●Intercontinental LeMans Cup 2010開催 世界選手権化への第一歩


 12月8日ACOは全世界に向けてプレスレリースを発送した。ご丁寧にもフランス時間12月8日午後8時45分以降に公開する旨の注意書きが添えられていた。
 そうして発表されたのが、インターコンチネンタル・ルマン・カップ2010だった。
 インターコンチネンタル・ルマン・カップ2010は、LMP1クラスのみを対象として、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいてルマンの名前の下に行われている各ルマンシリーズの内の3つのレース、LMS最終戦シルバーストーン(9月13日)、ALMS最終戦“プチ-ルマン”(10月2日)、11月に行われるアジアンルマンシリーズで構成される。

 インターコンチネンタル・ルマン・カップ2010は、2011年にACOが創設するワールド・トロフィーに先駆けだ。ACOは、2011年のワールド・トロフィーについて2010年3月末までに詳細を発表する。2011年のワールド・トロフィーは、2011年に施行される(3.4ℓエンジンの)新しいLMP1レギュレーションによって争われ、6レース以上で構成される。

 インターコンチネンタル・ルマン・カップ2010に参加するLMP1クラスのエントラントは、2010年2月末までに参加の意思を表明しなければならない。対象となるレースは3つだけだが、ルマンの名前の下に行われる3つのルマンシリーズ中、ルマン24時間レースを除く、最低5レースに参加することが条件となる。

 いよいよACOは世界選手権への第一歩を踏み出したようだ。英語とフランス語だけでなく日本語でも発表したことから推測すると、2010年のアジアンルマンシリーズが日本で行われるのも間違いないようだ。

12月6日
●総ての2010年LMSカレンダー決定 世界選手権化は見送り 夏にヨーロッパでのみ行われる

Photo:Sports-Car Racing

 10月ACOは、2010年のLMSのカレンダーの3/5を発表した。発表されなかった残りの2つについても、1つは7月に、もう1つは11月に行われることを公表していた。7月のカレンダーは、2009年に契約が切れたニュルブルクリンクか、2009年初開催されたアルガルブのナイトレースであることが予想されていた。
 ニュルブルクリンクは従来通り8月末にFIAGT1ワールドチャンピオンシップとダブルタイトルで1000kmレースを行うことを主張していた。FIAGT1ワールドチャンピオンシップは、エントリーが集まるとは考えられない状況だったため、ニュルブルクリンクが保険の目的を持っていることは明らかだった。元々ACOは、ポルトガルのアルガルブで7月に開催することを交渉していたため、もし、8月末にニュルブルクリンクでFIAGT1ワールドチャンピオンシップとのダブルタイトルレースを行うのであれば、1レース追加しなければならない。
 資金の割り振り等様々な駆け引きが行われたのだろうが、ACOは旨みがないと判断したようで、ニュルブルクリンクでの開催を諦めて、7月アルガルブでナイトレースが行われることが正式に決定した。

 もう1つの11月のスケジュールは、ヨーロッパではなく、東アジアか中東で開催されることが予想されていた。しかし、今年岡山で行われたアジアンルマンシリーズの様に、チームに渡航費用が提供されたとしても、レースを行う費用は渡航費用だけではないため、大きなメリットが無ければ、わざわざ地球の反対側へ遠征する理由はない。そのため、参加チームから、ヨーロッパが中心のシリーズの一部を海外で開催する合意を得ることが出来なかったらしい。
 その結果8月にハンガリーのブダペストでナイトレースとして行われることに落ち着いた。東アジアや中東での開催を諦めて、新たに8月にカレンダーを組むのであれば、我々はニュルブルクリンクでFIAGT1ワールドチャンピオンシップとのダブルタイトルレースの開催を計画した方が相応しいと考えてしまう。
 しかもハンガロリンクは街中のサーキットではなく、田園地域の中に存在するサーキットだ。ナイトレースを行ったとしても、観客はホームストレートを走るクルマしか見ることが出来ない。

 1998年FIASCCがISRSと呼ばれていた時、苦労人のジョン・マンゴレッティは、イタリアのミザーノで7月にシリーズ戦の開催を計画した。7月のアドリア海沿岸のミザーノは日中35℃以上の高温となる。とてもレースを開催するようなコンディションではないとして、ジョン・マンゴレッティはミザーノと相談して、ナイトレースを実施した。
 当時誰もマンゴレッティの判断が間違って居るとは考えなかった。ところが7月にミザーノで決勝レースが行われると、照明設備がホームストレートにしかなく、観客には何も見えないことが判明した。
 ラファネリのライリー&スコット/BMWとJBジエッセのフェラーリが激しいトップ争いを展開しても、それを見ることが出来なかった。もちろん、カメラマンも写真を撮影することは出来なかった。
 ミザーノと比べるとF1GPを開催しているハンガロリンクは、素晴らしい設備を持っている。しかし、大きな違いがあるとは思えない。パトリック・ペーターは、何らかの工夫を行っているのだろうか?

3月7-8日    ポールリカール公式テスト(F)
4月10-11日 Rd.1ポールリカール8時間(F)
5月7-8-9日 Rd.2スパ-フランコルシャン1000km(B)
7月15-16-17日 Rd.3アルガルブ1000 Km (P)*ナイトレース
8月21-22日 Rd.4ハンガロリンク1000 Km(H)*ナイトレース
9月10-11-12日 Rd.5シルバーストーン1000km(Autosport 1000 Km)(GB)

12月3日
●プジョーがスペインで2010年のルマンを想定したテストを開始

Photo:Peugeot-Media

 プジョーは、先週スペインのアラゴン・モーターランドにおいて908のテストを行ったことを発表した。アラゴン・モーターランドとは、エスカディ・イプシロンが拠点とする新しいサーキットで、今後F1GPチームの多くがテストを行うと予想されている。
 アラゴンで908をドライブしたのは、セバスチャン・ボーディ、マルク・ジェネ、フランク・モンタギー、アレクサンダー・ヴルツ、そしてセバスチャン・ロウブだった。
 プジョーの発表によると、2010年のルマンと同じ週にWRCが行われないため、セバスチャン・ロウブは2010年のルマンでもプジョースポーツの908をドライブする予定であるとしている。
 わざわざ初期段階のテストについてプジョーが発表した理由は、セバスチャン・ロウブの2010年ルマン参加が、正式に決定したことをアピールするためだろう。

 2010年ディーゼルエンジンの性能は引き下げられて、ガソリンエンジンとの性能の拮抗化が計られる。同時に“屋根付き”の場合エアコンを駆動させるパワーロスを考慮したリストリクター調整についても、2009年までのようなディーゼルを優遇する特例処置は撤廃されてガソリンエンジンと同じとされる。つまり、5年間続いたディーゼルエンジン優遇処置は、2010年大きく緩和される。
 また、アウディR15の様な大胆なデザインを防止するため、マシン表面の開口部を隠すため、統一解釈として認められていた金網を張ることは禁止される。アウディR15ほどプジョー908は大きな影響を受けないかもしれないが、ドラッグの増大を防止しながら、効果的にボディ内部の空気を吸い出す方法を求めて、現在風洞実験が活発に行われていることだろう。プジョーはアラゴンで走った908の写真の公開を送ってこなかった。もしかしたら、既に金網を取り外して、新しいボディデザインとなっていたのかもしれない。

11月28日
●2010年のLMSは従来通り4つのクラスで行われる

Photo:Sports-Car Racing

 昨日ACOは、2010年のLMSを従来通り4つのクラスで行うことを発表した。
 LMP1クラスはファクトリーカーとプロフェッショナルチームのみを対象として、明確にトップカテゴリーであることを確認した。
 逆にLMP2クラスはジェントルマンドライバーによるカテゴリーであることを宣言した。チームを組む2人か3人のドライバーの内最低1人はジェントルマンドライバーであることを明確に義務付けた。従来もジェントルマンドライバーを対象としたルールは存在したが、ジェントルマンドライバーは最低45分ドライブすることが規定されただけだった。2010年の場合ジェントルマンドライバーは最低1時間15分ドライブしなければ、ポイントの対象とはならない。

 これまでACOはGT1カテゴリーについて明確としなかったが、2010年のLMSの場合、2010年のFIAGTレギュレーションのクルマと性能調整キットを装着した2009年カーが参加出来ることを発表した。性能調整キットとは、現在FIAGTのオーガナイザーであるSROが構想中の性能調整ルールを実現するためのキットと言う意味らしいが、キットと言うより、性能調整レギュレーションと言うべきものだろう。ACOは2009年カーとだけ発表したが、2009年のFIAGT1カーを指すのか?それとも2009年のACOのGT1カーのみを指すのか?明確とはしなかった。もし、FIAGT1カーを指すのであれば、初めてマセラッティMC12がLMSに登場することが可能となる。
 GT2カテゴリーについては従来通りだ。最大の激戦区であることは変わらない。

 ドライバーについては、プロフェッショナルから完全なアマチュアまで、航空会社のマイレッジカードの様に4つ(プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ)のステイタスに分けられる。ちなみにLMP2クラスにはシルバーとブロンズのステイタスのドライバーのみが参加出来る。

11月27日
●2010年ルマン24時間のサポートレースはグループC/GTPレース

Photo:Sports-Car Racing

 ルマン24時間レースの際、1950年代から1960年代のレーシングスポーツカーによるレースか、1980年代から1990年代のグループCとIMSA・GTPカーによるレースが通常隔年で開催されている。1950年代から1960年代のレーシングスポーツカーによるレースは、LMSの運営を行っているパトリック・ペーターが管理しており、グループCとIMSA・GTPカーのレースは、イギリスのGroupC Racingが統括している。
 2010年はグループCとIMSA・GTPカーのレースが開催されることが見込まれていたが、2日前ACOは、2010年のルマン24時間レースのサポートレースがグループC/GTPレースであることを発表した。

 昨日GroupC Racing自身、2010年のシリーズカレンダーを公表した際、第4戦をルマン24時間レースのサポートレースとして行うことを発表した。
 今年の場合、グループC/GTPレースは、北アメリカのHSRと提携してディトナやセブリングで行われたが、2010年はヨーロッパでの活動が中心となる。デイトナとセブリングについては、2010年HSRの主催するイベントにGroupC Racingが協力するカタチで遠征することになるようだ。
 今年のシリーズを見ても、常時ポルシェ、ジャガー、ニッサン、ザウバー-メルセデス、ランチア等20〜30台のグループCカーとIMSA・GTPカーが登場したため、2010年も素晴らしいレースを見ることが出来るだろう。

2010年グループC/GTPレースカレンダー
Rd.1 4月23〜25日アルガルブ(P)
Rd.2 5月21〜23日スパ-フランコルシャン(B)*LMSのサポートレース
Rd.3 6月9〜12日ルマン-サルテサーキット(F)*ルマン24時間のサポートレース
Rd.4 6月18〜20日ニュルブルクリンク(D)
Rd.5 TBC ブランズハッチ(GB)
Rd.6 10月8〜10日ポールリカール(F)

11月24日
●2010年のハイクロフトはアキュラARX-01cをアキュラのサポートで走らせる

Photo:Sports-Car Racing

 今シーズンオフの話題の中心と思われたハイクロフトについて、昨日オーナーのダンカン・デイトンは、ALMSでアキュラARX-01c LMP2カーを走らせることを公表した。
 元々ハイクロフトは、2010年もアキュラのLMP1カーによって活動することを望んでいた。しかし、アキュラがLMP活動を休止するため、ニック・ワースに委託されていた、マシンの開発資金をレーシングチームが負担することが求められていた。
 ニック・ワースの見積もりが高額だっただけでなく、ちょうどニューマシンを任せる適当なレーシングチームを求めていたローラが、ハイクロフトとの連携を望んでコンタクトしたことを切っ掛けとして、少々複雑な状況に発展した。

 ローラは2011年レギュレーションのマシンを一足早く開発する計画だった。2011年レギュレーションは、レーシングエンジンの場合3.4リットルV8に統一されるため、アキュラの3.4リットルLMP2エンジンを積んで開発することを目論んでいた。
 ところが、フェラーリF1GPマシンのコレクターとして知られるダンカン・デイトンは、非常に大きな資金力を持っていたため、スポンサーやメーカーの意向に左右されずに大々的な活動が可能だったため、北アメリカに拠点を持たなかったプジョーが、何とハイクロフトと交渉を開始する事態に発展した。
 ハイクロフト自身、自分達の価値に気づいたようで、ローラやプジョーだけでなく、日本の童夢との提携についても検討していたようだ。

 しかし、ローラが2011年レギュレーションへの開発を一足早く計画したように、どのメーカーやコンストラクターも、早めに2011年ルールへの対応を検討することを望んでいる。2007年にアキュラがLMP活動を開始した時、IRL用をベースとした3.4リットルV8を開発している。その後4リットルまでスケールアップさせたが、基本は3.4リットルで、2011年レギュレーションに非常に適したエンジンを持っている。
 もちろん、アキュラが活動を継続するのであれば、2011年に向けた3.4リットルエンジンの開発を優先させただろう。世界中のコンストラクターやメーカーを巻き込んだ複雑な状況となったが、HPD自身ハイクロフトの価値を認識したようで、ダンカン・デイトンに対して、2010年にLMP2カーで活動することを条件として、サポートを申し出た。
 そうして、再びハイクロフト・アキュラがALMSで走ることが決定した。

 昨年走らせたARX-02aはLMP1カーであるからステップダウンと思われるかもしれないが、2010年のALMSは、性能調整を行うことで、LMP1とLMP2を1つのクラスとして取り扱う。2008年までペンスキーが走らせたポルシェRSスパイダーが総合優勝争いを展開したことでも判る様に、LMP2カーでも大きな可能性を持っているだろう。
 ARX-01cとは、2008年にハイクロフトが走らせたARX-01bの改良型で、現在のところ、どの様なアップデイトが行われるのか不明だ。ARX-02a LMP1カーでリアと同じサイズの大きなフロントタイヤを使用しているが、現在のところ、ARX-02aの様な大胆なコンセプト変更を行う計画は無いようだ。

11月20日
●ポルシェが新しい911GT3Rを発表 2010年のALMSのGT3チャレンジクラスマシン

Photo:Dr. Ing. h.c. F. Porsche AG

 昨日ポルシェは、新しい911GT3Rを発表した。現在911ベースのGTレースカーは総て“GT3”と呼ばれるため、少々分かり難いが、今回発表された911GT3Rは、世界的にGT3カテゴリー向けのGTレースカーだ。ちなみに911系GTレースカーの頂点に位置する911GT3RSRはGT2バージョンだ。

 昨年までデリバリーされていたGT3バージョンの911GT3Rは、911GT3カップカーをベースとして作られていた。と言うより、事実上カップカーそのものだった。新しい911GT3Rは、カップカーではなく、911GT3RSRをダウングレードすることで作られている。従来のGT3Rより200cc拡大されたRSRと同じ4リットルフラット6は480馬力を発生する。車重もRSRと同じ1200kgとなって、発表内容にはなかったが、RSRと同じ幅14インチの太いタイヤを履くようだ。
 2009年以降のRSRは、ラジエターをボディ内側にレイアウトするため、新しいボディシェルを採用しているが、GT3Rは、2007年のRSRやカップカーと同じバンパー部分にラジエターとレイアウトしたボディシェルが使われる
 6速シーケンシャルドックミッション等お馴染みの装備と共に、GT3R独自の装備として、ロードカーと同じABSとトラクションコントロールが盛り込まれている。

 ボディスタイルは、ボンネット上面にラジエターを冷やした空気のアウトレットが無いだけで911GT3RSRソックリだ。
 新しい911GT3Rは2010年1月14日バーミンガムショーで発表される。価格はヨーロッパの場合279,000ユーロ+VATで、こちらもGT3カップカーとGT3RSRの中間となる。
 FIAGTのGT3カップや、北アメリカのALMSのGT3チャレンジ、パットロンGT3チャレンジ、GrandAmGT、Speed tvワールドチャレンジ等、世界中のGT3カテゴリーで活躍することとなるだろう。
 ちなみに、ALMSのGT3チャレンジクラスは、当初世界中のGT3カーによるクラスとして構想されたが、アウディがR8の追加デリバリーが行えない等、発表時から状況が変化しているため、2010年に限ってポルシェ911GT3Rのワンメークとなる可能性もあるようだ。3週間以内にALMSは他のメイクと参加チームの意向をまとめて、決断するようだ。
 
11月19日
●ACOは2010年のルマン24時間レースの29台の自動エントリーリストを発表

Photo:Sports-Car Racing

 ACOは、2010年のルマン24時間レースに自動的にエントリーされる29台のリストを発表した。“プチ-ルマン”の際LMP2クラスで優勝したダイソンレーシングのローラ/マツダは、ACOスペックでなく、ALMSルールの2mウイング付きであったため、対象とならなかった。しかし、同様にALMSルールで出走して、ALMSのLMP2チャンピオンを獲得したフェルナンデスのアキュラは資格を与えられた。

 ALMSの場合、元々GT1クラスは2台か3台しか出走していなかったが、セブリング12時間とロングビーチの2レースだけに参加して、GT1クラスのチャンピオンを獲得したコルベットレーシングは、対象とはならなかった。
 FIAGTのGT1クラスのチャンピオンは、またしてもマセラッティMC12を走らせたヴィータフォンが獲得した。しかし、マセラッティMC12はACOのホモロゲイションを拒否されているため、エントリー資格がチームに与えられるのは従来通りだ。しかし、GT1クラスの場合、現在のところ2009年のクルマは出走出来ない。もし、チームに参加資格が与えられるだけの場合、総てのチームが2010年ルールに合致したGT1カーを買わなければならない。現在アストンマーティンDBR9については、ダウングレードすることで、ACOイベントへの参加を認める話し合いが行われている。

 また参加資格を与えられたものの、既にペスカロロスポーツは活動していない。SORAレーシングがペスカロロスポーツの権利を引き継ぐのか?現在のところ不明。フェルナンデスも既にマシンを売却してしまったため、もしかしたら、フェルナンデスの権利を使って、誰かがルマンにエントリーすることとなるかもしれない。

 世界的なスポーツカーレースのシリーズは、ACOと関わりのないFIAGTでさえ、ルマンから自動エントリーの資格を与えられている。しかし、日本で行われるSuperGTは、その対象にすらなっていない。現在のFIAGTに至っては、メーカーの参加を認めていないプライベートチームだけのシリーズだ。そのFIAGTでさえ対象としているのに対して、SuperGTはドメスティックなシリーズとしか判断されていないのだ。
 もし、GTAが本気で海外に進出したいのであれば、ACOと前向きな話し合いをすべきだろう。

LMP1
Peugeot Sport Total (Peugeot 908 HDi FAP)      2009ルマン24時間優勝
Team Peugeot Total (Peugeot 908 HDi FAP)      2009ルマン24時間2位
Team Peugeot Total (Peugeot 908 HDi FAP)      2009“プチ-ルマン”優勝
Aston Martin Racing (Lola Aston Martin)          2009LMS シリーズチャンピオン
Pescarolo Sport (Pescarolo 01 Judd)               2009LMS シリーズ2位
Sora Racing (Pescarolo 01 Judd)                        2009アジアンルマンシリーズチャンピオン
Patrón Highcroft Racing (Acura ARX-02a)          2009ALMSシリーズチャンピオン

LMP2
Team Essex (Porsche RS Spyder)                2009ルマン24時間優勝
Speedy Racing Sebah (Lola Judd)                  2009ルマン24時間2位
Speedy Racing Team Sebah (Lola Judd)             2009LMSシリーズ2位
Speedy Racing Team Sebah (Lola Judd)             2009ミシュラングリーンチャレンジ
Quifel ASM Team (Ginetta-Zytek)                2009LMSシリーズチャンピオン
OAK Racing (Lola Mazda)                        2009アジアンルマンシリーズチャンピオン
Lowe’s Fernández Racing (Acura ARX-01b)        2009ALMSシリーズチャンピオン

LMGT1
Corvette Racing (Corvette C6.R)                2009ルマン24時間優勝
Luc Alphand Aventures (Corvette C6.R)           2009ルマン24時間2位
Luc Alphand Aventures (Corvette C6.R)          2009LMSシリーズチャンピオン
JLOC (Lamborghini Murcielago R-GT)             2009アジアンルマンシリーズチャンピオン
Vitaphone Racing Team (Maserati MC12)           2009FIA GT シリーズチャンピオン
PK Carsport (Corvette C6.R)                   2009FIA GT シリーズ2位

LMGT2
Risi Competizione (Ferrari F430 GT2)             2009ルマン24時間優勝
Risi Competizione (Ferrari F430 GT)               2009“プチ-ルマン”優勝
BMS Scuderia Italia (Ferrari F430 GT2)           2009ルマン24時間2位
Team Felbermayr-Proton (Porsche 997 GT3 RSR) 2009LMSシリーズチャンピオン
JMW Motorsport (Ferrari F430 GT2)            2009LMSシリーズ2位
Flying Lizard Motorsports (Porsche 997 GT3 RSR)2009ALMSシリーズチャンピオン
Hankook Team Farnbacher (Ferrari F430 GT2)    2009アジアンルマンシリーズチャンピオン
AF Corse (Ferrari F430 GT2)                   2009FIA GT シリーズチャンピオン
ProSpeed Competition (Porsche 997 GT3 RSR)      2009 FIA GT シリーズ2位 

11月9日
●2010年のスポーツカーレースは2月22日に開幕

Photo:Sports-Car Racing

 例年1月半ばセブリングで3日間行われるALMS合同テストから、その年のスポーツカーレースはスタートする。セブリングテストが終了すると、翌日からデイトナビーチでGrandAmの24時間レースのスケジュールがスタートすることもあって、1月半ばのフロリダは、実際のシリーズ戦でないにも関わらず、スポーツカーレースファンの興味を集めていた。ニューマシンの発表の場として最適だっただけでなく、セブリングテストでシェイクダウンを行うレーシングチームも少なくなかった。
 ところが、昨年秋ACOが1.6mリアウイングのルールを発表したため、R15を開発していたアウディを始めとして、ほとんどのコンストラクターは、1月までにニューマシンを完成させるのが困難な状況となってしまった。2009年の場合、ロブ・ダイソンのローラ/マツダやポルシェの2009年モデルと共に、取り敢えずリアウイングだけを1.6mものと交換したアキュラARX-02aが登場した。しかし、アウディやプジョーは2月から3月に独自にセブリングに乗り込んでプライベートテストを実施した。

 現在の経済状況を考慮すると、今後もコンストラクターが、1月にニューマシンの完成を完成させるとは考え難いことから、9月末の“プチ-ルマン”の際ALMSのスコット・アタートンはセブリングテストの日程の見直しを公表していた。しかし、従来のセブリングテストのスケジュールは、GrandAmのデイトナ24時間の直前に行われることがポイントでもあったため、調整するのに時間を要することとなったようだ。結局GrandAmのデイトナ24時間との連携は諦めて、Speedチャレンジとのスケジュールを調整した結果、2月22日と23日の2日間行われることとなった。
 従来より1日少なくなった理由は、コストの削減に他ならない。金に余裕があるメーカーやコンストラクターは、そのままフロリダに残ってテストを行うこととなるだろう。

11月2日
●2010年のアジアンルマンシリーズは日本と中国で開催

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 アジアンルマンシリーズ第2戦終了後、記者会見の席上に現れたACOのダニエル・ポワスノは、2010年のアジアンルマンシリーズについて語った。まず、今年中国がキャンセルされて日本での開催になったため、2010年のアジアンルマンシリーズは存在しない、と噂されていることに対して、「2010年のアジアンルマンシリーズは開催する。現在日本と中国の2イベントでの開催を準備している」と語った。「日本で第1戦を行い、第2戦が中国で行う」とまで語った。

 先週ACOは、2010年のLMSのスケジュールの3/5を発表している。発表の際、最終戦として11月21日に計画されているイベントが日本か中東を想定していることも公表していた。つまり、先週の発表内容を信じるのであれば、2010年にアジアンルマンシリーズが存在したとしても、それは今年と同じ様に日本の1イベントだけで、LMSに含まれるカタチで開催されることが予想されていた。
 11月21日のLMS最終戦の前のLMSは9月12日にシルバーストーンで行われる。9月末アトランタで行われるALMS“プチ-ルマン”を考慮しても、10月のスケジュールが空いている。11月21日のイベントは中東(アブダビ)で、10月に東アジアでアジアンルマンシリーズを2つ開催するのであれば、都合が良いようにも思える。

 ちなみに、2010年に日本と中国で開催されるアジアンルマンシリーズの具体的な場所について、富士スピードウェイでの開催について質問したが、ダニエル・ポワスノは「現在は答えられない」と言った。中国についても、上海だけでなく、他の場所での開催についても検討していることを明らかとした。たぶん、11月中にLMSの最終的なスケジュールが発表される際、一緒にアジアンルマンシリーズのスケジュールも発表されるのだろう。
 ACOは岡山へたくさんの観客がやって来たことに好印象を持っている。そのため、日本での開催はマストと判断したようだ。今年ほとんど可能性が無い状況に陥った中国で進展が無い場合、日本で2つの開催の可能性もあるように思える。

11月1日
●アジアンルマンシリーズ岡山Race2 アストンマーティン優勝 シリーズチャンピオンはSORAペスカロロ

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 予報によると、雨の中でアジアンルマンシリーズ第2戦は行われると思われたが、夜の内に一旦雨は上がって、晴天の中決勝レースはスタートした。今回の2つのレースは、それぞれ別のレースであっても、予選は1回しか行われず、どちらのレースも、同じスターティンググリッドからスタートした。
 昨日行われた第1戦と同様、ポールポジションのNo.87ドレイソンローラ/ジャドがトップで1コーナーへ進入した。昨日スタートで遅れたNo.17SORAペスカロロが2番手で続いて、3番手には4番グリッドからスタートしたNo.007ローラ-アストンマーティンが続いた。
 今年“屋根付き”であれば、無条件で0.3mm大きいリストリクターが使用出来るため、気温が低いのであれば、“屋根付き”にアドバンテージがあると考えられている。
 “屋根付き”のNo.87ドレイソンローラは昨日と同じソフトタイヤを選択したため、昨日同様どんどん飛ばした。昨日ハードタイヤでスタートした“屋根付き”のNo.007アストンマーティンも、今日はソフトタイヤを選択してスタートした。どうやら、ソフトタイヤの方がコンディションにマッチしているようで、No.87ドレイソンローラとNo.007アストンマーティンは後続を引き離しにかかった。特にステファン・モカがドライブするNo.007アストンマーティンのペースは速く、周回遅れをパスする頃になると、あっさりとNo.87ドレイソンローラを抜いてトップに躍り出た。

 GT1クラスは、昨日同様後方グリッドからスタートしたNo.61一ツ山アストンマーティンが、あっと言う間にトップに躍り出て、ライバル達を引き離しにかかった。
 GT2クラスは、フェルベマイヤー・プロトンの2台のポルシェがトップを快走したが、昨日2位でフィニッシュしたNo.77は、たった30分でストップしてしまった。そのためNo.92レイホール・レッターマンBMW、No.40ロバートソンフォードGT、No.89ファンバッハー・ハンコックフェラーリ、No.85ジムゲイナーフェラーリが、No.88フェルベマイヤー・プロトンポルシェを追って2位争いを繰り広げている。

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 最初のピットストップが終了すると、No.007アストンマーティンは、圧倒的なリードを築き上げた。2位に中野信治がドライブするNo.17ペスカロロが2位に上がってきた。対抗馬と考えられたNo.10ORECAは、1回目のピットストップででロイック・デュバルに交代した直後、リストリクターにタイヤかすが入るアクシデントに見舞われて、再びピットに入った。コンピューターをチェックしたが異常はなく、エアボックスを取り外したところ、リストリクターにタイヤかすが詰まっていることが判明した。タイヤカスを取り除いてレースに復帰すると、ピットストップの際ソフトタイヤに交換したこともあって、ロイック・デュバルは素晴らしいペースで走り始めた。

 1回目のピットストップの後、コースの彼方此方で時折雨が落ち始めた。もちろん、路面温度は下がり始めた。2位を走るNo.17ペスカロロは、ピットインの際同じハードタイヤと交換している。日が上がるにつれて、路面温度が上がることを予想してタイヤの内圧を低めに設定したようで、グリップ不足に悩まされている。それでも2回目のピットストップを迎えるまで、中野信治は2位のポジションを守りきった。コンディションを考えるとソフトタイヤの方が合っているように見えたが、SORAレーシングは、2回目のピットストップでも実績のあるハードタイヤへ交換した。
 交代したクリストフ・ティンサウも、グリップ不足に悩まされ、遅れていたNo.10ORECAの接近を許した。タイヤの内圧が不足していることが原因かもしれないが、No.17ペスカロロは思った以上に燃費が悪く、フィニッシュ直前3回目のピットインを行って、燃料を補給した。0.3mm大きいリストリクターを使用している“屋根付き”は、その分燃費が悪いため、トップを快走していたNo.007アストンマーティンも、フィニッシュ直前ピットに入って、燃料を補給した。
 そしてアストンマーティンがアジアンルマンシリーズ第2戦をトップでフィニッシュした。

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 No.17ペスカロロがピットに入ったことによって、急激にORECAとの差が縮まった。ORECAのペースは速く、フィニッシュまで10分を切る頃、ORECAはペスカロロの1.7秒後方まで接近した。
 No.17SORAペスカロロは、3位でフィニッシュすれば、シリーズチャンピオンを獲得出来るため、無理をしないでフィニッシュする作戦のようだ。フィニッシュ直前、No.10ORECAがパスすると思われた。しかし、ORECAも燃費が楽ではなかったようで、1.7秒差まで接近しながら、燃料を節約するため、ペースを落とさなければならなかった。最後の2周は何時ストップしても不思議でないような状況だったようだ。
 そのため、No.17SORAペスカロロは2位でフィニッシュして、最初のアジアンルマンシリーズのチャンピオンに輝いた。

 GT1クラスは、No.61一ツ山アストンマーティンが優勝したが、昨日行われた第1戦でJLOCランボルギーニが優勝したため、同ポイントとなった。同ポイントの場合、最初のレースで高ポイントを獲得したチームの方が上位となるルールがあるため、GT1クラスのチャンピオンはJLOCが獲得した。
 GT2クラスは混戦となった。上位を狙えるポジションを走行したNo.85ジムゲイナーフェラーリは、駆動系のトラブルによってストップしてしまった。1週間前にデリバリーされたため、トラブルを出し切れない状況だったかもしれない。
 昨日の第1戦で優勝したBMWがスタータートラブルのためピットに入ったため、No.89ファンバッファ・ハンコックフェラーリとNo.88フェルベマイヤー・プロトンポルシェがトップ争いを展開して、ハンコックフェラーリが優勝した。3位にはNo.71ダイシンフェラーリが入った。

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LMP1
1 No.007アストンマーティン       ローラ-アストンマーティン 128laps
2 No.17SORAレーシング          ペスカロロP01/ジャド      128laps
3 No11チームORECAマットムット ORECA/AIM              128laps

LMP2
1 No.24OAKレーシング            ペスカロロP01/マツダ      118laps
2 No.28ホセ・イバネス            ORECAクラージュ/AER     92laps

GT1
1 No.61一ツ山レーシング     アストンマーティンDBR9    115laps
2 No.69JLOC           ランボルギーニムルシエラゴ 114laps
3 No.50ラルブルコンペティション サリーンS7R              114laps

GT2
1 No.89ファンバッファハンコック フェラーリF430GT2       114laps
2 No.88フェルベマイヤー・プロトンポルシェ997GT3RSR      113laps
2 No.71チームダイシン      フェラーリF430GT2       113laps

11月1日
●アジアンルマンシリーズ岡山Race1 SORAペスカロロ優勝

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 元々今年のアジアンルマンシリーズは、日本の富士スピードウェイと中国の上海で行われる計画だった。その後日本での開催地が岡山に変更になると共に、上海での開催がキャンセルされた。しかし、岡山で2レース行われるため、アジアンルマンシリーズの名前は維持された。午後12時30分好天の中アジアンルマンシリーズのRace1がスタートした。
 ポールポジションのNo.87ドレイソンレーシングのローラ/ジャドが先頭で1コーナーへ進入した。その後方では、2番手からスタートしたクリストフ・テンサウのNo.17ペスカロロがNo.10ORECAとの加速競争に敗れて3番手に後退した。クルストフ・テンサウはタイヤが暖まらないようで、2コーナーへ進入するまでにNo.007ローラ-アストンマーティンにも抜かれてしまった。

 ソフトタイヤを履くNo.87ドレイソンレーシングのローラ/ジャドは、素晴らしい速さでトップを快走した。No.10ORECA、No.007ローラ-アストンマーティン、No.17ペスカロロの3台が熾烈な2番手争いを行っていることもあって、No.87ドレイソンローラはトップを独走した。ところが20周目突然No.87ドレイソンローラはピットに飛び込んでくると、フロントカウルを交換した。そのため、トップは僅差でNo.10ORECAとなった。
 しかし、1回目のピットストップを終えると、トップはNo.007ローラ-アストンマーティンとなって、2位に中野信治が乗り込んだNo.17ペスカロロが上がってきた。その後アストンマーティンとペスカロロの差がどんどん縮まった。
 2回目のピットストップの後、No.17ペスカロロがNo.007ローラーアストンマーティンとテイルtoノーズの体制に持ち込んだ。アストンマーティンはフロントカウルに問題を抱えているようで、117周目ピットに入ってきた。フロントカウルの左右のスリットが破損しており、ガムテープで補修してレースに復帰したが、完全に修理をすることは出来なかったようで、もう1回ピットに入って修理した。その結果、No.17SORAペスカロロがアジアンルマンシリーズ第1戦で優勝することとなった。

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 GT1クラスは、最後尾から追い上げたNo.61一ツ山アストンマーティンが圧倒的な速さで追い上げて、一旦はトップの座を奪取したが、その後ポジションを落として、GT1ポールスタートのNo.50サリーンが先頭を走る。しかし、サリーンは左のタイロッドを壊してしまい、自力でピットまで戻るが、もちろんレースは諦めた。
 その結果、No.69JLOCランボルギーニがトップに躍り出て、No.61アストンマーティンが追う展開となった。テイルtoノーズの闘いが続いたが、ランボルギーニがトップを守り抜いた。

 GT2クラスは過酷な闘いが行われた。No.77フェルベマイヤー・プロトンポルシェを追ってNo.92レイホール・レッターマンBMWが果敢に挑戦して、一旦トップの座を奪取したが、ピットインの際再びNo.77ポルシェがトップに返り咲いた。テイルtoノーズの闘いの結果、再度BMWがトップの座を奪い返して、そのままフィニッシュした。
 日本勢は、No.85ジムゲイナーフェラーリが上位で闘いを行った。彼らが導入したフェラーリF430GT2は、昨年生産を終了したが、今年バージョン5が登場している。今回のレースにやって来た3台は、No.71ダイシンが2007年モデルをベースとしたバージョン3、No.85ジムゲイナーが2008年モデルをベースとしたバージョン4、No.89ハンコックファンバッハが2008年モデルをベースとしたバージョン5だった。

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10月31日
●アジアンルマンシリーズ予選 ポールポジションはドレイソンローラ/ジャド 中野信治のSORAペスカロロが2番手

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 いよいよアジアンルマンシリーズが岡山へやって来た。2年前岡山ではJLMCが開催されている。しかし、その後リストリクターの大きさやターボの最大過給圧が見直されて、エンジンパワーが変わっているだけでなく、今年幅1.6mの小さなリアウイングのルールが導入されたため、2年前の情報を持っているチームであっても、完全に白紙の状態でセッティングを行わなければならないようだ。
 今年幅1.6mのリアウイングが導入された結果、空力開発に精を出したコンストラクター達の多くは、後端の左右が盛り上がったリアカウルをデザインした。最初ロードラッグコース専用と考えられた、左右の後端が盛り上がったリアカウルは、その後ハイダウンフォースパッケージでも有効であると判断されるようになったため、最近ほとんどのサーキットで、左右後端が盛り上がったリアカウルが使われている。
 9月にLMPプロジェクトをスタートしたドレイソンレーシングは、最初2mリアウイング用として作られた後端が下がったリアカウルを導入した。その状態で“プチ-ルマン”まで活動したが、大きな差があると判断したようで、岡山へは左右後端が盛り上がった1.6mリアウイング用のリアカウルを組み合わせてやってきた。

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 ルマン24時間レースと違って、ルマンシリーズの場合、予選で使用したタイヤを使って決勝レースをスタートしなければならない。そのため、予選の際出来る限り少ない周回数で好タイムを記録することが求められる。タイムを計測可能な最低の周回数である3周だけ走ることが理想と言えるだろう。そのため金曜日夕方に行われた予選の際、ほとんどのチームは、コースにラバーが乗ってくるセッション後半に登場した。しかし、夕方になって気温が下がってきたため、効果的にタイヤを暖めることが出来ないようで、ソフトタイヤを選択したドレイソンレーシングのローラ/ジャドがトップタイムを叩き出した。
 2位にSORAレーシングのペスカロロ、3位にORECA/AIM、4位にローラ-アストンマーティンがつけた。SORAレーシングとは、今年アンリ・ペスカロロが買収したSORAコンポジットがマネージメントを担当するレーシングチームだが、名前が違うだけで、実態は従来のペスカロロスポーツそのものだ。岡山では中野信治が乗り組んでいる。


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 LMP2クラスは、ジェントルマンドライバーのチームによる争いとなったが、経験豊富なOAKレーシングが圧倒することとなった。GT1クラスは一ツ山レーシンングのアストンマーティンがトップタイムを記録したが、翼端板のレギュレーションに違反していたため、タイムは抹消されることとなった。ACOのルールによると、GTクラスの翼端板は、ウイングの角度が変わっても、常に地面と水平であることが求められている。このルールに抵触した。その結果、GT1クラスのポールポジションはサリーンが獲得することとなった。
 GT2クラスは激戦となった。フリー走行でトップタイムを記録したNo.85ジムゲイナーフェラーリ、No.77フェルベマイヤープロトンポルシェ、No.92レイホール・レッターマンBMWが争ったが、BMWは最終コーナーでコースアウトしてしまった。ポルシェがポールポジションを獲得すると思われたが、それまでノーマークだったNo.91チームホンコンのアストンマーティンヴァンテッジが、トーマス・エンゲの素晴らしいアタックによってトップタイムを記録した。しかし、チームホンコンも、一ツ山レーシングと同じく翼端板の角度の違反によってタイム抹消されたため、ポルシェがGT2クラスのポールポジションを獲得した。

LMP1
1 No.87ドレイソンレーシング ローラB09-60/ジャド    1分19秒143
2 No.17SORAレーシング ペスカロロP01/ジャド         1分19秒249
3 No11チームORECAマットムット ORECA/AIM        1分19秒548

LMP2
1 No.24OAKレーシング ペスカロロP01/マツダ          1分23秒790
2 No.28ホセ・イバネス ORECAクラージュ/AER         1分26秒647

GT1
1 No.50ラルブルコンペティション サリーンS7R         1分29秒827
2 No.69JLOC ランボルギーニムルシエラゴ               1分30秒679
3 No.68JLOC ランボルギーニムルシエラゴ               1分30秒873

GT2
1 No.77フェルベマイヤー・プロトン ポルシェ997GT3RSR    1分30秒847
2 No.85ジムゲイナーレーシング フェラーリF430GT2       1分31秒283
3 No.88フェルベマイヤー・プロトン ポルシェ997GT3RSR    1分31秒515

10月29日
●アキュラのLMPプログラムはキャンセル!? ハイクロフトはニューマシンで活動継続か?

Photo:Sports-Car Racing

 9月以降フェルナンデスはシャシーを売却する広告を出す一方、ジル・ド・フェランは活動停止と噂されるようになった。その後ハイクロフトが、新しいLMPカーを探していることが明らかとなった。
 1月にアキュラのLMP1プロジェクトが発表された際、既にニック・ワースは、ルマンを想定したローダウンフォースパッケージの空力開発を行っていることを認めていた。ARX-02aが大きなドラッグを発生することは明らかであるため、実際にルマンに行くことはなくても、ローダウンフォースパッケージは大きな可能性を持つと思われていた。
 最近ロバートソンレーシング(岡山へやって来るフォードGTチーム)の仕事をするようになったマイク・フラーからの情報によると、どうやら、アキュラに大きな変化があったことは間違いないようだ。

 ニック・ワースは既にローダウンフォースパッケージの開発を終了している。しかし、現在アキュラから直接仕事を受けてはないようだ。話を総合すると、今後ARX-02aやARX-01bを走らせるレーシングチームは、直接ニック・ワースに空力開発やパーツの供給をオーダーすることとなるらしい。
 2009年ACOが1.6mリアウイングのルールを設けた後、ほとんどのコンストラクターは、新しいリアボディをデザインして、リアのダウンフォースを少しでも取り戻そうと試みた。しかし、アキュラはスワンネックを採用しただけで、2mリアウイングのためにデザインしたリアボディを使い続けた。アウディがALMSへの参戦と取り止めた結果、ALMSのLMP1クラスに参加する有力チームはアキュラを走らせる2つのチームだけとなったため、わざわざ新たに空力開発を行う理由は無いと判断したのだろう。

 そのため、2010年にアキュラを走らせるレーシングチームは、ニック・ワースに空力開発を頼むことがマストとなるのだろう。しかし、ニック・ワースが提示している価格は、相当高額であることが噂されている。
 新しい空力開発に要するコストをアキュラが支払うのであれば、何の問題もないが、どうやら、アキュラはLMPプロジェクトをキャンセルするのであれば、このようなコストを新たに計上することはないらしい。
 つまり、2010年にアキュラを走らせるのであれば、開発に要する金を用意しなければならない。

 ハイクロフトは、アキュラからエンジン供給の約束を取り付けたことを公表している。と言うことは、ニック・ワースに大金を支払わなければならないARX-02aではなく、他のシャシーにアキュラエンジンを組み合わせることでも、2010年のALMSにおける活動を継続することが可能となる。

 マイク・フラーは「噂によると、ハイクロフトはローラと交渉しているらしい」と語っているが、少々調べてみると、既にハイクロフトがローラにB09-60をオーダーした事実はないようだ。9月に行われた“プチ-ルマン”へORECAが遠征しているため、間違いなくORECAは、ハイクロフトに自分達のカタログを手渡したことだろう。半年間噂が途絶えている日本のコンストラクターへ、ハイクロフトはアキュラエンジンを組み合わせた場合の見積もりを頼んでいるかもしれない。

10月28日
●ACOが2010年LMSの3/5を公表 世界選手権への第一歩 スケジュールのバッテング回避を最優先した日程

Photo:Sports-Car Racing

 昨日ACOは現時点で決定した2010年のLMSのカレンダーを発表した。例年通り3月始めにポールリカールで公式テストを行う一方、現在のところ5レースが予定されている。しかし、開催日時と場所を発表したのは3つだけで、他の2つは日時だけを発表するにとどまった。まだ2つの開催場所が発表されてないにも関わらず、開催日時を発表した理由は、これまでACOがオーガナイズするLMSのスケジュールは、世界中のスポーツカーレースと頻繁に開催日程がバッティングしていた。そのため、開催場所が確定しないにも関わらず、日程を発表することになったらしい。
 もちろん、2年前大問題を引き起こしたALMSとのバッティングも無ければ、同じ日本の富士と岡山でレースを開催するような困った状況を回避する努力も行われているようだ。

 しかし、問題が無い訳ではない。場所を発表しなかった2つの内、7月18日のイベントは、どうやらニュルブルクリンクが最有力候補であるらしい。ところが、既にニュルブルクリンクは、8月29日にFIAGT1ワールドチャンピオンシップをLMSと一緒に開催することを発表している。第一FIAによって8月29日の開催が発表されている。
 ニュルブルクリンクの発表に対して、ACOは「相容れない状況」(直訳)と表現して当惑を隠そうとしない。もしかしたら、誰が参加するのか判らないFIAGT1ワールドチャンピオンシップが最初から成立しないことを前提として、現在ニュルブルクリンクとACOが話し合っているのかもしれない。
 7月18日の他の候補地はディジョンやアブダビ等が上げられているようだが、どちらも現実的とは考えられない。

 “プチ-ルマン”の際、ACOが“プチ-ルマン”をLMSのシリーズの1つとすることを目論んでいると噂されていた。実際アトランタへやって来たACO関係者も、“プチ-ルマン”のLMS勧誘を隠そうとしなかった。しかし、昨日のACOの発表によると、“プチ-ルマン”もニュルブルクリンク同様「相容れない状況」によって、LMSとしての開催は見送られた。
 ACOが“プチ-ルマン”のLMSとしての開催を目論んでいることでも判るように、ACOはLMSを世界選手権として、全世界に展開することを計画している。このことは6月にルマンで開催された記者会見の際、既に明らかとなっていた。しかし、6月の場合、誰が集計したのか判らないが、日本に関するデータがあまりにもいい加減である等、容易にACOの勉強不足が判明したため、誰も本気でACOが世界選手権化を目論んでいるとは考えてなかった。
 最後に11月21日に予定されているイベントは日本であるらしい。日本でない場合、アジアではなくアブダビでの開催を目論んでいるようだ。ACOが日本での開催を望んでいることは明らかだが、11月末の冬の日本の何処でレースを開催すると言うのだろうか?日本が北半球に存在することを忘れているのではないだろうか?

公式テスト  3月7-8日 ポールリカール(F)
Rd1     4月9-11日 ポールリカール(F)
Rd2     5月7-9日 スパ-フランコルシャン(B)
Rd3     7月16-18日 TBA
Rd4     9月10-12日 シルバーストーン(GB)
Rd5     11月19-21日 TBA

10月22日
●2010年FIAGT1ワールドチャンピオンシップカレンダー

Photo:FIAGT/DPPI

 昨日(10月21日)パリでFIAはワールドカウンシルを開催した。そして、2010年から開催するFIAGT1ワールドチャンピオンシップのカレンダーを決定した。
 カレンダーを見ると明らかなように、これまで再三ステファン・ラテルが名前を上げていたアルゼンチンのサンールイやブカレストの公道サーキット、そしてロシアでの開催も見送られた。代わってアブダビのヤスマリーナや南アフリカ、カナダ、中国、ブラジルで開催することが予定されている。残念なことは、これらのほとんどのサーキットが、実際の開催地が未定であることと、サーキット自体の公認が必要であることだ。

 7月4日に予定されているカナダのイベントは、モスポートかモントリオールであるらしい。7月4日がアメリカの独立記念日であるため、アメリカからの観客を期待してモントリオールでの開催を計画しているようだが、現在モントリオールで大がかりなレースを行うのは難しいと考えられている。その場合モスポートでの開催を目論んでいるらしいが、3週間前に行われた“プチ-ルマン”の際ALMSは、ドン・パノス傘下のモスポートは8月29日にALMSを開催するため、それ以外のスケジュールでFIAのイベントを行うのは難しいことを公表していた。ドン・パノス以外の誰かが、主催者として名乗り上げるのであれば、開催することも可能だろうが、たくさんの有力なGT2カーが凌ぎを削っているALMSの活況を考えると、そのような人物やメーカーが存在するとは考えられない。

 シーズン終盤の中国とブラジルのレースは、今年ルマンシリーズが中止となったことを考えても判る様に、非常に不安定と考えられている。そのことを裏付ける様に、何処のサーキットで開催されることさえ決まっていない。中国の場合11月21日にマカオでWTCC(マカオGP)が開催されるため、マカオで一緒にレースを行うような交渉が行われない限り、独自のイベントとして開催されると考えるのは難しい。

 興味深い決定を行ったのはニュルブルクリンクだ。8月29日にカレンダーを申請したニュルブルクリンクは、LMSと一緒にレースを行う計画だ。しかもダブルヘッダーではなく、LMSの1000kmレースと一緒にFIAGT1カーを走らせて、ダブルタイトルレースとする目論みだ。何台参加するのか?現在に至るも明らかでないシリーズであることを考えると、昨日FIAが発表したカレンダーの中で、唯一現実的な内容と言えるかもしれない。
 もしかしたら、11月14日に予定されている中国でのFIAGT1チャンピオンシップは、まだ発表されてない2010年のアジアンルマンシリーズとダブルタイトルレースとなるのかもしれない。

Rd1 4月4日 ヤスマリーナ(UAE) *サーキットの審査が必要
Rd2 4月18日 TBA (SA) *サーキットの公認が必要
Rd3 5月2日 シルバーストーン(GB)
Rd4 5月16日 ブルノ(CZ)
Rd5 5月30日 ポールリカール(F)
Rd6 7月4日 TBA (CA)*サーキットの公認が必要
Rd7 8月1日 スパ-フランコルシャン(B)
Rd8 8月29日 ニュルブルクリンク(D)*サーキットの公認が必要
Rd9 9月12日 アルガルブ(P)
Rd10 10月3日 ハンガロリンク(H)
Rd11 11月14日 TBA (CH)*サーキットの公認が必要
Rd12 11月28日 TBA (BR)*サーキットの公認が必要

10月7日
●ACOは条件付で2010年のルマンに新制GT1クラスを設置 ニッサンGTRが2010年のルマンへ参加!

Photo:FIAGT/DPPI
 スパ24時間の際FIAGTは、3台の新制GT1カーを公開した。しかし、
新制GT1カーとして登場するクルマは、この3台が総てだ。たった3台
で行われるGT1ワールドチャンピオンシップが成立するとは考え難い

 26日ACOはパリでテクニカルミーティングを開催した。議案の中心は2011年のLMPカーレギュレーションだったが、同時に、これまで決定してなかった2010年のGT1レギュレーションについての話し合いが行われた。
 昨日(26日)SpecialEditionに掲載したように、2年前ACOは2010年にFIAと連携した新しいGT1クラスを設けることを発表している。しかし、かつて無い繁栄を極めるGT2クラスと違って、GT1クラスは低迷を続けている。新制GT1カーが創設される理由の一つは、このような不人気のGT1クラスの活性化でもある。FIAGTの場合トップカテゴリーはGT1であるから、それが不人気であることは大問題だった。FIAGTが、レギュレーションに合致しないマセラッティMC12やホモロゲイションを取得してないニッサンGTRを走らせた理由もここにある。

 FIAGTのオーガナイザーであるステファン・ラテルが中心となって新制GT1構想はまとめられ、その段階で特別なプランを持たなかったACOは、FIAと連携することを決定した。
 ステファン・ラテルが構想した新制GT1構想は、車両レギュレーションが新しいだけでなく、新しいGT1カーによって世界選手権(GT1ワールドチャンピオンシップ)を行おうと言うものだった。そう、以前BPRと呼ばれたシリーズが1997年にFIAGTと名前を変えて、1997年と1998年のたった2年間だけ、世界選手権のカタチを保った時代を目指している。

 当初新制GT1カーは、従来のGT3カーを発展させたものとして構想された。つまり、ロードカーを発展させたボディとサスペンションを使って、エンジンパワーだけを100馬力程度大きい500〜550馬力に増やすと言われていた。FIAやステファン・ラテルは、大きなコストダウンが可能と判断していたかもしれない。
 ところが、旧GT1の時代がそうだったように、誰だって新たにGT1カーの開発を計画したら、自分達に有利なレギュレーションを要求するだろうし、ホモロゲイションを受ける資格が無くても、何とかFIAに認められるようロビー活動を行うだろう。場合によってはワールドコミッションやワーキンググループの席で、泣いて説得するかもしれない。
 その結果、新制GT1カーは、当初言われていたような、GT3に毛が生えたクルマではなくなってしまった。と言っても2009年までのGT1カーに対抗出来るような速さは無いが、お世辞にも安いクルマではなくなった。

 現在のFIAGTのエントラントの多くが裕福なアマチュアドライバーだ。1999年以降のFIAGTは、これらの裕福なアマチュアドライバーが居なければ成立出来なかったため、アマチュアの参加を促進するため、ワークスチームの参加を拒否してきた。しかし、FIAGTが目論んむような世界選手権は、これらのアマチュアドライバーにとって事実上不可能だ。第一アマチュアドライバーが競い合って世界チャンピオンが誕生しても、それがどれほどの意味と成すとは思えない。
 このような矛盾から、新制GT1カーを開発するコンストラクターはほんの僅かで、これまでMATECH(フォードGT)とREITER(ランボルギーニ)がGT3カーをベースとした新制GT1マシンの開発を決定しただけで、GTRをベースとしてV8エンジンを積んだFRマシンを開発してきたニッサンを含めても、到底新しいカテゴリーを設立出来るような状況ではない。

 たった3つのコンストラクターがマシンを作っただけで、新たなカテゴリーを創設するのは、誰が考えても無理がある。新制GT1を推進するFIAGTが積極的に3つのコンストラクターが新制GT1カーを開発したことを宣伝していたが、一緒に新制GT1に参加することを表明していたACOは呆れる一方、大きな決断を迫られる状況だった。
 元々ACOが新制GT1構想を支持した理由は、ACOがロードカーのカタチをしたプロトタイプカー望んでいたからだった。2007年のルマンの際ACOは、彼らが目論んだ新制GT1の予想イラストまで公開している。
 当時、ACOが目論む新制GT1構想にはGMが興味を示すと考えられていた。そのため、新制GT1がGT3に毛が生えたクルマとして発表した後も、ACOやFIAにとってGMの参加は期待されていた。
 ところが、GMは今年のルマンが終了した後、現行のGT1からの撤退して、新たに開発したGT2コルベットによってALMSのGT2クラスに参加した。この結果ALMSのGT1クラスは崩壊して、GT2クラスが活況を呈している。
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照して下さい

 基本的にはACOレギュレーションを使っているALMSは、この呆れた状況から、2010年にGT1クラスを設けないことを発表した。ALMSがGT1クラス廃止を決定したこともあって、ACOの判断が待たれていた。
 昨日行われたテクニカルミーティングの後ACOは、GT1ワールドチャンピオンシップに参加する新制GT1カーは、2010年のルマンとLMSに参加する資格を有することを発表した。つまり新制GT1カーのレギュレーションとホモロゲイションを設けると共に、新制GT1カーのクラスをルマンとLMSに設けることを発表した。
 この決定をする前、ACOは、既に新制GT1カーを作ることを発表した3つのコンストラクターに対して、「2010年のルマンの前までにマシンを完成させると共に、レースに参加する計画があるのか?」質問した。3つのメーカー共、ルマンまでにマシンを完成させてレースに参加することを約束した。
 そして、ACOは、2010年のヨーロッパとアジアのルマンシリーズに参加することを条件として、新制GT1カーのルマンへの参加を認めることを決定した。

 同時にACOは同様の趣旨のプレスレリースを配布した。ACOの苦労が見えるような非常にあやふやな内容だが、要約すると、FIAGTの新制GT1カーとして認められてGT1ワールドシリーズに参加するGT1カーは、2010年のルマンの前にマシンを完成させて、LMSかアジアンルマンシリーズで活動するのであれば、2010年のルマンへの参加を認めると言うことだ。つまり、この条件をクリアした場合、10年間ルマンにやって来なかったニッサンがGTRでルマンに登場かもしれない。

9月26日                                                                                                 
●“プチ-ルマン”激しい雨によって5時間で打ち切り 優勝はプジョー、LMP2はダイソン-ローラ、GT2はRisiフェラーリ

Photo:Sports-Car Racing

 日付が変わる頃からアトランタは激しい雨が降り始めた。一旦雨は止んだが、夜が明ける頃再び激しい雨が降り始めて、アップダウンが激しいロードアトランタのコースの彼方此方が水没してしまった。そのため、午前8時15分から行われる予定だったウォームアップランは1時間以上遅れて行わなければならなかった。午前9時を過ぎる頃になると、雨は小降りとなって、予定通り11時20分11回目の“プチ-ルマン”10時間レースがスタートした。

 今年のルマンの時、雨の中行われた水曜日のフリープラクティスを思い出してもらえば判るだろうが、様々な問題を抱えていたとしても、アウディR15は、V10エンジンによって、ディーゼルエンジンを積むとは思えない、素晴らしい前後の重量配分を実現しているため、素晴らしい操縦性を発揮して、プジョーを上回る速さを披露した。
 雨となって、“プチ-ルマン”でもアラン・マクニッシュのアウディがパフォーマンスを発揮すると考えられた。マクニッシュが乗り込んだNo.2アウディR15は、フォーメイションランの際、フロントローの2台のプジョーを牽制しながら、最終コーナーを立ち上がると、直ぐにステファン・サラザンのNo.08プジョーをパスして、ターン1の立ち上がりでペドロ・ラミーのNo.07プジョーを抜き去った。マクニッシュの速さは圧倒的で、再びホームストレートに戻ってくる頃には、2位のプジョーとの差を2秒にまで広げてしまった。
 逆に重い12気筒のディーゼルターボエンジンを積むテイルヘビーのプジョーは、ペースが上がらない。次々と2台のアウディに抜かれただけでなく、一旦はアキュラに先行される場面もあった。
 雨は小降りとなって、どんどん路面が乾いてくる状況だったが、マクニッシュは圧倒的な速さを見せつけて、スタートから1時間後プジョーを18秒も後方に置き去りとした。

Photo:Sports-Car Racing

 LMP2はNo.20ダイソン-ローラがスタートからトップを走行したが、パドルシフトの不具合によってピットに入ったため、トップの座はNo.6サイトスポーツのポルシェRSスパイダーへと移った。ところが1回目のピットストップの後ポルシェRSスパイダーはターン3でクラッシュしたため、No.15フェルナンデス-アキュラがトップに躍り出た。
 激戦区のGT2は、ポールポジションからスタートしたロバートソンチームのNo.40ドラン-フォードGTMK7を追ってワークスコルベットが攻撃した。2周目バックストレートエンドのシケインの進入でNo.4ワークスコルベットはドラン-フォードGTに仕掛けた。しかし、濡れた路面に足を取られてオーバーランしてしまった。その後方では予選2位のライリー-コルベットが、ワークスコルベットと同じ様にオーバーランしてしまった。
 しかし、雨の中のワークスコルベットは速く、次第にGT2クラスの1-2を占めるようになった。

 スタートから1時間後、ほとんど雨は止んでコースが乾き始めたため、次々とスリックタイヤへ履き替えるチームが現れた。路面が乾いてくると、プジョー勢が速さを発揮するようになった。まず、2位を走っていたマルコ・ヴェルナーのNo.1アウディR15を2台揃ってパスすると、どんどんマクニッシュのNo.2アウディR15に接近した。
 一旦はNo.07プジョーがリーダーの座を奪い返すが、2回目のピットインのタイミングによって、リナンド・カペロのNo.2アウディがレースリーダーに復帰した。2位にニコラス・ミナシアンのNo.07プジョー、3位にステファン・サラザンのNo.08プジョーが付けている。

Photo:Sports-Car Racing

 午後2時を過ぎる頃から、小雨ながら再び雨が降り始めたため、スリックタイヤで走るレーシングカーが、コースの彼方此方でコースアウトするようになった。再三イエローコーションが宣言された。今後コンディションがどの様にに変わるか判らないため、セイフティカーランの間、ピットロードがオープンとなると、ほとんどのクルマがピットに入って燃料を補給した。しかし、この段階では雨は本降りではなく、コースのほとんどが乾いている状態だったため、トップグループの多くはスリックタイヤのままレースに復帰している。
 2時26分レースが再開されると、No.2アウディと2台のプジョーが激しいトップ争いを展開した。ニコラス・ミナシアンのペースが速く、2周後No.07プジョーはNo.02アウディを抜いてトップに躍り出た。ところが、ターン3で周回遅れのNo.37インタースポーツローラと接触して遅れてしまった。

 午後2時53分イエローコーションとなった。2分後ピットロードが開放されると、次々とレースカーがピットインした。この段階でトップはリナンド・カペロのNo.2アウディR15、2位がステファン・サラザンのNo.08プジョー、3位がアクシデントから挽回して追い上げてきたニコラス・ミナシアンのNo.07プジョーだった。
 15分後レースが再開されたが、たった13分後ターン3で再びアクシデントが発生してタイヤバリアが破壊されたため、イエローコーションが宣言されてセイフティカーランとなった。ピットロードが開放されると、次々とレースカーがピットインしてきた。No.2アウディは、リナンド・カペロからアラン・マクニッシュに、No.07プジョーはニコラス・ミナシアンからペドロ・ラミーへ、No.08プジョーはステファン・サラザンからフランク・モンタギーへドライバーを交代した。
 トップのままレースに復帰したNo.2アウディだったが、右側のヘッドライトが点灯しない。タイヤバリアの修復に時間を要すると判断されたため、2周後マクニッシュはピットに入ってフロントノーズを交換した。素早い作業によって、No.2アウディは、セイフティカーの直前でコースに復帰したため、周回遅れになることは避けられた。しかし、もちろんトップの座はプジョーに奪われてしまった。この時アウディは完全に作業を終了出来なかったようで、さらに2周後マクニッシュはピットに入って、素早い作業で周回遅れとならずにレースに復帰している。

Photo:Sports-Car Racing

 タイヤバリアの修復に30分を要して午後3時44分レースが再開される直前、再び激しい雨が降り始めた。レースが再開された時トップはフランク・モンタギーのNo.08プジョー、2位にペドロ・ラミーのNo.07プジョー、3位にアラン・マクニッシュのNo.2アウディが付けていた。ところが、あまりに激しい雨であるため、アウディ勢を始めとして、ほとんどのチームは直ぐにピットに入ってレインタイヤに交換した。プジョー勢は、そのまま1周周回して、彼らのピットに入ってレインタイヤに履き替えた。あまりに激しい雨であるため、先にピットに入ったアウディもペースが上がらないため、プジョーがタイヤを履き替えてレースに復帰した時、トップの座はプジョーのままだった。
 あまりに激しい雨であるため、直ぐにコースの彼方此方に川が出来てしまい、レインタイヤを履いたレースカーは、次々とコースアウトした。ターン4、ターン6、バックストレートエンドのシケイン、そして事もあろうに、最終コーナーでは、ドレイソンレーシングのNo.88ローラ/ジャドがスピンしてピットウォールに叩き付けられ、ドレイソン-ローラが再スタートすると、最終コーナーアウト側のフェンスにワークスコルベットが突撃を敢行した。

 再スタート後2周でイエローコーションが宣言されてセイフティカーが出動した。ターン4と最終コーナーの修復が急がれたが、激しい雨は一層勢いを増すと共に雷が鳴り出したため、11年の“プチ-ルマン”の歴史始まって以来初めてのレッドフラッグが提示されて、レースは中断された。

 アトランタを中心としてジョージア一帯で激しい雨が降り始めており、天気が回復する気配はなかった。コース上では、IMSAとロードアトランタのスタッフによって壊れたフェンスやタイヤバリアの修復が進められたが、スペクテイターヒル手前のショートコースのショートカット部分が冠水している等、到底レースを再開出来る状況ではなかった。
 “プチ-ルマン”は1000マイルまたは最大10時間のレースであるため、午後9時20分を過ぎればレースは終了する。しかし、サーキットの外でも雨による影響が出ており、アトランタに向かうI85とI985で共に交通事故の発生が伝えられる等、到底レースを継続するような状況ではなかった。午後8時過ぎIMSAはレースの終了を宣言した。
 そして現時点の順位を公式結果とすることを発表した。しかし、現在のところ正式結果は発表されていない。

*スタートから5時間終了時点での順位
LMP1
1 No.08 プジョー908 ステファン・サラザン/フランク・モンタギー 184laps
2 No.07 プジョー908 ニコラス・ミナシアン/ペドロ・ラミー 184laps
3 No.2 アウディR15 リナンド・カペロ/アラン・マクニッシュ 184laps
4 No.1 アウディR15 ルーカス・ロール/マルコ・ヴェルナー 182laps
5 No.7 ORECA01/AIM オリビエ・パニス/ニコラス・ラピエール/ロマ・デュマ 181laps
6 No.9 アキュラARX-02a ダリオ・フランキティ/デビッド・ブラバム/スコット・シャープ 180laps
LMP2
7 No.16 ダイソン-ローラ/マツダ クリス・ダイソン/ガイ・スミス 177laps
*注:NC レースから除外の可能性有り
13 No.20 ダイソン-ローラ/マツダ ブッチ・ライツィンガー/マリノ・フランキィ/ベン・デブリン 168laps
21 No.15 フェルナンデス-アキュラARX-01b エイドリアン・フェルナンデス/ルイス・ディアス 139laps

GT2
8 No.62 RisiフェラーリF430GT2 ミカ・サロ/ピエール・カッファ/ジェイミー・メロー 170laps
9 No.92 レイホールBMW M3 ヨルグ・ミューラー/ディレク・ミューラー/トミー・ミルナー 169laps
10 No.87 ファルンバッハロールポルシェ997GT3RSR ディレク・ヴェルナー/ヴォルフ・ヘンツラー 169laps

9月25日                                                                                                 
●“プチ-ルマン”プジョーがフロントローを独占  GT2のポールはドラン-フォードGTMK7

Photo:Sports-Car Racing

 今年のALMSのLMP1クラスはアキュラだけが有力なエントリーで、アウディとプジョーはセブリングと“プチ-ルマン”にだけワークスチームを送り込む。そのためALMSは、LMPクラスを一本化して、性能調整を盛り込んだLMP2にも総合優勝のチャンスを与えようとしている。もちろん、2010年に向けての取り組みだが、2007年ペンスキーが走らせたポルシェRSスパイダーが、アウディを圧倒したことを考慮すると、充分に可能であるかもしれない。

 プジョーは、ノーズの左右に大きな開口部が存在する、スプリントバージョンの908をアトランタに送り込んだ。ルマンでペスカロロが走らせたバージョンと考えると判り易いかもしれない。北アメリカのスポーツカーファンにとっては、3月にセブリングで見た908と何ら変わらないように思えたかもしれない。
 対するアウディは、ルマンでデビューさせた改良バージョンのR15を送り込んだ。外から見てルマンと違うのは、ノーズの左右にカナードウイングが取り付けられたことのように思える。

 唯一有力なLMP1カーであるアキュラは、ヨーロッパで走っているペスカロロやローラ-アストンマーティンが、今年のレギュレーションの幅1.6mのナローウイングに併せて、次々と改良を加えられているのに対して、大きな改良無しでシーズンを過ごしている。ニック・ワースは、新しい空力パッケージを開発済みであることを明らかとしているが、アトランタにやって来た2台のARX-02aは従来と変わらないボディを身につけていた。

 逆に積極的に開発を行っているのが、LMP2クラスのダイソン-ローラだ。ローラは幅1.6mのナローウイングに併せて、新しいリアカウルをデザインしている。ALMSのLMP2クラスは、昨年と同じ幅2mのリアウイングを使用するが、ダイソン-ローラは、ナローウイング用の新しいリアボディを使った空力パッケージを開発している。
 ダイソンの組み合わせは大きな効果を上げているようで、性能調整を受けていることもあって、ポルシェRSスパイダーやフェルナンデスのアキュラを出し抜いて、LMP2クラスのトップタイムを連続して叩き出している。

Photo:Sports-Car Racing

 逆に“プチ-ルマン”に登場したドレイソンレーシングのLMP1クラスのローラ/ジャドは、最新の“屋根付き”のB09-10でありながら、幅1.6mのナローウイングに2008年の低いリアカウルを組み合わせている。まだ、デビュー間もないため、データの収集やパーツの手配が間に合ってないのかもしれない。

 水曜日の午後から“プチ-ルマン”の公式スケジュールはスタートした。プジョーが安定した速さを見せつける一方、アウディは、プジョーの対抗馬として充分なパフォーマンスを証明している。
 木曜日3回のプリープラクティスが行われたが、午後行われた2回目のセッションの際、ハイクロフトレーシングのアキュラARX-02aは、第3ターンでクラッシュしてしまった。第3ターンは、第1ターン後の急な上り坂の途中にある先の見えないコーナーで、GT2クラスと接触した後アキュラはバランスを崩して舞い上がってコースサイドに叩き付けられた。幸いドライバーは無事だったが、モノコックを破損したため、ハイクロフトは、カリフォルニアのHPDからスペアのモノコックが到着するのを待って、パーツを組み付けることとなった。
 モノコックは金曜日の午前中に到着するため、午後に行われる予選を走ることは不可能で、ぶっつけ本番で過酷な10時間レースを走ることとなるかもしれない。

 GT2クラスは混戦模様で、リシーフェラーリ、ボビー・レイホールのBMW、ワークスコルベット、PTGパノス、ロバートソンレーシングのドラン-フォードGTが、熾烈な闘いを繰り広げている。

 木曜日になって、急激に気温が上がり始めて、予選が行われた金曜日の午後2時には33度に達した。元々湿度が高かいこともあって、マレーシアのセパンで行われるSuperGTを超える過酷なコンディションとなってきた。
 GT2クラスの予選は、予想通り次々とトップタイムが書き換えられた。BMW用としてダンロップが大きなフロントタイヤを開発した結果、ボビー・レイホールのBMWは素晴らしい速さを披露して、最初のリーダーとなった。しかし、直ぐにワークスコルベットとPTGパノスがトップタイムを更新した。一旦BMWはトップタイムを奪い返すが、ワークスコルベットとライリー-コルベットが次々とトップタイムを塗り替えた。
 ALMSでは予選で使用したタイヤを使って決勝レースをスタートしなければならないため、何時もの予選であれば、ほんの数周しか予選のタイムアタックは行われない。しかし、急激に気温が上昇したため、ほとんどのチームが、ほんの数周であっても、予選で使用したタイヤでロングラン走行は不可能と判断したようで、セッション終盤までタイムアタックが続けられることとなった。セッション後半トップタイムを記録したGMワークスのコルベットレーシングが、ポールポジションを確定したと判断してタイムアタックを終了した直後、ライリー製コルベットとドラン製フォードGTが次々とトップタイムを塗り替えた。BMW、PTGパノス、フライングラザードポルシェが挽回を狙って、タイムアタックを続けたが、既にタイヤのライフは尽きていたようで、伏兵のロバートソンレーシングのドラン-フォードGTMK7がGTクラスのポールポジションを獲得した。ロバートソンレーシングのドラン-フォードGTは岡山へも遠征する。

Photo:Sports-Car Racing

 続いてLMPクラスの予選が行われた。真っ先に飛び出したフェルナンデスアキュラとサイトスポーツのポルシェRSスパイダーがLMP2クラスのタイム争いを展開するが、ダイソン-ローラの速さは本物であるようで、少し遅れてタイムアタックを開始したNo.20ダイソン-ローラがLMP2クラスのトップタイムをあっさりと記録した。
 LMP1クラスは2台プジョーとリナンド・カペロのNo.2アウディの闘いとなった。プジョーが次々とトップタイムを塗り替えるのに対して、カペロが唯一挑戦したが、プジョーはフランク・モンタギーとニコラス・ミナシアンが、プジョー同士のタイム争いを展開して、ミナシアンが6秒台を記録してポールポジションを獲得した。

スターティンググリッド
LMP1
1  No.07 プジョー908 ニコラス・ミナシアン/ペドロ・ラミー                                                         1分6秒937
2  No.08 プジョー908 ステファン・サラザン/フランク・モンタギー                                                 1分7秒160
3  No.2  アウディR15 リナンド・カペロ/アラン・マクニッシュ                                                       1分8秒200
4  No.1  アウディR15 ルーカス・ロール/マルコ・ヴェルナー                                                     1分8秒228
5  No.66 アキュラARX-02a ジル・ド・フェラン/サイモン・パグナウド/スコット・ディクソン                   1分8秒348
6  No.7  ORECA01/AIM オリビエ・パニス/ニコラス・ラピエール/ロマ・デュマ                              1分9秒566
LMP2
8  No.20 ダイソン-ローラ/マツダ ブッチ・ライツィンガー/マリノ・フランキィ/ベン・デブリン                1分10秒552
10 No.6 サイトスポーツ-ポルシェRSスパイダー グレッグ・ピケット/クラウス・グラフ/サッシャ・マッセン 1分11秒405
11 No.15 フェルナンデス-アキュラARX-01b エイドリアン・フェルナンデス/ルイス・ディアス             1分11秒758

GT2
13 No.40 ドラン-フォードGTMk7 デビッド・ムリー/デビッド・ロバートソン/アンドレア・.ロバートソン    1分20秒819
14 No.28 ライリー-コルベットC6 トム・サザーランド/トミー・ドリッシ/マット・ベル                            1分20秒877
15 No.4 GMコルベットC6R オリビエ・ベレッタ/オリバー・ギャビン/マルセル・ファスラー                1分20秒912 


9月25日                                                                                                 
●2010ALMSカレンダー発表 人気のラグナセカは5月に6時間レースとして開催

Photo:Sports-Car Racing

 25日“プチ-ルマン”開催中のロードアトランタでALMSのスコット・アタートンは、恒例となっている翌年についての記者会見を行って、2010年のALMSのカレンダーを発表した。
 3月の第三週にセブリングの12時間レースで開幕するのは例年と変わらない。しかし、近年のALMSが、シーズン開幕後、セブリングから近いStピータースバーグやヒューストン等中西部で市街地公道レースを行っていたのに対して、第二戦は一気にカリフォルニアに飛んでロングビーチGPとダブルヘッダーで行われる。続く第三戦も、従来9月にALMSを開催していたラグナセカで行われる。ラグナセカのALMSは、近年2時間30分のスプリントレースだったが、何と6時間の耐久レースとして行われる。セブリングと“プチ-ルマン”に続く人気のラグナセカであるから、来年の5月のラグナセカはたくさんの観客が詰めかけることだろう。
 ラグナセカまでがルマン前のALMSで、その後ルマンに遠征したチームが戻ってきた後、7月にシリーズが再開されるのは例年と変わらない。しかし、ラグナセカが5月に移動したため、9月に行われるイベントは無くなった。現在10月2日の予定で最終戦“プチ-ルマン”がロードアトランタで行われる計画が進められているが、同じ10月2日にIRLもイベントを計画しているため、今後IRLとの調整が済み次第“プチ-ルマン”のカレンダーは正式に発表される。

 また、一ヶ月前スコット・アタートンは2010年にカテゴリーをLMP、LMPチャレンジ、GT2、GT3チャレンジの4つに再編成することを公表していたが、このカテゴリーの再編成についても正式に発表された。
 注目のLMPは、公表通りLMP1とLMP2を1つのクラスとして、性能調整によって同じ速さとする一方、LMPチャレンジは、ORECAクラージュ製のルマンプロトタイプを使用することも発表された。低コストと言っても、完全に新しいカテゴリーであるLMPチャレンジに参加チームについて、スコット・アタートンは「まったく判らない」と言いながらも、最大14台を走らせると語った。つまり、ORECAが生産するLMPチャレンジカーは14台なのだろう。
 GT2は従来と同じレギュレーションで行われることも確認された。2010年はジャガーが参戦することも昨日発表された。
 6月まで唯一のGT1チームだったコルベットレーシングがGT2にコンバートした結果、現在のALMSのGTクラスはGT2が唯一のカテゴリーとなっている。それに対して、2010年GT3チャレンジが、加わることも正式に発表された。GT3チャレンジは、今年ALMSの前座として行われているGT3チャレンジを拡大するカテゴリーで、ヨーロッパでFIAカップとして行われているGT3カーのレースと考えると判り易いだろう。

 今日の記者会見でも、スコット・アタートンは、1年前と比べると30%も経済が低下していることを、再三述べる一方、観客がむしろ増えていることや、SPEED TVに代表される新しいメディアの視聴率が好調であることをアピールした。二酸化炭素を削減するための取り組み等、様々な面で社会から注目されていることも述べている。
 未曾有の不況であっても、ALMSは、真っ先に2010年への目処を確立したようだ。日本はどうするのだろうか?

Rd.1 3月20日(土)セブリング(12時間)
Rd.2 4月17日(土)ロングビーチGP(1時間40分)
Rd.3 5月22日(土)ラグナセカ(6時間)
Rd.4 7月10日(土)ミラーモータースポーツパーク(2時間45分)
Rd.5 7月24日(土)ライムロックパーク(2時間45分)
Rd.6 8月7日(土)ミッドオハイオ(2時間45分)
Rd.7 8月22日(土)ロードアメリカ(2時間45分)
Rd.8 8月29日(土)モスポート(2時間45分)
Rd.9 10月2日(土)“プチ-ルマン”(10時間or1000mile) TBA


9月5日                                                                                                 
●本当に岡山にやって来るLMPカーは何台?

Photo:Sports-Car Racing

 水曜日ACOは、9月1日現在のアジアンルマンシリーズ岡山へのエントリーリストを発表した。しかし、既にチームを解散して、マシンを売りに出したチームゴウが含まれる等、非常に不可解な内容だ。
 直ぐに郷和道に連絡して、再び活動の再開を決心したのか?聞いてみたところ、そのような事実はなかった。既にRSスパイダーの販売は決定して、契約もまとまっているようだ。入金が確認され次第、引き渡すこととなるようだ。
 では、どうして、ACOは、このようなエントリーリストを発表したのだろうか?

 8月に当方がチームゴウが解散したことを掲載した際、どのようにして日本語を解読したのか?不明だったが、2つのヨーロッパのメディアからの問い合わせを受けた。既に当方と契約しているRacecar Enginnring誌等は知っている内容だったため、当方が知る内容について公表した。この事実があったため、当方はACOも知っている内容と判断していた。
 2日前郷和道に同様の話をしたところ、チームゴウが活動を停止したことは、ACOへも通知済みであると言う。
 にも関わらず、ACOは、チームゴウの名前が含まれたエントリーリストを公表した。

 他にも不可解な部分が存在している。SuperGTに参加している、ある有力チームは、アジアンルマンシリーズ岡山と2010年のルマン24時間レースへの参加を望んで、今年の春からACOと交渉している。SuperGTマシンでの参加は出来ないため、新たにACOレギュレーションのGTカーの購入交渉を行っている。予定通りであれば、8月中に売買契約は終了して、クルマを輸送する段階にあるはずだ。しかし、このチームは、ACOのエントリーリストには掲載されていない。
 また、ザイテックの名前が無いのも不可解。まだエントリー申請は行ってないかもしれないが、8月末現在岡山参戦を目標として活動している。確実に参加しないことが判明しているチームゴウを掲載しながら、参加を目標として努力をしている有力チームを掲載しなかった理由は判らない。

 エントリーリストに掲載されたLMP1チームの中で、アストンマーティンは、日本のインポーターが、顧客相手に支援を呼びかけているため、間違いなく岡山へやって来ることだろう。噂を信じるのであれば、日本人ドライバーがステアリングを握る可能性もあるようだ。2台のP01を登録したペスカロロは、彼方此方のドライバーと交渉を行っている真っ最中だ。彼らの目論みとしては、1台だけでも、日本の裕福なドライバーが持ち込む資金によって走らせたいのだろうが、現在のところ、最終決定には至ってないらしい。

 “プチ-ルマン”と岡山のどちらに参戦するのか?動向が注目されていたORECA/AIMは、AIMが岡山のオフィシャルスポンサーに名乗り出たこともあって、1台を岡山に持ち込むことが決まったようだ。
 当初参加しないと思われたコリン・コレスのアウディが、遠征を決定したのは驚きと考えられている。コレスについては、ヨーロッパのメディアも情報がない。もしかしたら、スポット参戦を望む日本人ドライバーが持ち込むスポンサーマネーをあてにしているのかもしれない。11月に岡山でルマンシリーズのレースが間違いなく行われるのだろうが、直前まで、誰が参加するのか?判らないだろう。

LMP1
No.009 ASTONMARTIN RACING    LOLA-ASTONMARTIN
No.10 ORECA AIM     ORECA/AIM
No.11 東海大学.YGK POWER    COURAGE/YGK
No.14 KOLLES      AUDI R10
No.15 KOLLES      AUDI R10
No.16 SORA RACING     PESCAROLO/JUDD
No.17 SORA RACING     PESCAROLO/JUDD
No.87 DRAYSON RACING    LOLA COUPE/JUDD

LMP2
No.5 NAVI TEAM GOH    PORSCHE RS SPYDER
No.24 OAK RACING     PESCAROLO/MAZDA
No.28 IBANEZ RACING     COURAGE/AER

GT1
No.50 LARBURE COMPETITION    SALEEN S7R
No.61 TEAM NOVA     ASTONMARTIN DBR9
No.68 JLOC      LAMBORGHINI
No.69 JLOC      LAMBORGHINI

GT2
No.70 ROBERTSON RACING,LLC   FORD GT
No.71 TEAM DAISHIN     FERRARI F430GT2
No.77 TEAM FELBERMAYR-PROTON   PORSCHE 997GT3RSR
No.88 TEAM FELBERMAYR-PROTON   PORSCHE 997GT3RSR
No.89 HANKOOK-TEAM FARNBACHER   FERRARI F430GT2
No.90 BMW RAHAL LETTERMAN RACING TEAM         BMW E92 M3
No.91 TEAM HONG KONG RACING   ASTONMARTIN VANTAGE
No.98 HANKOOK-KTR     PORSCHE 997GT3RSR


8月31日                                                                                                 
●2010年のSuper GTオールスターレースはスターティングマネー付き!?

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 SuperGT鈴鹿でGTAが行った定例の記者会見の際、GTEより出されたレース数削減の要求に対して、坂東正明GTA社長は、最も参戦費用が大きいオートポリスでの開催を見送ることを発表した。同時に11月にオールスターレースを開催することを明らかとした。オートポリスでのレースが無くなっても、新たにオールスターレースが行われるのであれば、結局レース数は変わらないため、九州までの高額な遠征費用が無くなるだけで根本的なコスト削減とはならない。
 この点について質問したところ、坂東正明社長は、「特別戦(オールスターレース)はエントラントが参戦費用を負担するのではなく、主催者が費用を計上するのを前提としている」と語った。

 現在でもマレーシアのセパンで行われるSuperGTに遠征する場合、上位チームはセパンから遠征費用を提供されている。しかし、GTAのオールスターレースは、セパンとは違った方法を想定しているようだ。
 残念ながら、既に定着したセパンの場合でも、現在セパンとGTAの間の契約金が減ったため、総てがセパンの資金によって賄われている訳ではなく、足りない資金をGTAが負担している実情がある。
 であるから、誰がオールスターレースの資金を負担するか?誰だって心配してしまう。
 その後メーカー関係者の何人かと話したところ、断片的ながら、オールスターレースの財源が明らかとなってきた。

 現在でも、通常のシリーズ戦が終了する11月後半から、富士スピードウェイや鈴鹿サーキット等で、各メーカーがファン感謝ディを開催している。最近では、シーズン中であっても、東京のお台場等で、しばしばエキシビジョンイベントも開催されている。これらのイベントは、元々各メーカー単独で行っていたが、今年8月にはメーカーの垣根を越えて、SuperGTに参加するドライバー達を集めたイベントも行われた。お台場で行われたイベントは、あくまでもエキシビジョンイベントであって、GTレースカーが全開で走るようなシーンはない。そのため、これらのイベントを開催する課程で、オールスターレースの開催についての話し合いが行われるようになったようだ。
 メーカーと関わりのあるドライバー達は、これらのイベントに仕事として参加しているため、オールスターレースはメーカーが資金を負担することを前提として企画がスタートしているようだ。

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 メーカーにとっても、シーズンオフにファン感謝ディを開催してきた実績があるため、大きな障害もなく、オールスターレースの企画はスタートしたようだ。現在のところ、どのようなイベントの形態となるか、決まってないため、各メーカーも、協力するのを決心しただけで、詳しい対応については決まってないようだ。オールスターレースを開催するのと引き替えに、従来行ってきたファン感謝ディを取り止めることについても、今後決定されるようだ。

 ちなみにSuperGTだけでなくフォーミュラニッポンも一緒に行う理由は、現在のフォーミュラニッポンが、SuperGT以上にメーカーの関与無しでは実現不可能なイベントとなってしまった現状を踏まえたものと言えるだろう。
 現在でも、各メーカーがファン感謝ディを開催する際、SuperGTやF1GPマシンだけでなく、各々のメーカーのエンジンを搭載したフォーミュラニッポンマシンを走らせている。この状況を考えると、当然のことと言えるだろう。

 つまり、主導権を握っているのは、GTAではなく、GT500に参加している3メーカーと言えるようだ。
 オールスターレースと言う以上、何らかの選考を行うこととなるのかもしれないが、少なくとも、参加チームが大きな資金的な負担をすることだけは無いようだ。
 1994年にSuperGT(GT選手権)がスタートした際、目指したものは、出演者であるレーシングチームが資金を負担するのではなく、逆に出演料であるスターティングマネーを支給されることだった。スタートから15年坂東正明体制のGTAが、やっとスターティングマネーを実現しようとしている。坂東正明の頑張りに期待したい。

8月19日
●レガシィB4 GT300レースカー登場

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大柄なボディの割にトレッドが狭く感じるが、もしかしたら、このクルマは
暫定的で、既に改良モデルが用意されているのかもしれない。

 昨年末キャロッセによるインプレッサでのSuperGTレース活動は終了した。その後キャロッセ自体が活動の中心をラリーに移したため、今年のSuperGTはスバルが居ない状態でスタートした。
 その後昨年東京R&Dから独立したR&DスポーツがスバルとGTレースについての計画を進めていることが噂されるようになった。しかし、いつまで待ってもスバルやR&Dスポーツからの発表は何もなかった。

 その理由は、彼らが6月に発表される新型レガシィをベースとしてGTレースカーを開発する計画だったからだ。
 そのため、スバルとR&Dスポーツが正式に契約して、新型レガシーGT300レースカーの開発に取りかかったのは5月だった。しかも、8月末に鈴鹿で行われる第6戦でデビューさせようと言うのだから、相当なハードスケジュールだっただろう。
 しかし、時間が無くても、スバルとR&Dスポーツは非常に凝ったGTレースカーを目標とした。

 昨年まで活動したキャロッセのインプレッサも非常に凝ったマシンだった。スバルのフラット4ターボエンジンはフロントに搭載するものの、トランスミッションをリアにレイアウトするトランスアクスルで、エンジンから出た出力は、トランスアクスルタイプのFR同様、ドライブシャフトによってリアに位置するトランスミッションに伝えられる。そこで出力は前後に振り分けられ、フロントを駆動するため、2本目のドライブシャフトがエンジン上面を通ってノーズに位置するフロントのデフに伝えられていた。

 スバルとR&Dが開発したレガシィB4 GTレースカーも、スバルの得意とする4輪駆動であるが、キャロッセとは少々違ったレイアウトで開発されている。キャロッセの様なトランスアクスルタイプの4輪駆動の場合、前後の重量配分をリア寄りとし易い反面、ドライブシャフトが2本必要となる等、非常に複雑となる。しかも、重くなるため、苦労してリアにトランスアクスルをレイアウトしても、2輪駆動ほどリア寄りの重量配分とすることは出来ない。
 2009年R&Dスポーツとスバルは、より現実的な選択を行った。元々スバルのフラット4ターボエンジンは非常に軽く、前後に短い。そこでエンジンルームの後端にエンジンをレイアウトして、エンジン後方に直接トランスミッションは取り付けられ、後輪を駆動する出力は通常のFRマシンの様にリアに位置するデフに伝えられる。トランスミッションにはセンターデフが設けられ、そこで出力を前後に振り分けて、フロントを駆動する出力はエンジン上面に位置するデフに伝えられる。

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リアにはデフしか存在しない。トランスミッションはエンジン後方に直接連結される。エンジン前方のインタークーラー下面にシングル
ターボはレイアウトされ、ノーズの左側から排出されるものはインプレッサ時代と変わらない。

 スバルとR&Dスポーツの工夫はそれだけではない。近年のSuperGTマシンの多くは、スタンダードのボディの内側にカーボンファイバーコンポジット製のパネルを設けて補強されている。実質的にはカーボンファイバーコンポジットのモノコックフレームを目指している。スバルとR&Dスポーツは、その考えを一歩進めて、スタンダードのボディの内側にルマンのLMPカーのカーボンファイバーコンポジット製モノコックが設けた。たぶん、割り切ったフレームを採用した最初の例だろう。
 ちなみにカーボンファイバーコンポジットと言うと、日本では童夢やチャレンジと言った、極少数のコンストラクターの独壇場と考えられているが、スバルとR&Dスポーツは、レース業界ではなく、航空機業界を活用することで、カーボンファイバーコンポジット製モノコックを作り上げている。元々R&Dスポーツは東京R&Dのコンポジット部門の一部であったこともあって、新たにR&Dスポーツとして独立するにあたって、コンポジット会社も設立している。
 また、スバルは自動車を作っているだけでなく、飛行機も作っている。スバルの航空機部門を活用することで、大きなモノコックを焼き上げることも容易だったらしい。

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 ボディと分離させたら、たぶんLMPカー用と変わらないカタチの
カーボンファイバーコンポジット製モノコックが採用されている。

 唯一従来のものを踏襲しているのはSTIが開発するフラット4ターボエンジンだ。フリクションの少なさを活かしたシングルターボであるのもインプレッサ時代と変わらない。
 昨日富士スピードウェイにおいて、レガシィBB GT300レースカーはシェイクダウンテストを行った。もちろん、シェイクダウンであるから、各部のチェックを中心とした走行が1日中行われた。
 レガシィBB GT300レースカーは、一旦厚木のR&Dスポーツの工場に戻って、水曜日に各部の点検を行い、木曜日には鈴鹿に向けて出発することとなる。

8月17日
●2010年のALMS トップカテゴリーのLMPはLMP1とLMP2を統一、GTのトップカテゴリーはGT2


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 16日ALMSのスコット・アタートンはロードアメリカ(エルクハートレイク)で記者会見を行い、2010年のALMSを新しい4つのクラスで行うことを明らかとした。
 プロトタイプクラスは2つに分けられ、トップカテゴリーは“LMP”と呼ばれる。その中身は従来のLMP1とLMP2を統合したクラスだ。もう1つのプロトタイプクラスは“ルマンチャレンジ”と呼ばれるが、今年LMSとルマン24時間の前座レースとして行われているフォーミュラルマンによって行われる。
 GTクラスのトップカテゴリーは“GT”と呼ばれる。実態は現在のGT2だ。最後のクラスは“GTチャレンジ”だ。GTチャレンジクラスは、現在FIAGTの前座で行われているGT3カテゴリーのことだ。と言うより、ポルシェカレラカップやフェラーリチャレンジのクルマによるレースと言った方が判り易いかもしれない。
 GTチャレンジクラスのレースは、既に今シーズン初め、ソルトレイクの側のミラーモータースポーツパークで行われている。スコッット・アタートンによると、ヨコハマタイヤのワンメークで行われているポルシェGT3チャレンジはGTチャレンジの最適なクルマと言っていることでも、GTチャレンジクラスの正体が判るだろう。

 誰もが不思議に思っているだろうが、これまで3年間もかけて、LMP1がトップカテゴリーで、LMP2はその下のカテゴリーであることを明らかとするため、LMP2の速さを削ぐ努力が行われてきた。そのため今年、LMP2がLMP1を破って総合優勝してしまうようなレースは行われなくなった。しかし、スコット・アタートンによると、2010年、再びLMP2の車重を軽くして、LMP1とLMP2によるトップ争いを実現しようとしている。
 今年アウディがシリーズ参戦を取り止めた結果、LMP1クラスのトップレベルなマシンはアキュラだけとなってしまった。以前トップレベルなLMP1マシンがアウディだけだっと時は、LMP2クラスに、アウディを圧倒する速さを披露したペンスキーのポルシェRSスパイダーが居た。その時代を再現しようと言うのだろう。
 理念を貫きたくても、背に腹は代えられないと言うのが本音だろう。

 ルマンチャレンジクラスはフォーミュラルマンそのもので、ORECAクラージュLC75をベースとしてシボレーのストックブロックV8を積んだクルマが使われる。今年ヨーロッパで始まったフォーミュラルマンのレースは30台以上の参加が想定されながら、その半分しかエントリーが集まらなかったため、このカテゴリーで独占販売することを前提としてクラージュを買収したORECAにとって、失望すべき状況が続いている。しかもペスカロロを救済しようとしたACOは、フォーミュラルマンとほとんど同じペスカロロルマンなるクルマをペスカロロにオーダーしてしまった。
 ORECAのヒュー・ド・ショーナックが、どのような気持ちなのか?容易に想像出来るだろう。
 今年実現するかも知れないアジアンルマンについても、ACOは「台数が足りないのであればフォーミュラルマンを走らせる」と発言しているほどで、北アメリカにフォーミュラルマンを売れるのであれば、大助かりと言うことだろう。
 ACOと違ったクラスで行うと言っても、2010年のALMSについてACOが相当関与していることは明らかだ。

 GMワークスのコルベットレーシングがGT1クラスから撤退した時点で、ALMSのGT1クラスは崩壊していたため、GT2クラスをトップカテゴリーとすることは予想されていた。GT3カーによるGTチャレンジも、FIAGT3カップの活況を見るまでもなく、GTクラスの下位カテゴリーとして最適であることは判明していた。
 しかも、既にGT2カーとGT3カーは世界中にたくさん存在している。ALMSの新しいGTカテゴリーは最良の選択であるように思える。昨年ACOは、FIAと連携するカタチで2010年のGTカテゴリーを構想していたが、2009年GT1クラス唯一のワークスチームだったGMはGT2を選択したため、2010年ACO自体、FIAとの連携を諦めて、ALMSと同じGT2とGT3によるGTカテゴリーを実施することさえ噂されている。

 問題はプロトタイプクラスだ。既にACOは、2011年からLMP1とLMP2クラスを新しいレギュレーションによって行うことを発表している。2011年ルールに合わせて、既にアウディとプジョーはニューマシンの開発に取り組んでいる。
 そのため、LMP1とLMP2を統一したLMPクラスは2010年限りとなると考えられている。このことを裏付けるように、スコット・アタートンは、現在ACO的にはポイント対象外であるハイブリッドカー等エコカーの参加を奨励することを発表している。ザイテックに加えて、たくさんのハイブリッドカーが参加することを期待しているのだろう。

 一見ALMSの独自路線の発表のように思えるが、スコット・アタートンは「新しいクラス分けはACOの支持を得ている」と発表した。現実的な選択を行った2010年のALMSは、ACOにとって、自分達の方向性を探る意味もあるだろう。

8月5日
●上海でのアジアンルマンシリーズはキャンセル 岡山はどうする、頼みのチームゴウは解散

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 ポルトマヨ(アルガーブ)で記者会見を行ったACOのダニエル・ポワスノーは、11月8日上海で開催予定だったアジアンルマンシリーズをキャンセルすることを発表した。

■30台を集めようとしているACO
 6月当方のアジアンルマンシリーズについての質問に対して、ポワスノーは「現在29台のエントリーを受け付けている。最低30台を走らせるため、台数が足りないのであれば、フォーミュラルマンをLMP2スペックで走らせる」と述べていた。しかも「アウディは参加しないが、プジョーは、既にペスカロロからのエントリーを受け付けた」と語った。

■岡山のピットは42、WTCCとルマンシリーズでピットは足りるのか?
 元々富士スピードウェイで開催の準備が行われていたアジアンルマンシリーズが、2月に突然岡山に変更された際、幾つかの疑問が存在していた。最初の疑問は、岡山のイベントはWTCCとのダブルヘッダーであるため、ピットの数が足りるのか?と言うことだった。岡山国際サーキットは42しかピットが存在しない。もし、ルマンシリーズに30台が参加するのであれば、WTCCはたった12台でレースを行わなければならない。昨年と比べると、多少減ったと言っても、WTCCには最低20台が走ると考えられるため、まともなレースを行うのであれば、ピットが最低10ヶは不足する。

■富士スピードウェイから岡山へ
 富士スピードウェイでの開催について、童夢の林みのるやトヨタが支援するため、昨年秋以降の急激に景気が後退する中であっても、様々な取り組みを行っていた。彼らは、富士スピードウェイでのルマンシリーズをアピールするため、首都圏でイベントの開催まで計画していた。突然ACOが岡山に変更した結果、ACOの日本における信用は大きく低下してのは言うまでもない。その後岡山への参加を希望したレーシングチームは、誰とコンタクトするのか?さえ判らない状況に陥っていた。5月にダニエル・ポワスノーは「私に直接コンタクトして欲しい」と述べていたほどだ。

■元々上海に参加するチームは居たのか?
 また、岡山に続いて11月8日に上海で行われるイベントは、それ以上に不可解な存在だった。まず、ACOは、アジアンルマンシリーズについて、ヨーロッパとアメリカからやって来る20チームとアジアのレーシングチームを合わせて30台で開催する計画だった。アジアのレーシングチームとは、日本のスーパーGTに参加しているレーシングチームのことだ。ところが、11月8日にはもてぎでスーパーGTが行われる。第一、元々11月1日に開催予定だったもてぎのイベントを、遅れて開催を発表したアジアンルマンシリーズに合わせて、1週間ずらしてカレンダー申請している。
 実際日本からアジアンルマンシリーズへの参加が噂されたチームの多くはスーパーGTに参加している。
 つまり、元々上海に参加するチームは非常に限られていた。

■誰が金を出すのか?
 しかも、ACOがアジアンルマンシリーズの開催を計画した際、最初に誘致された富士スピードウェイは、当時F1GPショックの真っ直中だったため、コースをACOに貸すことで開催を承諾している。たぶんACOは、出来れば1980年代のWECの様に、富士スピードウェイ等から資金を得たかっただろう。しかし、最初にACOの代表としてコンタクトした人物が「コースを借りるには幾ら必要か?」と発言しているのだ。ACOが交渉方法を間違えたとしか思えない。
 どうして、林みのるやトヨタが乗り出したか?と言うと、この最初のボタンの掛け違えを修正するためだった。

 ところでACOは、富士スピードウェイを3日間借りたり、ヨーロッパとアメリカの20台のレーシングチームを極東まで運ぶ資金は、どこから捻出するのだろうか?
 ACOにとって、アジアは黄金の地域と考えているらしい。日本と親しい付き合いを行っているため、現在の日本から、1980年代のような金を拠出させることが難しいことは判っていたかもしれない。しかし、世界最大の市場に成長しつつあった中国に対する見方は違っていたようだ。
 ACOは、アジアンルマンシリーズを計画した最初の段階から、上海のサーキットに対して、輸送代金を拠出するよう、要求している。ところが、当方が知っているだけでも、上海の交渉相手は2度変わっている。しかも、中国だって、昨年の秋以降の急激な景気の後退の影響が無い訳ではない。特に西側先進国と近い状況にあった上海の影響は大きいだろう。
 上海で行われるF1GPの状況を見ても、このような状況は明らかだった。

■上海でのルマンシリーズはキャンセル
 今年に入って、上海の交渉相手(どうやら主催者ではないらしい)が資金の拠出を断ったことが明らかとなった。
 この段階でACOは上海での開催を取り止めて、富士スピードウェイでの開催に集中するべきだった。ところが、同じ11月1日、同じ日本の岡山で借りていたWTCCに対して、資金を折半してアジアンルマンシリーズを開催することを提案して、富士スピードウェイから岡山へ変更してしまった。
 既に上海での開催は不可能と考えられていたが、やっとダニエル・ポワスノーは上海をキャンセルすることを認めた。
  と言っても、WTCCが20台で、ルマンシリーズが現実的な20台だとしたら、問題なくレースを行うことが可能だ。
 これ以上、何かが起こらないのであれば、11月1日は素晴らしいレースを見ることが出来るだろう。

■既にチームゴウは解散、誰が岡山へ参加するのか? 積極的なアストンマーティン
 ダニエル・ポワスノーによると、アジアンルマンシリーズ岡山へ、東海大学、チームゴウ、ダイシン、ハンコック/KTR、JLOC、ホンコンレーシングが参加すると言う。しかし、既にチームゴウは、ルマンの際のヒューマントラブルに嫌気がさした郷和道がチームを解体してしまった。ルマンで走らせたポルシェRSスパイダーも、今月中にはヨーロッパのレーシングチームに販売される予定だ。早ければ、LMS最終戦シルバーストーンに参加するだろう。童夢はALMSの調査を行っており、少なくとも自身によるワークスチームの参加の可能性はない。噂に上っていたタイサンは、2010年に向けて導入予定のクルマが、10月にデリバリーされるのであれば、可能性があるかもしれない。
 ヨーロッパからやって来るレーシングチームについてはペスカロロ、ペスカロロプジョー、アストンマーティン、ORECA/AIMが決定している。中でもアストンマーティンは熱心で、ALMS“プチ-ルマン”への参加をキャンセルして岡山へやって来る。既に日本国内での受け入れ体制を構築する準備が行われている。

7月3日
●プジョーが大人の判断 ACOに対する抗議を撤回

Photo:Peugeot-Media

 現在でもACOは6月30日に行われた会議について何も発表していないが、昨日元々アウディのノーズがレギュレーション違反であるとして、ACOに抗議をしたプジョーは、抗議を取り下げるとの発表を行った。
 プジョーは、「ACOは、ルマンシリーズ、ルマン24時間レース、そしてアジアンルマンシリーズに参加する総てのコンストラクターとのコミュニケーションを図るため会議を開催した。そして、レギュレーションを施行する者(ACO)と参加者の間に何も隠し事があってはならないことを確認した。このことがエンデュランスレースの将来を左右するキーポイントであることも確認された。プジョーはこのことを確認したため、抗議を取り下げることを決心した」と発表した。

 まだACOとアウディの発表を待つべきだろうが、最も妥当な線でまとまったように思える。
 しかし、アウディR15のフロントセクションが合法であるとも、違反であるとも、何ら判定してはいないことを忘れてはならない。FFSAもプジョーの抗議を支持しているのだ。
 今後アウディが、問題のノーズを、誰にも気づかれることなく、違うカタチに戻すのであれば、この話は終わることとなるかもしれない。つまり、世界中のコンストラクターは、違反であると判断すべきだ。
  ところが、アウディが、フロントセクションを使い続けるのであれば、プロドライブや童夢は風洞実験を行って、同じ様なフロント床下のフラップ付きのディフューザーをローラ-アストンマーティンとS102に取り付けることだろう。

7月2日
●FFSAがプジョーの抗議を支持

Photo:Sports-Car Racing

 2週間前に行われたルマン24時間レースの際、車検終了後プジョーは、以前から問題となっていたアウディR15のフロント部分の形状について、「アウディR15のフロント部分の形状はレギュレーション違反だ」として、車検に合格させたACOに抗議した。直ぐにACOはプジョーの抗議を門前払いしたため、プジョーは、より上部組織へ控訴する意向を示していた。その段階でプジョーはF1至上主義のFIAではなく、他の組織へ控訴することを臭わせていたが、フランスのASNであるFFSAへの控訴を実行した。

 ACOは、毎年恒例となっている、翌年のレギュレーションを話し合うテクニカルミーティングの際、アウディR15について話し合うことを約束していた。そのACOのテクニカルミーティングが6月30日に行われる予定だったため、FFSAの裁定が注目されていたが、29日FFSAは、プジョーの抗議を支持する意向を表明した。
 少々微妙なのは、FFSAのコメントによると、「プジョーの抗議を支持する」と述べていることで、FFSAは「プジョーの抗議は正しく、アウディR15はレギュレーション違反だ」と裁定していないことだ。

 昨日ACOのテクニカルミーティングは、パリのFFSAの会議室で行われている。FFSAの意志を反映するカタチで会議はスタートしたようだが、現在のところ、個別の意見が漏れ伝わってくるだけで、ACOによる発表は行われていない。しかし、もし、アウディR15はレギュレーション違反であると判断されるのであれば、R15の開発段階から、その中身を知っていただけでなく、車検で合格させたACOのダニエル・フェルドリックスの立場が危うくなってしまう。
 つまり、何らかの大岡裁きが行われることが予想されている。昨日のミーティングによって、各コンストラクターから出された意見を元にした、ACOの発表は1週間後と考えられている。あるいは、6月15日に新制ACOがスタートしたばかりであることを考えると、さらに遅れることとなるかもしれない。

 ACOの判定がどうなろうと、2009年のルマンで、アウディがプジョーに歯が立たなかったことは事実であるため、既にアウディは問題を見極めるため、新たな活動を開始している。レギュレーション違反が問われているフロント部分については、たぶん、ACOの判定を待って改修するだろうが、問題となった空力コンセプトについては、既に風洞実験を開始したと言われている。風洞実験に使われるスケールモデルの製作は容易ではないから、これまで作られて、ボツとなった空力コンセプトの風洞実験モデルが使われているのだろう。

 アウディの事情やACOの苦悩がどうであっても、間違いなく言えるのは、もし、アウディR15のフロント部分のデザイン、特に床下のディフューザー後方に取り付けられた、フォーミュラカーのフロントウイングのような、事実上のフラップが合法と判定されるのであれば、総てのコンストラクターが大急ぎで風洞実験を行って、予算に余裕があるのであれば、今年中に次々と同じ様なフラップを床下に取り付けることだろう。


6月14日
●16年ぶりにプジョーがルマン優勝

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 日付が変わる頃、チームゴウのNo.5ポルシェRSスパイダーはピットに入ってきて、ガレージに入れられた。どうやらピッチングが激しいようで、フロントサスペンションの点検を行った。4月にチームゴウが富士スピードウェイで初めてRSスパイダーを走らせた時、ピッチング対策として装着されている3本目のダンパーの調子が悪く、なかなか基本的なセッティングを見出すことが出来なかった。その経験から、心配されていた部分だったようだが、メカニック達が数分間で修復して、RSスパイダーをレースに復帰させた。
 ACOの表現によると、メカニック達が修復に要した時間は「a couple of minutes」としている。当然ながら、もう少し時間を要したが、非常に素早い仕事であったのは間違いないだろう。
 残念ながら、このトラブルによって、LMP2クラスのトップを走るESSEXのRSスパイダーから2周遅れとなった。

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 2台となったアウディR15は、ラジエターやインタークラーを通過する空気によって空力的アドバンテージを得ているコンセプトの影響で、ラジエターやインタークーラーにゴミが溜まり易いようで、定期的にピットのガレージに入れて、メカニック達がラジエターとインタークーラーの清掃を行っている。
 オーバーヒートの兆候が現れることによって、ラジエターやインタークーラーの目詰まりが明らかとなるため、いきなり空力性能が変化することはないようだが、アウディが想定しなかった弱点であることだろう。

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 3時37分レース序盤、No.17ペスカロロプジョーとのピットでのアクシデントによって遅れていたNo.7プジョーは、バイブレーションを訴えてピットに滑り込んできた。床下中央のスキッドプレートを交換してレースに復帰した。
 No.7プジョーの左リアタイヤを破壊したNo.17ペスカロロプジョーは、午前4時過ぎ1コーナー先のLa Chapelleでクラッシュした。ドライブしていたブノア・トレルイエの無事が確認されたが、No.17プジョーはスクラップとなった。
 午前6時太陽が姿を現した時、No.9とNo.8のプジョーが同一ラップで1→2体制を築き、No.17ペスカロロプジョーの驚異から開放されたNo.1アウディR15が3位を走行している。

 午前7時過ぎチームゴウのNo.5ポルシェは、セイフティカーランの機会に、傷んだフロントのボディワークを交換するため、ピットのガレージに入れられた。素早くメカニック達は修復して、No.5ポルシェをレースに復帰させた。
 夜中のサスペンション修理に続いて、またしても素晴らしい仕事を披露したチームゴウの4人のメカニック達に対して、レース終了後ACOは、ベストテクニカルアシスタンスチームに与えられるESCRA PRIZEを与えることを発表した。賞の送り主であるESCRAは地元のメカニックの学校だ。

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 午前9時26分ハロルド・プリマがドライブするNo.009アストンマーティンは、ポルシェカーブの進入でバランスを崩してタイヤバリアに激しく叩き付けられた。スイス人の無事は確認されたが、No.009アストンマーティンは完全に破壊された。このアクシデントによって、今年プロドライブは、3台目のローラ-アストンマーティンを失った。

 昼頃から雨が降る予報が出されていたが、10時30分を過ぎる頃になると、彼方此方で雨が落ちてきた。しかし、直ぐに天気は回復して、11時を過ぎる頃になると、再び強い日差しがサルテサーキットに注がれている。
 11時29分No.1アウディR15は、再びピットのガレージに入れられた。インタークーラーのダクトを清掃すると共に、右側のリアサスペンションを交換するため13分間を要した。

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 トップを走る2台のプジョーに対してNo.1アウディR15は3周遅れであるため、よほどの事が起きない限り、プジョーの優勝が濃厚になってきた。LMP2クラスは、ESSEXのRSスパイダーがチームゴウに3周の差を付けている。
 午後1時45分過ぎNo.39ローラ/マツダはオイルを垂れ流しながら走行していた。ほとんどコース全周に渡ってオイルは撒かれてしまったが、オフィシャルがイエローコーションを提示する直前、荒聖治がドライブするNo.5RSスパイダーが第一シケインへのブレーキングに入った。オイルに乗ったNo.5RSスパイダーは、突然グリップを失ってタイヤバリアにクラッシュした。復活したチームゴウの挑戦は、あっけなく終わることとなった。

 互いの間隔が離れていたため、午後2時をまわると、プジョーはNo.8をスローダウンさせて、3台の908に編隊を組むよう指令を出した。少し遅れてアウディとアストンマーティンも残った2台によって編隊を組んだ。そして午後3時1分45秒、大歓声を受けながら3台のプジョーはダニエル・ポワスノーの降るチェッカードフラッグを受けた。

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2009年ルマン24時間レース結果
1:No.9 プジョー908       382laps
2:No.8 プジョー908       381laps
3:No.1 アウディR15       376laps
4:No.007アストンマーティン    373laps
5:No.11 ORECA          370laps
6:No.7 プジョー908        369laps
7:No.14 コレスアウディR10    +1分6秒816
8:No.16ペスカロロP01           368laps
9:No.15 コレスアウディR10    360laps
10:No.31 ESSEXポルシェ     357laps*LMP2*

6月13日
●圧倒的な強さでプジョーがリード*午後3時から午前0時*

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□No.8プジョーが圧倒的な速さでリードを広げる
 テストディがキャンセルされたことによって、ほとんどのチームは、決勝レースの朝45分間行われるフリープラクティスで、決勝レースを想定したセッティングを施して連続走行を行うこととなった。絶対的な速さでは同程度だったとしても、プジョーはロードラッグの空力パッケージであるため、速いストレートスピードであるだけでなく、ロードラッグ故燃費も優れると考えられるため、決勝レースに相応しいと考えられていた。
 予想通りプジョーは、フリープラクティスでトップ3を独占した。

 日が昇るにつれて、気温が上がり始めた。午後3時気温は29度に達した。熱い太陽の日差しが降り注ぐ中、フランク・モンタギーが乗り組んだNo.8プジョー908を先頭にして、2009年のルマン24時間レースがスタートした。
 スタート後たった10分でNo.3アウディR15はダンロップシケインでコースアウトした。そのままレースに復帰するが、インディアナポリスでクラッシュしてしまった。ピットまで戻るが、修理するのに2周を要することとなった。

 レースはNo.8プジョーを先頭にして、プジョーが上位占めて走行しているが、プジョー陣営も無事ではなかった。スタートから38分後最初のピットストップの際、先にピットインしたNo.7の作業が終了した時、No.17ペスカロロプジョーがピットに入ってきた。しかし、No.7のメカニックはNo.17の接近に気づかず、スタートの合図をしてしまった。そのため、ピットアウトしようとしたNo.7の左リアタイヤにNo.17の右ノーズが接触してしまった。そのままNo.7はコースインするが、タイヤがバーストしており、ユノディエールを走っている間にリアカウルはボロボロになってしまった。無事1周を走り切った後、No.7プジョー908はピットのガレージに入れられて、30分間の修理を行うこととなった。

 スタートから2時間が過ぎてもフランク・モンタギーのドライブでスタートしたNo.8プジョー908は圧倒的な速さを見せつけた。その後方ではNo.9プジョー908と2台のアウディR15が順位を入れ替えながら走行している。
 No.7プジョーのタイヤがバーストした結果、ほとんど1周に渡ってタイヤの破片がコース上にばらまかれることとなった。そのためセイフティカーが導入された。そのタイミングで、多くのクルマはピットに入った。
 プジョーが速さを見せつけ、No.8に次いでNo.9が2位の座を確保した。アウディ勢は3位と4位を走行している。
 アウディ勢は、フロントノーズ先端を破損し易いようで、クラッシュしたNo.3だけでなく、No.1とNo.2もノーズコーン先端を破損して、ノーズセットを交換している。

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□アウディの不運
 LMP2クラスは、ESSEXのポルシェRSスパイダーをチームゴウのRSスパイダーが追う展開が続いている。荒聖治が3スティント連続でドライブしているが、どうしてもESSEXを抜くことが出来ない。その後国本京佑に交代した後、ユノディエールの第一シケインで国本京佑はESSEXをパスした。

 午後7時40分頃ピットロード入り口付近のフォードシケインにおいて、No.009アストンマーティンがLMP2クラスのNo.26ラディカルを弾き飛ばしてしまうアクシデントが発生した。ラディカルはピットロードのタイヤバリアまで飛ばされて大破した。ピットロードの入り口付近だったため、ラディカルは何とか3輪走行でピットにたどり着いた。
 現在のところ、No.009アストンマーティンへのペナルティは発表されていない。
 しかし、このアクシデントによって、再びセイフティカーが導入された。

 セイフティカーが姿を消した頃、レース序盤のクラッシュで遅れていたNo.3アウディR15がピットに入ってきた。そのままガレージに入れられた。左側のシリンダーのインジェクションの圧力が無いようで、大々的な修理に取りかかった。
 
 トップを快走していたNo.8プジョーは、午後9時過ぎトランスミッションのトラブルによって、ピットに滑り込んで来た。プジョーのメカニックは、たった9分間でギアクラスターを交換した。しかし、その間にトップの座はNo.9プジョー908に奪われることとなってしまった。

 午後9時30分を過ぎる頃から、エマニュエル・コラールが乗り組んだESSEXのRSスパイダーが国本京佑のチームゴウのRSスパイダーを追い上げてきた。9時45分2台は同時にピットに入ったが、チームゴウが国本京佑からサッシャ・マッセンにドライバー交代したため、ESSEXがチームゴウをリードすることとなった。

 午後10時、ルーカス・ロールがドライブするNo.2アウディR15がクラッシュした。リアタイヤが2つ共破壊されており、そのままリタイヤすることとなった。ルーカス・ロールは事の重大さを理解することが出来ずに、エンジンを始動するため、20分間もコクピットの中で作業を続けていた。
 アウディの不運が続く、その直後2位を走行していたNo.1アウディR15がピットに入ってきた。インタークーラーに大量のゴミが付着しており、ガレージに入れられて清掃作業が行われた。R15はラジエターやインタークーラーを通過する空気をも活用して大きな空力性能を得ているため、ラジエターやインタークーラーにゴミが付着して空気の流れが阻害されると、オーバーヒートだけでなく、空力性能も低下してしまう。それ故の作業だった。
 インジェクションの圧力の問題を修理していたNo.3は、10時13分、2時間21分45秒を要して、インジェクション交換を終了して、レースに復帰した。

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*午前12時(スタートから9時間後)の順位
*LMP1*
1:No.9 プジョー908       148laps
2:No.1 アウディR15       +3分01秒340
3:No.8 プジョー908       147laps
4:No.17ペスカロロプジョー908  +1分39秒116
5:No.007アストンマーティン    146laps
6:No.14 コレスアウディR10    144laps
7:No.15 コレスアウディR10    +2分44秒660
8:No.11 ORECA          +2分55秒932
9:No.16ペスカロロP01           143laps
10:No.7 プジョー908        +2分21秒884
**************************
*LMP2*
14:No.31 ESSEXポルシェ     140laps
16:No.5 チームゴウポルシェ    138laps

6月12日
●最後の10分間の闘いを制したプジョーがポールポジション

Photo:Sports-Car Racing

 予想通り雨は上がり、ドライコンディションの中、たった1日の2009年のルマンの予選は行われることとなった。
 テストディがキャンセルされただけでなく、昨日6時間にわたって行われたフリープラクティスが雨となったため、今日の4時間の予選の中で、ドライコンディションでのセットをまとめてタイムアタックを行わなければならない。

 直前に行われたフォーミュラルマンの走行の際、ダンロップブリッジ先でガードレールを破壊する激しいクラッシュが発生したため、1回目の予選は20分遅れでスタートした。
 最初にワークスプジョーのNo.8とNo.7がタイムボードのトップ2を占めた。その後方には昨日速さを披露したアウディとペスカロロプジョーが続いた。ワークスプジョーが持ち込んだローダウンフォースパッケージの908がドライのサルテサーキットを走るは初めてであるため、ワークスプジョーはタイムアタックを行いながらも、ピットインを繰り返して、サスペンションと空力のセッティングを煮詰めるのに余念がない。
 ガソリンエンジンクラスでは、ペスカロロP01が出遅れて、アストンマーティン勢が上位を占めている。しかし、1番時計はプロドライブのローラ-ストンマーティンではなく、Speedy-SebahのローラB08-60/アストンマーティンだ。
 最初の2時間のセッションの後半に入って、No.8ワークスプジョーが3分24秒852、No.17ペスカロロプジョーが3分25秒062を記録する。今年ACOは、幅1.6mのリアウイングとエンジンパワーの削減によって、3分30秒のラップタイムを想定していた。ところが、ACOの予想は大きく覆される状況となっている。
 初めてのドライコンディションとなって、どんどんコースにタイヤのラバーが乗ってグリップしてくるため、セッション終盤になっても次々とタイムアタックが行われた。そしてNo.1アウディR15をドライブするアラン・マクニッシュは、3分23秒650と言う圧倒的なタイムを叩き出して、1回目の予選のトップタイムを記録した。

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 午後10時から最後の2時間の予選が行われた。例年午後10時から行われる2回目の予選は、気温が低くなることもあって、開始早々のコースが混む前、そして、最もタイヤのラバーがコース上に乗ってグリップする最後の30分間、熾烈なタイムアタックが行われる。ドライコンディションでの走行時間が限られる今年の場合、ほとんどのチームが、午後10時に2回目の予選が開始されるとコースインしてタイムアタックを試みた。予想に反してコースが混雑することとなった。

 そのため、真っ先にコースインしたプジョーはタイムアップ出来ずに、ピットインを繰り返してセッティングを行っている。1回目アラン・マクニッシュによってNo.1がトップタイムを記録したアウディは、コースが混むのを予想していたようで、最初ピットから離れなかった。No.2に何らかの問題があるようで、ガレージに入れ、得意の床下に設置した油圧ジャッキでクルマを持ち上げて左側のラジエターの配管を点検している。
 10時20分を過ぎるとアウディ勢もコースに出るが、タイムアタックを行うのではなく、レースに向けたセッティングを行っているようで、高めのロードクリアランスで走行している。

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 昨日雨のフリプラクティスでタイヤがスローパンクチャーを起こしたチームゴウのRSスパイダーは、1回目の予選の際にもスローパンクチャーに見舞われてしまった。そのため満足出来るタイムアタックが出来ずにESSEXに先行されてしまった。そのため、スローパンクチャーの原因の把握に努める一方、2回目の予選の最初に1回だけタイムアタックを行うことを決定した。10時に2回目の予選が開始されると、荒聖治が乗り組んだNo.5 ポルシェRSスパイダーはアタイムアタックを開始した。もちろんライバルのESSEXもチームゴウの追撃は承知しているため、エマニュエル・コラールを乗り組ませて、LMP2クラスのポールポジション争いを展開することとなった。当然かもしれないが、2台のRSスパイダーは、ほとんど同じパフォーマンスを示した。しかし、荒聖治はエマニュエル・コラールより、ほんの少し運がなかったようで、トラフィックに捕まってしまった。その結果、ESSEXが3分37秒720、チームゴウが3分37秒802を記録して、たった0,078差でESSEXがLMP2クラスのポールポジションを獲得した。
 チームゴウは、直ぐにタイムアタックを終了して、ピットに戻ってきたNo.5RSスパイダーは、決勝レースを想定した高めのロードクリアランスに仕立てられる一方、荒聖治から国本京佑に交代して、決勝レースを想定したシュミレーションを開始した。やっと燃費を含めた決勝レースを想定したテストが開始されることとなった。

Photo:Sports-Car Racing

 11時35分プジョーは3台の908をピットに呼び戻した。そして作戦通り、最後のタイムアタックを行うため、タイヤを履き替えると、次々とコースに送り出した。しかし、ステファン・サラザンが乗り組んだNo.8だけはサスペンションのセッティングを変更するため、一旦ガレージに入れられ、残り15分でコースに復帰した。
 アウディも、プジョー勢に呼応するように次々とタイムアタックを再開した。
 そしてステファン・サラザンがドライブするNo.8プジョー908は、最初のタイムアタックで3分22秒888を叩き出してトップに躍り出た。時計の針が12時を過ぎても、アウディとプジョーのタイムアタックは続いていた。しかし、最後の1周でタイムアップに成功したのはマルコ・ヴェルナーがドライブしたNo.2アウディだけで3分25秒台に過ぎなかった。その結果、予想通りプジョーはポールポジションを獲得することとなった。
 ガソリンエンジンクラスは、ペスカロロP01を破ってアストンマーティン勢が上位を占めた。

6月11日
●不安定な天気であっても、ACOが目論むボーダーラインの3分30秒台を記録!

Photo:Sports-Car Racing

 景気後退の影響によってテストディがキャンセルされたため、今年のルマンの水曜日は、通常より1時間早い6時から6時間連続でフリープラクティスが行われることとなった。午後5時から行われたフォーミュラルマンの走行の際、コースは完全なウェットコンディションだった。しかし、雨は止んで晴れ間も出ていたため、午後6時にフリープラクティスが開始されると、どんどんコースは乾き始めた。トップを狙うLMP1カーの中で、真っ先にコースインしたのはペスカロロプジョーだった。コースが乾き始めると、次々とスリックタイヤに履き替えたが、ペスカロロプジョーはスリックタイヤによって最初にタイムアタックを行って3分33秒028トップタイムを叩き出した。

Photo:Sports-Car Racing 

  他のチームも次々とスリックタイヤに履き替えてタイムアタックを行っていた。ペスカロロプジョーに続いてアウディとワークスプジョーもタイムアタックを行って、2台のR15は3分30秒台までタイムを縮めた。
 3台のワークスプジョーは、3年前にアウディが行ったように、フロントノーズ左右の開口部を塞いだロードラッグカウルを装着している。ロードラッグであると同時にダウンフォースも少ないため、乾き始めたコースコンディションとはベストマッチとは言えないようだ。それでも3分31秒を記録して、素晴らしいポテンシャルをアピールした。

 このままドライコンディションが続くのであれば、どんどんタイムアップしたかもしれない。しかし、午後7時頃になると、コースの彼方此方で雨が降り始めた。最初ミュサンヌ方向から雨は降り始めてインディアナポリスとポルシェカーブを濡らした。ところが同じ時間、テルトルルージュから第1シケインはドライコンディションであったため、ほとんどのチームはスリックタイヤのまま走り続けた。しかし、次第に雨脚が強くなっため、総てのチームがピットに入ってレインタイヤに履き替えることとなった。もちろん、それ以上のタイムアップは不可能となった。

 今年ミシュランはQFタイヤを供給しないと発表している。そのため当初、ACOが目論む3分30秒程度のラップタイムとなると考えられていた。しかし、不安定なコースコンディションの中3分30秒台を記録してしまったため、プジョーのローダウンフォースカウルが威力を発揮出来るようなコンディションであれば、さらに数秒タイムアップすることは間違いないだろう。

Photo:Sports-Car Racing

 現在のACOのレギュレーションでは、2年不参加が続いた場合、ルマン優勝ドライバーであっても、ACOはルーキドライバーと判定している。チームゴウの場合、国本京佑に加えて荒聖治がルーキードライバーと判定されたため、2人はルーキードライバーに義務付けられる10周の義務周回を行わなければならなかった。そのため、ドライコンディションの時タイムアタックを行うことが出来なかったため、ESSEXがチームゴウをリードしている。
 アストンマーティン勢は、大きなトラブルはなくても、スターターの不具合等によって、スムーズにスケジュールを消化出来ないでいるようだ。それでもペスカロロに次いでガソリンエンジンの2→3→4番手を占めた。

Photo:Sports-Car Racing

 午後8時を過ぎると雨脚がよりいっそう激しさを増したため、コースの彼方此方でコースアウトやクラッシュするクルマが相次いだ。このようなコンディションであれば、プジョーはペスカロロが使用しているハイダウンフォースノーズを装着した方が走り易いハズだが、明日晴れることが予想されるため、ローダウンフォースのまま走り続けた。
 アウディとプジョーも彼方此方でバランスを崩してコースアウトを演じていたが、ガソリンエンジンのトップタイムを記録していたペスカロロオリジナルカーのNo.16ペスカロロP1は左リアカウルを壊してピットに入ってきた。
 10時を過ぎる頃になっても、アウディとプジョーは様々なセッティングを全力で行っていたが、チームゴウは荒聖治と国本京佑によって連続走行を行って、1日目のスケジュールを終了した。

6月10日
●プジョーがアウディのウイングノーズに対して正式抗議!

Photo:AUDI Motorsport

 今年登場したアウディR15は、フロントノーズに2つのスリットが設けられ、そこに空気を通すことで、2段ウイングとして活用していた。ところが、ACOのレギュレーションブックでは、ノーズの構造物をウイング形状とする等、空力的効果を得てはならない、と書かれている。そのため、登場した時から、正当性について疑問が持たれていた。
 3週間前、当Sports-Car Racingは、アウディから、このウイングノーズについて、「ACOから了承を得てデザインしている。完成後もACOから合法である」とコメントを得た。そのため、5月20日当Sports-Car Racing.netにおいて、アウディのウイングノーズは合法であることを掲載した。しかし、その時でさえ「誰かが正式に抗議をするのであれば、ACOは、アウディのウイングノーズを認めた理由が明らかにされる」と記した。それくらい不可解な状況だった。

 セブリングで示したパフォーマンスだけでなく、明らかに新しいR15より3年目のプジョー908の方が速かったため、その後アウディは慎重に改良モデルの開発に取り組んでいた。速いプジョーに対して、遅いアウディ、と言う構図明らかだったため、多少曖昧であっても、このままルマンに参加するのだろう、と考えていた。

 ところが、今年のセブリング12時間レースで、速いプジョーは、最後のピットストップのタイミングによって、遅いアウディに負けていたのだ。その屈辱的な事実をプジョーは忘れてなかった。
 昨日車検が終了した後、プジョーは、「アウディのウイングノーズはレギュレーション違反である」ことを表明した。そして、ACOに対して正式に文書で抗議を提出した。

 プジョーの抗議の内容は、これまで彼方此方で言われていた内容そのもので、ノーズ部分をウイングとして活用していることが違反である、としている。ところが、この抗議はアウディに対して出されたものではないのだ。プジョーは、非合法なクルマを車検で合格させたACOに対して、不当であることを抗議している。

 つまり、8日ジャコバン広場で、R15が車検に合格した事実は変わらない。であるから、このまま2009年のルマン24時間レースは行われる、と言うことだ。しかし、ACOに対して出された抗議が認められるようであれば、レースが終了した後、R15は非合法であると判定されて、仮に優勝したとしても、レース結果は取り消される可能性があるのだ。
 ルマンも、F1GPや何処かの国のGTレースと同じような状況になってきたようだ。

6月10日
●チームゴウの復活

Photo:Sports-Car Racing

 2004年ルマンに優勝した郷和道は、その年限りでチームを閉鎖してしまった。その後しばらくの間放心状態だったようだが、2年後一旦はスポーツカーレースの復帰を決心して、3つのメーカーのファクトリーチームが凌ぎを削っていたSuperGTへの挑戦を決心した。唯一3つのメーカーのファクトリーマシンに対抗出来ると考えられたマセラッティMC12を導入すると共に、2年前のチームのメンバー達が次々と呼び戻されて、強力なチームが復活した。
 しかし、テストを開始してみると、マセラッティMC12をもってしても、3つのメーカーのファクトリーマシンに対抗するのが難しいことが明らかとなった。もしかしたら、高速コースの富士スピードウェイであれば、成功出来るチャンスはあったかもしれないが、郷和道は、あっさりと計画をキャンセルしてしまった。

 それから、さらに3年が経過した。
 既に何度かレポートしたように、昨年末郷和道は、急激な為替レートの変動によって、大幅に安く売り出されていたポルシェRSスパイダーを、コレクションとして購入することを決心した。購入を決心した時、郷和道はスポーツカーレースへの復帰、ましては、たった半年後に行われるルマンへの復帰は考えていなかった。
 ところが、話は急に進んで、1ヶ月後締め切り直前にルマンへエントリー申請を行った。そして4月になると富士スピードウェイでシェイクダウンテストを行い、5月にはポールリカールに乗り込んで集中テストも行った。

 今年ルマンのLMPカーは、幅が40cmも狭い1.6m幅のリアウイングを導入する等、空力についてのレギュレーションを変更している。そのため、どのチームであっても、新しい空力パッケージでのテストが必要だった。
 ところが、昨年夏以降の急激ね景気の後退の影響によって、真剣にテストに取り組んでいるチームは少なかった。特にLMP2クラスの場合、ザイテック勢を除くと、チームゴウだけが慎重にテストを繰り返していた。その結果、たった半年前に復活したにも関わらず、一躍チームゴウはLMP2クラスの最有力チームとしてマークされる存在となった。

 5月にチームゴウがポールリカールでテストを行った際、気心の知れたチームゴウの単独テストであることを確認したアウディは、突然テストへの相乗りを求めてきた。チームゴウはプライベートチームであるから、コースを借用する費用を分担してくれるチームの参加は嬉しい出来事であるため、アウディのテストへの参加を承諾した。
 ところが、ポールリカールにやって来たアウディは、コースの借り主がチームゴウであるにも関わらず、勝手にコースにパイロンを立てて、自分達の都合の良いコースレイアウトに変更してしまった。
 アウディがパイロンを立てたのは、2kmに及ぶミストラルストレートだった。つまり、ポールリカールでテストを行うチームのほとんどが求める300km/hを超える高速域でのテストを行うのが不可能となってしまった。
 東京に居た郷和道は、ポールリカールの遠征チームからこの話を聞かされると、怒ってポールリカールの遠征チームに対してコースレイアウトを戻すことをアウディに要求するよう指示した。

 このテストは3日間の予定で行われたが、後半の2日間が雨となったため、コースレイアウトと共に、郷和道にとって、やり残した感が残るテストとなった。2009年レギュレーションによる、新しい空力パッケージを完全にセットアップし切れてない、との判断すべきだった。少々テイルハッピーだったのだ。このことが、大きな心残りとなった。
 3月にLMSの合同テストがポールリカールで行われた際、チームゴウ最大のライバルと目されているESSEXのRSスパイダーが、バランスを崩してクラッシュしている。郷和道は、この事実を忘れていなかった。
 また、このテストの際ミシュランは、2009年バージョンのタイヤを間に合わせることが出来なかった。出来れば、ルマンに行く前に2009年バージョンのタイヤをテストしたかった。当初ルマンの本番までテストを行う予定はなかったが、悔いを残さないよう、急遽2度目のポールリカールテストの実施が決定された。

 ポールリカール自体のスケジュールは非常に混んでいた。しかし、6月2日であれば条件付きで使用可能だった。条件付きとは、その日レーシングスクールが、1コーナー付近のインフェィルド区間を使っているため、コースの東側のみであれば使用出来ると言う意味だった。もちろん、ミストラルストレートも完全には使えないため、せいぜい280km/h止まりで、300km/hを超える高速域でのテストを行うことは出来ない。しかし、ミストラルストレートの終点に存在する高速コーナーが使用出来るため、タイヤのテストには、申し分ないコースレイアウトだった。

 6月2日もてぎのFNから駆けつけた国本京佑を含む3人のドライバーが参加して、2回目のポールリカールテストが12時間の予定で行われた。ミシュランは、2009年バージョンの総てのタイヤをポールリカールに持っては来なかった。しかし、最も使われる可能性が高いタイヤをチームゴウのために用意した。
 タイヤと空力バランスのテストは同時に進められたが、チームゴウは大きなチョイスを持っていた。現在のRSスパイダーは2007年に登場している。その後LMP2クラスはLMP1クラスとの差を明確とするため、レギュレーションが改訂されて、元々750kgだった車重は現在825kgまで重くされている。つまり、75kgの重りを自由な場所に積んで、クルマの重量バランスを変更することが可能だ。何処にチームゴウが75kgの重りを積んだか?彼らはESSEXに知られないよう秘密としているが、慎重に重量バランスをコントロールした結果、素晴らしい操縦性を実現することに成功したようだ。
 ミシュランが持ち込んだ2009年バージョンのタイヤは、非常に素晴らしい出来だった。荒聖治が「これまでテストで使ったタイヤを町のタイヤショップで買った市販タイヤとすると、今度のタイヤは要求に従って作ってくれたスペシャルタイヤのようだ」と表現するように、ミシュランは素晴らしい仕事を行ったようだ。

 今年のルマンは、非常に天気が不安定で、時折雷を伴った激しい雨が降る。今日の夕方から6時間連続で行われるフリープラクティスも、現在のところウェットコンディションは避けられないと考えられている。しかし、チームゴウにとっては、これまで行われたテストの多くがウェットコンディションだったため、都合が良いかもしれない。

5月21日
●AUDI R15のウイングノーズは合法!                  コリン・コレスのR10チームは大改革断行

Photo:AUDI Sport                                                          Photo:Sports-Car Racing

 今年アウディが登場させたR15は、ノーズ中央部分に事実上のウイング部分を2つ備えていた。ACOのレギュレーションは、ノーズ部分に空力的なアイテムを備えることを禁止しているため、R15登場後彼方此方でレギュレーション違反が叫ばれていた。

 R15のウイングノーズついて、アウディは、ACOによって、合法であることを確約されていることを明らかとした。
 まず、アウディは、このノーズの開発がスタートしたのを、昨年初めであると公表した。であるから、昨年9月にリアウイング幅を40cm狭くする、新しいレギュレーションが公表される前から、開発が進められていると宣言した。さらに、開発段階からACOに公表して、合法であることを確認していることも明らかとした。

 この内容から、今後何処かのレーシングチームが抗議をしたとしても、アウディR15が失格となることはないのだろうが、もし、正式にプロテストするレーシングチームが現れるのであれば、合法である理由が明らかとされることとなるだろう。
 しかし、ノーズ部分に設けられた2つのウイング部分は、6月にルマンに登場する際、塞がれている可能性の高い。ウルトラハイスピードのルマンでは、セブリングで求められるようなダウンフォースは必要とされないのだ。つまり、今後経済状況が急激に回復して、アウディが9月に“プチ-ルマン”遠征を決心するようなことがない限り、ノーズ中央に2枚ウイングを備えたR15を見る機会はないかもしれない。

 また、同時にアウディは、これまで散々な成績に低迷しているコリン・コレスのR10チームについて、大幅な改革を要求したことを明らかとしている。
 元々コリン・コレスのR10チームは、シーズンスタート直前まで体制が決まらなかった。最終的にアメリカのチャンピオンから、多数のスタッフを雇う一方、ミシュランタイヤから供給の約束を取り付けて、シーズン開幕に間に合わせた。
 残念ながら、この程度のテコ入れでは焼け石に水だったようで、アウディは大幅な改革を要求していた。アウディが望む改革を受け入れると、ドライバーを総入れ替えする一方、エンジニリング面を大幅に改革しなければならない。たぶん、従来と同じであるのは、2台のR10とチャンピオンから派遣されたメカニックだけとなってしまっただろう。

 どのようなコネによってコリン・コレスがR10を走らせる権利を手に入れたのか?我々は知ることは出来ないが、コリン・コレスのやり方のままでは、これまでアウディスポーツが築き上げたR10の名声が台無しにされてしまう。
 そこでドライバーは取り替えることが出来なくても、ウルフガング・ウルリッヒは、2000年から2007年までルマンの連勝記録を保持しているヨアキム“ジョー”ハウスナーに対して、コリン・コレスのR10チームの面倒を見ることを命じた。既にLMSスパ-フランコルシャンでジョー・ハイスナーは姿を現したが、たった1ヶ月間でどれくらいチームを改革出来るか? ルマンマイスターの手腕に期待がかかる。

5月15日
●チームゴウがポールリカールで集中テストを実施  ライバルはアウディR15!

Photo:Sports-Car Racing

 チームゴウは、4月に富士スピードウェイでポルシェRSスパイダーによる最初のテストを行った。テストは2日間にわたって行われる予定だったが、2日目が雨の予報だったため、富士スピードウェイの好意で、1日目日が暮れた後も、継続してテストを行った。と言っても、充分なマイレッジを達成出来た訳ではなかった。
 そこで、5月13日から2日間の予定で行われる計画だったポールリカールテストを1日追加して13日から15日の3日間行うこととなった。

 チームゴウがポールリカールのコースを3日間借り切ったが、多少なりともコストを削減するため、他のレーシングチームに対しても、一緒にテストを行うよう、チームゴウは案内を出していた。ポールリカールの直ぐ側に拠点を構えるORECAや、チームゴウと同じRSスパイダーを走らせるESSEX等が、一緒にポールリカールを走るものと思われていた。しかし、3日前にスパ-フランコルシャンでLMSが行われるため、ORECAとESSEXは充分な準備を行うことが出来なかった。少々コストがかさんでも、チームゴウが単独で自由にポールリカールを使用出来ると思われたが、直前になって、アウディが一緒にテストを行うことを申し込んできた。どうやらアウディは、気心の知れたチームゴウ以外のレーシングチームが居ないことを確認した上で、テストを申し込んできたらしい。

 チームゴウにとってポールリカールでテストを行う最大の目的は、300km/hを超える高速域での空力バランスの確認と、同じく300km/hの高速からのブレーキングのテストを行えることだった。もちろん、このことは他のチームも同じであると思われた。
 ところがアウディは、既に何度もポールリカールでテストを行っていたため、このような走行性能に関するテストを行う必要はなかった。アウディがポールリカールにやって来た理由は、いつものように30時間の連続走行テストを行うためだった。
 逆に彼らは、R15の高速コースでのポテンシャルが知られるのを嫌った。そのためポールリカール最大の特徴である2kmに及ぶミストラルストレートの中間にシケインを設置することを望んだ。チームゴウにとって、受け入れがたい要求だったが、アウディのごり押しによって、短いストレートでチームゴウはテストを行うこととなった。

  13日にテストが開始された際、最初チームゴウは富士スピードウェイで走った時と同じ、2008年のブリッジ(独立したフロントフェンダーとサイドポンツーンを繫いでいる)を取り付けた、多少ダウンフォースが大きい、つまりドラッグも大きい空力パッケージで走行を始めた。どうして、ルマンでは絶対に使われない空力パッケージで走ったのか?と言うと、富士スピードウェイで走った際、ピッチングを抑えるために設けられている3本目のダンパーの不具合から、細かなセッティングが出来ずにオーバーステアとアンダーステアが交互に顔を出す、不可解な操縦性に苦しめられていたからだった。
 富士スピードウェイでのテストの2日目、雨の中で走行した際、正常な3本目のダンパーに交換されたため、操縦性の不具合は解消されたが、ドライコンディションで走ってなかったため、犯人が3本目のダンパーであることを確認するためだった。

 正常な空力バランスが確認されると直ぐ、ルマンで使われるローダウンフォースパッケージの空力セットに変更された。もちろん、独立したフロントフェンダーとサイドポンツーンを結ぶブリッジは、1枚タイプの2009年ローダウンフォースパッケージのものと交換された。ポルシェの主張通り、RSスパイダーは素晴らしいバランスで走り始めた。
 最初サッシャ・マッセンと荒聖治がセッティングをまとめた後、国本京佑が連続走行を行った。残念ながら、郷和道が懸念したように、ミストラルストレートにシケインが設置されたため、チームゴウのRSスパイダーの最高速度は280km/h止まりだった。この程度の最高速度は、高速コースでなくても、どんなサーキットでも可能だった。そのため、最も望んでいた300km/hを超える高速での空力バランスの確認と、300km/hからのブレーキングのテストは行うことが出来なかった。
 夕方セッティングを確認したアウディが30時間テストを開始した。チームゴウは夜9時で走行を終了したが、走行の最後に国本京佑が連続2スティントを走行出来たため、タイヤが消耗してきた時のバランスを確認することが可能となった。

 2日目になって雨が降り始めた。ミストラルと呼ばれる強風が吹き荒れるポールリカールは、雨が降った場合、ほとんど嵐のようなコンディションとなってしまう。そのため、雨が降り出すと直ぐにヘビーウェットとなる一方、雨が止むと直ぐにドライコンディションとなる。当然コースの彼方此方でコースコンディションが異なる。
 このようなコンディションとなったため、連続走行は難しくなったが、奇しくも、様々なウェットコンディションでのテストが可能となった。その結果、今年のRSスパイダーとミシュランが用意したタイヤを組み合わせる場合、通常インターミディエートが使われるような、多少濡れた程度であればスリック、スリックでは走れないようなコンディションであれば、例えヘビーレインでなくても、インターミディエートよりレインタイヤを履いて走った方が、走り易いことが判明した。

 残るテストメニューは、燃料タンクの最後の1滴まで使い切るテストだが、3日目天気が晴れるようであれば、実施されることとなるだろう。
 2009年ACOは、ピットインでタイヤを交換する際、インパクトレンチを1つしか使用を認めていない。そのため、LMS開幕戦バルセロナでは混乱が相次ぐ一方、アストンマーティンの様に、コース外側の2本だけを交換してピットインでのタイムロを削減しようとするチームまで現れた。先週末スパ-フランコルシャンで行われたLMS第2戦では、ピットインの時間を減らそうとしたチームが、アクシデントによるクルマのダメージを修復しないで走る自体が相次ぎ、ベルギーのオフィシャルも、それを容認したため、レース終了後4台が失格する事態を引き起こした。

 2009年の空力パッケージは、昨年と比べるとダウンフォースが少なく、タイヤの負担が大きい。もちろん従来よりタイヤを交換する機会が増えると考えられている。従来行わなかった短いタイミングでリアタイヤのみを交換するチームも増えるだろう。
 チームゴウは、3日間のテストで、常に神経を使って行ったのが、ピットインの際のタイヤ交換だった。急激にマシンを速く開発することが出来ないが、ピットインの時間を削減するのは、優秀なメカニックの努力によって可能となるからだ。
 どうやら、スパ-フランコルシャンでプジョーが作ったタイヤ交換のタイムレコードをチームゴウのメカニック達は破ることに成功したようだ。

5月12日
●現在のACOの体制は、6月のルマン24時間で終了! 翌15日から新体制が発足

Illustration:ACO

 LMSスパ-フランコルシャンに併せて、ACOは記者会見を行った。その中でレミー・ブラウドは、現在の体制が6月のルマン24時間までであることを明らかとした。
 1年前ACOのCEOに就任したレミー・ブラウドは、2009年のルマン24時間レースが終了する6月14日、現在のACOの体制は終了して、翌15日から、新たに任命される6人の委員による体制によってACOが運営されることを公表した。

 スポーティングマネージャーとしてヴィンセント・ベウムスネイルが、ファイナンスマエネージャーとしてエマニュエル・ロウアルトが、メディアオフィサーとコミュニケーション担当としてパトリック・シャイロウが、マーケティングとコミュニケーションのマネージャーとして、主にTVを担当するファブリス・ブリガード、パトリック・シャイロウはマガリ・セラフィンの補佐を受ける。シニアマネージャーとしてマイケル・バイリエルが就任するだろう。
 現在ACOのスポーティングダイレクターとして、ACOの運営の中心的役割を果たしているダニエル・ポイスノーは、メネージメントコミティーのコンサルタントに就任する。秋に行われるアジアンルマンシリーズは、ダニエル・ポイスノーが担当する。

 ルマンのルールを取り仕切るACOマネージメントコミティは、レミー・ブラウド、ピエール・フィロン、ジャック・レサー、ヴィンセント・ベウムスネイル、ダニエル・ポイスノーの5人によって作られる。マネージメントコミティは、あのベルナール・デュドの支援によって運営される。
 これまでACOの運営にも深く関わっていたダニエル・フェルドリックスは、クルマのテクニカルレギュレーション作りに集中する。

 この顔ぶれから判断すると、ACOは、どうやら、昨年6月に就任した、マネージメントを専門とする専門家達を中心とした運営体制を築こうとしている。しかし、ダニエル・ポイスノーとダニエル・フェルドリックスが残留することを見ても、根本的に新しい体制に移行する訳ではない。たぶん、今後発表されるテクニカル担当の委員の中には、従来通り、ローラのマーティン・ビラン等の名前が残されることだろう。
 逆に、既に引退したと思われていたベルナール・デュドの名前が挙げられる等、従来と違った人脈を探っていることがうかがえる。
 未曾有の不況の中にあって、全力で次代を探ろうとするACOの行動に期待したい。


4月5日
●LMS Rd.1バルセロナ テイルtoノーズの接戦を制したアストンマーティン優勝

Photo:Sports-Car Racing
プロドライブは、第2線スパまでにロードラッグカウルをベースとした空力開発を行う。

 昨日アストンマーティン勢のストレートスピードの速さが証明されたため、ペスカロロは多少ダウンフォースを減らした決勝レースセットを試みた。朝行われたフリープラクティスの結果No.16ペスカロロは、アストンマーティン勢やコレスのアウディ勢に匹敵する294km/hの最高速度を発揮するようになった。
 そして決勝レースがスタートした。ポールポジションからスタートしたストラッカレーシングのNo.23ジネッタ-ザイテックは、エースのダニー・ワッツではなく、ピーター・ハードマンが乗り組んでスタートした。そのため、スタートラインの手前でステファン・モカのNo.007ローラ-アストンマーティンに抜かれてしまった。ピーター・ハードマンが遅れた結果、最も速いと考えられたNo.16ペスカロロは行き場を失って、何とアウディやORECAの後方に沈んでしまう。その結果、No.007ローラ-アストンマーティンがトップ、2位にNo.13Speedy-Sebahローラ/アストンマーティン、3位にNo.009ローラ-アストンマーティンと、トップ3をローラとアストンマーティンを組み合わせクルマが独占した。
 後方に埋もれてしまったジャン・クリストフ・ブリオンのNo.16ペスカロロは、徐々に順位を取り戻して、4周目になるとNo.13ローラ/アストンマーティンとNo.009ローラ-アストンマーティンに追いついて、2位争いを展開する。

Photo:Sports-Car Racing
今年変更されたタイヤ交換のルールの最初の犠牲者だったかもしれない。

 そろそろ1回目のピットストップが始まる40分後、ターン4でのアクシデントのため、最初のセイフティカーが導入された。その機会に次々と最初のピットストップを行った。ところが、アストンマーティンにミスが発生した。ダレン・ターナーの乗り組むNo.009ローラ-アストンマーティンは自分のピットを通り過ぎてしまった。
 セイフティカーランが終了した時トップを走っていたのはNo.16ペスカロロだった。
 レースリーダーとなったジャン・クリストフ・ブリオンの操るNo.16ペスカロロは、素晴らしいペースでライバル達を引き離し始めた。しかし、スタートから2時間が過ぎようとする頃、周回遅れながら、パワーに勝るNo.15コレス-アウディに前を抑えられてしまった。ストレートスピードそのものは変わらなくても、今年であってもディーゼルエンジンは約100馬力有利と考えられるため、ラップタイムが速いペスカロロは、どうしてもコレス-アウディを抜くことが出来ない。ペスカロロがコレス-アウディに前を抑えられている間、後方からNo.11ORECAとNo.007ローラ-アストンマーティンが追いついてきた。

Photo:Sports-Car Racing
スタート直後の1コーナーの風景。アストンマーティン勢が上位を独
占する一方、No.16ペスカロロはアウディとORECAの後方まで後退している。

 アンリ・ペスカロロは、周回遅れにも関わらず道を譲ろうとしないコレスチーム(コリン・コレス自身へ?)に対して、前を開けるよう要求したが、その後もコレス-アウディはレースリーダーのNo.16ペスカロロを抑え続けた。その結果、周回遅れのGTカーをパスする際、レースリーダーのNo.16ペスカロロを周回遅れのNo.11ORECAが抜く事態が発生した。No.16ペスカロロの真後ろには2位のNo.007ローラ-アストンマーティンが追いついたため、大変な状況だった。
 その直後No.15コレス-アウディは、No.11ORECAに撃墜されて姿を消し、No.007ローラ-アストンマーティンは燃料が切れてピットに入ったため、最悪の事態だけは避けることが出来た。もちろん、前が開けたNo.16ペスカロロは、再びライバル達との差を広げて、あっと言う間にNo.007ローラ-アストンマーティンに7秒前後のマージンを築いた。

 2位にNo.007ローラ-アストンマーティン、3位にNo.009ローラ-アストンマーティンが着けた。しかし、182周目No.009ローラ-アストンマーティンは、ミゲール・ラモスがドライブ中スピンして、コースに復帰するのに時間を要したため、ステファン・オルテリとブルーノ・セナが乗り組むNo.10ORECAに抜かれて4位に後退した。
 LMP2クラスは、レーシングボックスの2台のローラ/ジャドとASMのNo.40ジネッタ-ザイテックが闘いを続けている。スタートから3時間を過ぎる頃になって、レーシングボックスのNo,30ローラ/ジャドが抜け出したが、まだ決定的な状況を築くことは出来ない。

Photo:Sports-Car Racing
コリン・コレスのアウディは様々な宿題を抱えることとなった。
ORECAも、第2戦スパまでに新しい空力パッケージを登場させる。
たぶん来週ブガッティサーキットで行われる公式テストでデビューするだろう。

 フィニッシュまで25周の時点で再びセイフティカーが導入された。その結果レースリーダーのNo.16ペスカロロと2位のNo.007ローラ-アストンマーティンの差が3.3秒まで縮まった。No.16ペスカロロはクリストフ・ティンサウがそのままステアリングを握っているが、No.007ローラ-アストンマーティンは、再びエースのステファン・モカを乗り組ませ、ニュータイヤに履き替えて、最後の闘いに望んだ。194周目No.16ペスカロロが周回遅れのGTカーの集団に前を塞がれた隙を見て、ステファン・モカは一気に勝負に出て、No.007ローラ-アストンマーティンがトップに躍り出た。
 今度はテイルtoノーズでNo.16ペスカロロが追走したが、タイヤが辛いようで、少しずつ離された。
 今年レギュレーションが変更されて、タイヤ交換の際1つしかインパクトレンチを使用することが出来ない。そのため最後のピットストップの際、ペスカロロはピット作業の時間を短縮するため、タイヤを交換しなかった。その結果、クリストフ・ティンサウは、ステファン・モカのローラ-アストンマーティンを追うことが出来なかった。
 フィニッシュした時、2台の差が14.884秒まで広がっていた。フィニッシュした後クリストフ・テンサウとジャン・クリストイフ・ブリオンに笑顔はなかった。

Photo:Sports-Car Racing
LMP2は、ASMジネッタ-ザイテックを破ってレーシングボックスのローラ/ジャドが勝った。

 昨年までファクトリーチームしか走らせなかったアウディR10TDIを走らせたコリン・コレスにとって、非常に過酷な実戦デビューとなった。セッティングに手間取っただけでなく、慣れないドライバーを乗り組ませた問題もあるかもしれない。周回遅れでありながら、トップグループの前を塞いで、ORECAに撃墜されるまで、しばらくの間走り続ける等、たくさんの問題を抱えている。昨年までほとんど顔を出さなかった機械的な問題も多い。度重なるアクシデントの影響もあるかもしれないが、フロントとリアの両方のアクスルのトラブルを、LMSでは報告している。
 最初にたくさんの課題が見つかったことは、今後の明るい材料かもしれない。

**決勝レース結果**暫定
1 LMP1 No.007 ローラ-アストンマーティン 209LAPS
2 LMP1 No.16 ペスカロロP01/ジャド +14.884秒
3 LMP1 No.10 ORECAクラージュLC70E 206LAPS
4 LMP1 No.12 Signature ORECAクラージュLC70E/ジャド +1分10秒908
5 LMP1 No.23 ストラッカ ジネッタ-ザイテック09S 205LAPS
6 LMP1 No.17 ペスカロロP01/ジャド 203LAPS
7 LMP2 No.30 レーシングボックスローラB08-80/ジャド 201LAPS
8 LMP2 No.40 ASM ジネッタ-ザイテック09S +46.536秒
9 LMP2 No.29 レーシングボックスローラB08-80/ジャド 195LAPS
10 LMP2 No.26 ラディカル/AER 193LAPS
**以上10位まで**
*注:6時間ルールによって209LAPで打ち切り

4月4日
●LMS Rd.1バルセロナ ペスカロロ不運 ザイテックがポールポジション

Photo:Sports-Car Racing

 LMSの予選は1回のみ、しかも、たった20分間だけ行われる。予選で使ったタイヤで決勝レースをスタートしなければならないこともあって、せいぜい2回か3回しかタイムアタックを行うことは出来ない。
 最初にGTクラスの予選が行われた。真っ先にNo.55ランボルギーニがコースインした。順調にタイムアタックを終了した頃、ライバル達が次々とコースに登場した。ライバルと考えられたラルブルコンペティションのサリーンやルック・アルファンのコルベットはランボルギーニのタイムを上回ることは出来ず、ランボルギーニが嬉しいGT1クラスのポールポジションを獲得した。GT2クラスは、混沌としたタイムアタックが行われた。1分48秒台で闘いは繰り広げられ、最後にNo.92 JMWモータースポーツのフェラーリF430GT2がポールポジションを獲得した。

Photo:Sports-Car Racing

 LMPクラスは、非常に過酷な結果となった。セッション開始と同時にザイテック勢がコースインした。そしてダニー・ワッツがドライブするNo.23ストラッカレーシングのジネッタ-ザイテックが、たった1回のタイムアタックで1分32秒492を叩き出した。続いてコリン・コレスの2台のアウディ、ダレン・ターナーが乗り組んだNo.009ローラ-アストンマーティンがコースインするが、ザイテックのタイムを破ることは出来ない。
 セッション後半になって、いよいよペスカロロが登場した。ところが、2台のペスカロロとSpeedy-Sebahのローラ/アストンマーティン、No.007ローラ-アストンマーティンがコースインした周、赤旗が提示されてセッションが中段されてしまった。5分後セッションは再開されるが、タイヤを暖めるタイミングを失ったペスカロロは、予定を大幅にオーバーする7周を走って3回タイムアタックを行うが、4位で予選を終了することとなった。
 LMP2クラスは、No.40 ASMジネッタ-ザイテックとレーシングボックスのNo.29ローラ/ジャドが激戦を繰り広げた結果、“屋根付き”のローラがLMP2クラスのポールポジションを獲得した。

Photo:Sports-Car Racing

 LMPクラスのチームは、40cm狭い幅1.6mのリアウイングへの対応に苦労しているが、ペスカロロとローラは、昨年のルマン用ノーズをベースとしてカナードウイングを取り付ける方法によって、一応のセッティングをまとめている。プロドライブのローラ-アストンマーティンは、ノーズの左右がえぐられたハイダウンフォースノーズを使っている数少ないチームだ。プロドライブのローラ-アストンマーティンは、アウディを4km/h上回る、最も速い295km/hの最高速度を記録しているが、どうやら充分なダウンフォースを得ることが出来ないようだ。プロドライブも、バルセロナのレース終了後、ルマン用ノーズをベースとした空力開発を行う。

**スターティンググリッド**暫定
1 LMP1 No.23 ストラッカ ジネッタ-ザイテック09S 1分32秒492
2 LMP1 No.009 ローラ-アストンマーティン 1分32秒942
3 LMP1 No.007 ローラ-アストンマーティン 1分33秒532
4 LMP1 No.16 ペスカロロP01/ジャド 1分33秒572
5 LMP1 No.13 Speedy-Sebah ローラB08-60/アストンマーティン 1分33秒724
6 LMP1 No.15 コレス アウディR10TDI 1分34秒266
7 LMP1 No.10 ORECAクラージュLC70E 1分34秒442
8 LMP1 No.11 ORECAクラージュLC70E/AIM 1分34秒566
9 LMP1 No.12 Signature ORECAクラージュLC70E/ジャド 1分35秒044
10 LMP1 No.17 ペスカロロP01/ジャド 1分35秒412
**以上10位まで**

4月4日
●LMSRd.1バルセロナ 圧倒的な速さを見せつけるニューペスカロロ 逆境から抜け出すペスカロロ

Photo:Sports-Car Racing
 圧倒的なトップタイムを記録したニューペスカロロ。後ろのローラ-アストンマーティンは
タイムアップ出来なかった。その後ろに見える赤いノーズのマシンが、ペスカロロに次い
で2位のタイムを記録したSpeedy-Sebahのローラ/アストンマーティン。

 昨日初めて本格的な走り込みを行ったニューペスカロロは、今日になると手が付けられない速さを発揮するようになった。午前中行われた2回目のフリープラクティスでNo.16ペスカロロP01は、昨日のタイムを2秒も更新して、トップタイムを叩き出した。セッション後半になると、予選を想定したシュミレーションを行う余裕も見せた。

 昨日ペスカロロについてのレポートを掲載した後、興味深い事実が明らかとなった。昨年アンリ・ペスカロロは、ジャック・ニコレの出資によってペスカロロオートモビルを設立した。しかし、昨年夏以降の急激な景気の後退によって、ジャック・ニコレは事業としてレースを行うのを諦めた。ペスカロロ自身も景気の後退の影響を受けていたため、両者の関係は急激に悪化した。その結果ジャック・ニコレは、ペスカロロへの出資を引き上げて、独自にOAKレーシングを設立することとなったと言う。
 昨年秋、早々とデザインが終了していたP01の新しいボディがしばらくの間作られなかった理由は、ジャック・ニコレとの決別によって、活動資金の目処が立たなかったことが大きな理由だったようだ。
 元々ペスカロロは、LMP2エンジンとしてソデモと契約していたが、ジャック・ニコレが独自に活動することとなって、自身によってマツダと契約したため、ペスカロロはソデモとの仕事を諦めた。これらの理由の総てが明らかとなった。

 2位には、ポールリカールでトップタイムを記録したSpeedy-Sebahのローラ/アストンマーティンが0.7秒差で着けている。プロドライブのローラ-アストンマーティンは、またしてもローラオリジナルボディに先行されてしまった。
 LMP2クラスは、好調のASMジネッタ-ザイテックを差し置いて、Speedy-Sebahとレーシングボックスの2台の“屋根付き”のローラ/ジャドが1-2を占めた。

**フリープラクティス2**
1 LMP1 No.16 ペスカロロP01/ジャド 1分33秒520
2 LMP1 No.13 Speedy-Sebah ローラB08-60/アストンマーティン 1分34秒158
3 LMP1 No.11 ORECAクラージュLC70E/AIM 1分34秒969
4 LMP1 No.007 ローラ-アストンマーティン 1分35秒045
5 LMP1 No.009 ローラ-アストンマーティン 1分35秒155
6 LMP1 No.23 ストラッカ ジネッタ-ザイテック09S 1分35秒259
7 LMP1 No.14 コレス アウディR10TDI 1分36秒006
8 LMP1 No.10 ORECAクラージュLC70E 1分36秒101
9 LMP1 No.15 コレス アウディR10TDI 1分36秒503
10 LMP1 No.12 Signature ORECAクラージュLC70E/ジャド 1分36秒829
**以上10位まで**

4月4日
●独自路線を堅持するペスカロロ 童夢S102そっくりのニューボディによってトップランカーに復帰

Photo:Sports-Car Racing

 昨年ルマンが終了するとペスカロロは、P01の改良を開始した。当時ペスカロロは、2009年にプジョーのディーゼルターボエンジンを搭載する可能性があった。そのため、最初の計画は、エンジンを特定しないで、ボディの空力開発だった。その後急激な景気の後退によって、ペスカロロシャシーにプジョーエンジンを搭載する計画は消滅して、プジョー908の1台をペスカロロが走らせる方向で話し合いは進んだ。
 それとは別にP01の改良モデルの空力開発は進んでいた。11月までに基本的な風洞実験は終了して、何時でもマシンの製作に取りかかれる状況だった。ところが、急激な景気の後退によって、ペスカロロは新しいボディを作るどころか、2009年の活動そのものが危うい状況に陥っていたようだ。

 昨日オートエクドのジャン・マルク・テセドレ(パリのミニカーショップのオーナーとしても有名な、あのテセドレ)が、直接アンリ・ペスカロロに確認したところ、2009年独自に活動を休止して、ジャック・ニコレのORKレーシングのサポートとプジョー908を走らせることだけに専念する可能性もあったそうだ。しかし、プジョー自身、なかなか2009年の計画を決定しなかったため、結局独自に進めていた新しいボディを作ることになったと言う。

 新しいボディは、誰が見ても明らかなように、童夢S102そっくりのフロントフェンダーとサイドポンツーン、そして両者をつなくフィンが設けられている。ノーズ先端の床下に空気を取り込むハイノーズ部分が、カモノハシのように突きだしていることもS102そっくりだ。現在最も進歩したスポーツカーは、童夢S102とアウディR15と考えられているため、どちらかに似てしまうのは当然なことかもしれないが、ここまで似ているとなると、童夢は米原工場のS102のフロントフェンダーの在庫をチェックした方が良いかもしれない。
 カーボンが酸化して過度の劣化するのを防ぐため、ブレーキローターに被せられるカバーまでそっくりだ。
 1.6mリアウイング時代となってから空力開発が行われたマシンであるため、リアフェンダー後端、リアウイングが無い外側部分が大きく反り返っているのが、最も大きな違いかもしれない。

Photo:Sports-Car Racing
童夢S102そっくりのフロントフェンダーとサイドポンツーンに注意。両者の間に設けられたスリットまでうりふたつだ。ブレーキローター
のカバーは、童夢と言うよりアウディそっくり。

 3月に入って新しいボディは完成したため、先週ブガッティサーキットでチェック走行を行っただけで、シェイクダン同様カラーリングされることなく、そのままバルセロナに運び込まれた。
 しかし、新しいボディの空力性能は素晴らしく、既に何度も走行して開発が進んでいるローラ-アストンマーティンといきなりトップタイム争いを展開した。ボディが違うだけで、機械的な部分は従来のP01と変わらないため、プロドライブのアストンマーティンにとって、最大最強のライバルの登場と言えるかもしれない。

 ペスカロロによると、プジョーとの契約は決まったばかりで、5月までクルマもデリバリーされないと言う。アジアンルマンシリーズへは2台を送り込むことを表明した。昨日ACOが発表した最初のエントリーリストで、ペスカロロのLMP1が2台、プジョーが1台であることを指摘すると、「ペスカロロが走らせるのが2台」とだけ話した。少々意味深な発言だが、ペスカロロ以外のチームがP01を走らせないのであれば、プジョーのワークスチームとして、ペスカロロがプジョーを岡山で走らせることとなるのだろうか?

4月3日
●LMS Rd.1バルセロナ 1日目はアストン→ニューペスカロロ→ザイテック

Photo:Sports-Car Racing

 いよいよヨーロッパでも2009年のスポーツカーレース開幕戦を迎えた。急激な景気の後退の中であっても、LMS開幕戦バルセロナには43台のスポーツカーが集まった。今年ACOは、コストを削減するため、LMSのスケジュールを2日間で行うことを決定しているが、開幕戦バルセロナだけは、元々バルセロナがACOへの支援を表明していて、一時はポールリカールでの合同テストをキャンセルして、バルセロナに合同テストを誘致する話もあったため、金曜日の夕方1時間30分のフリープラクティスが設けられた。
 フリープラクティス開始と同時にローラ-アストンマーティンを先頭に次々とスポーツカーがコースインした。ところが、ORECAの1台は、ピットロード出口でスピンしてコースの反対側に飛び込んでしまった。幸いクラッシュだけは免れたため、無事最初のセッションは開始された。
 真っ先にコースインした2台のローラ-アストンマーティンがタイムボードの上位を占めるが、コースが荒れていることもあって、決して好タイムとは言えない。何度かの赤旗中段の後、No.007ローラ-アストンマーティンと、今日が2度目の走行となる新しいボディを纏ったNo.16ペスカロロがトップタイムを交互に更新し始めた。

 昨年秋ペスカロロはP01の新しいボディの開発を進めていた。ところが、急激な景気の後退によって、デザインは完成しても、マシンを作るのが難しい状況に陥っていた。一時は開発の中止も伝えられたが、何とかシーズン開幕までに、1台分の新しいボディを作ることに成功したようだ。
 まるで“屋根無し”の童夢S102のようなスタイルとなったが、非常に優れた空力性能とバランスを実現しているようで、2度目の走行でありながら、プロドライブのローラ-アストンマーティンと3/100秒差のトップ争いを披露した。

Photo:Sports-Car Racing

 プロドライブのローラ-アストンマーティンとの闘いが注目されたSpeedy-Sabahのローラ/アストンマーティンは、アンドレア・ベリーチが1秒遅れの5位に着けている。
 3位のタイムを記録したのは、ポールリカールでも好調だったストラッカレーシングのザイテックだった。
 LMP2は、ポールリカールでポルシェRSスパイダーを叩きのめしたASMのザイテックだった。ASMザイテックは、総合順位でもLMP1に混じって9位に入り込んだ。どうやら彼らの速さは本物のようだ。

Photo:Sports-Car Racing

 コリン・コレスのアウディR10は、R15用と思われる吊り下げタイプのリアウイングを取り付けて登場した。しかし、テストでのクラッシュが伝えられる等、決して万全の状況とは言えないようだ。どうやらテストで充分に走り込んでいないらしく、タイヤのマッチングにも、課題があるようだ。昨年までのアウディのファクトリーチームによる大活躍を考えると、トップランカーと期待されたが、トップの2台から1.8秒遅れの8位が精一杯だ。
 アストンマーティン勢が姿を消し、今年最後のシーズンとなったGT1はLMSでも少数派となった。ルック・アルファンのコルベットが、ランボルギーニを抑えてトップタイムを記録する一方、ルック・アルファンの対抗馬と期待されたラルブルコンペティションのサリーンは、セッティングに手間取ってピットインを繰り返した。GT2では、フェラーリとポルシェを差し置いて、トム・コロネルが操るスパイカーがトップタイムを記録した。

**フリープラクティス1**
1 LMP1 No.007 ローラ-アストンマーティン 1分35秒014
2 LMP1 No.16 ペスカロロP01/ジャド 1分35秒047
3 LMP1 No.23 ストラッカ ジネッタ-ザイテック09S 1分36秒113
4 LMP1 No.11 ORECAクラージュLC70E/AIM 1分36秒117
5 LMP1 No.13 Speedy-Sebah ローラB08-60/アストンマーティン 1分36秒274
6 LMP1 No.009 ローラ-アストンマーティン 1分36秒549
7 LMP1 No.12 Signature ORECAクラージュLC70E/ジャド 1分36秒707
8 LMP1 No.15 コレス アウディR10TDI 1分36秒896
9 LMP2 No.40 ASM ジネッタ-ザイテック09S 1分37秒241
10 LMP1 No.10 ORECAクラージュLC70E 1分37秒320
**以上10位まで**

4月3日
●岡山で行われるアジアンルマンシリーズの最初のエントリー締め切り、取り敢えず24台確定!

 3月27日、11月に岡山と上海で行われるアジアンルマンシリーズの最初のエントリーが締め切られた。LMS開幕戦が行われているバルセロナにおいて、ACOは、LMSから10台、ALMSから10台、アジアから4台のエントリー申請を受け付けたことを発表した。3月27日に締め切られたエントリーは、輸送代金等の支援を受けるチームのもので、元々LMSからの10台、ALMSからの10台が対象だった。同時にアジア枠として、日本から上海、あるいは中国から岡山への輸送代金を支援する枠として4台が設けられていた。

 どのチームがエントリーしたのか?ACOは個々の名前は公表していないが、メイクについては詳しいリストを公表した。特にプロトタイプクラスについては、それぞれの台数まで明らかとした。LMP1クラスは、プジョーが1台、ペスカロロ/ジャドが2台、ORECAクラージュが2台、LMP2クラスは、ペスカロロ/マツダが2台、ポルシェRSスパイダーが1台がエントリーしている。既にペスカロロがプジョーでアジアンルマンシリーズに参戦することを発表しているため、1台のプジョーはペスカロロなのかもしれない。他のクルマも、どのチームであるのか?明らかだろう。
 GTクラスはメイクを公表しただけで、GT1クラ1スは、コルベット、アストンマーティン、ランボルギーニ、サリーンが、GT2クラスは、ポルシェ、フェラーリ、アストンマーティン、フォードがエントリーしているようだ。

 プジョーのファクトリーチームとアウディの名前が無いのは、秋に行われる東京モーターショーへアウディとプジョーが参加しないことが大きく影響しているようだ。しかし、上海モーターショーへはアウディとプジョーが共に参加するため、今後変化があるかもしれない。第一ACOは、アウディとプジョーのファクトリーチームが参加することを条件として、アジアンルマンシリーズの誘致を行っているのだ。
 日本からのエントリーについては、最低3台が含まれている。どのチームがエントリーしたのか?公表しないが、以外な顔ぶれかもしれない。
 今後一般のエントリーを受け付けるが、ACOが目標としている30台を超える可能性もありそうだ。


3月17日
●プジョーを手に入れたペスカロロ、ペスカロロ・プジョーがアジアンルマンシリーズ岡山へ参加

Photo:Peugeot-Media

 先週ポールリカールでLMS合同テストが行われる直前、プジョーはペスカロロに対して908を提供することを発表した。その数日前ACOが発表した2009年ルマンのエントリーリストにペスカロロ・プジョーの名前が掲載されていたため、ACOの発表を待ってプジョーが発表したことは明らかだった。しかし、ルマンだけの契約であるのか?それともLMSを含む内容であるのか?その時プジョーは明らかとしなかった。
 その直後に行われたポールリカールテストには、常連であるペスカロロ本体の姿はなく、ペスカロロの二軍であるジャック・ニコレのORKレーシングが、フランスマツダと共にやって来ただけだった。

 元々ペスカロロ自身は決して余裕がある状態でスポーツカーレース活動を行っている訳ではない。近年クラージュの崩壊劇に巻き込まれそうになった理由も、そのあたりにあるだろう。ジャック・ニコレと共にペスカロロオートモビルが設立され、一段落したと思われたが、その直後、昨年夏以降の急激な景気の後退に襲われることとなった。
 そのため、予定されていたP01の発展型の開発もほとんど進んでないことが知られていた。
 現在でもP01の発展型は姿を現していない。3年前プジョーがペスカロロによって908をスポーツカーレースに送り込もうとしていたことを覚えているだろうか?この計画はペスカロロの名前が出ない内容だったため、ペスカロロが断った結果、プジョーはセルジュ・セルニエを雇ってセルニエのF3チームをベースとしてスポーツカーチームを組織した。
*注:Sports-Car Racing Vol.18をご覧ください。

 しかし、急激な景気の後退は、英雄ペスカロロを苦しめただけでなく、プジョーも予算の縮小が求められた。プジョーはLMSプロジェクトをキャンセルする一方、未だにルマン以降の計画を決定していない。そこで浮上したのが、3年前に立ち消えとなったペスカロロとの提携だった。
 ここまで読むと、ペスカロロがプジョーに代わって、LMSで908を走らせると思うかもしれない。私もポールリカールへ行くまでは、ペスカロロが、プジョーにとってのヨーストとなるものと思っていた。
 ところが、プジョーは、ルマン後の予算を決定していないため、到底LMS全戦をカバーする約束が出来る状況ではないらしい。それどころか、ACOから、秋に日本と中国への遠征を要求されているため、追加予算も必要だった。そこで、ACOに対して、日本と中国への遠征を約束するため、ペスカロロと契約したようだ。
 現在ペスカロロが明らかとしたプジョーとの契約は、アジアンルマンシリーズの岡山と上海で908を走らせることが中心となっている。その見返りとして、ルマンでもペスカロロは908を走らせるようだ。

 まだアウディはシーズン後半の予定を明らかとしていないが、たぶん、何らかのカタチでアウディも岡山と上海にやってくるだろう。しかし、岡山で見ることが出来るプジョーが、ペスカロロプジョーだけと考えるのは、早すぎるかもしれない。エンデュランスインフォのクロード・フーボルトによると、「もし、アウディのワークスチームが岡山へ行くのであれば、プジョーはペスカロロに加えてプジョースポールも送り込むと考えられる」と言っている。
 今週プジョーとアウディは、共にセブリング12時間に遠征している。もし、シーズン後半の“プチ-ルマン”とラグナセカにプジョーとアウディが参加するなら、そのまま岡山へ行くと考えられている。どうやら、プジョーとアウディがアキュラを圧倒しそうであるため、その可能性は高いように思える。
 今週セブリングで、アウディとプジョーのどちらか一方が、何らかのアナウンスを行うことだろう。
 
3月10日
●ローラB08-60とローラアストンマーティンのどちらが速いのか? 最初の闘いはローラに軍配!

Photo:Sports-Car Racing 取り敢えず、最初の闘いはローラオリジナルが勝った。

 先週ローラのマーティン・ビランは異例の声明を発表した。既に彼方此方で、この声明は公表されているため、細かな説明は行わないが、要約すると「今年ローラからB08-60を買ったプロドライブのデビッド・リチャーズが、ローラB08を大々的に手を加えて、事実上のプロドライブ製マシンに作り替えたと発言しているが、デビッド・リチャーズの発言は正当なものではない」とのことだ。何がマーティン・ビランを怒らせた理由なのだろうか?

 ジュリアン・クーパーのディレクションによってジュリアン・ソールがデザインしたB08-60クーペの多くを流用してローラアストンマーティンは作られている。大々的に作り替えたと主張するにも関わらず、プロドライブは、ローラアストンマーティンの詳細な開発について明らかとしないが、一般的な認識は「たぶん風洞実験は行っただろう」というレベルのもので、ローラB08のスタイリングバージョンの1つと判断されている。

 ローラB05以降の現在のローラスポーツカーは、カナダのマルチマチックが大きく関わっている。と言っても基本デザインは、ジュリアン・ソールによるもので、4年前マルチマチックの面々は、ローラB05をベースとして、大々的に作り替える計画を立てていた。最新のスポーツプロトタイプカーは、ノーズ部分の大きな空気圧を活用するのがポイントであるため、ノーズを作り替える計画だった。しかし、ノーズの内側は耐クラッシュ構造となっているため、ノーズを作り替える場合、当然ながら耐クラッシュ構造も作り替えることとなる。つまり、新たにクラッシュテストを行わなければならない。マルチマチックの場合、クラッシュテストの実施も含めた計画だったが、資金を捻出出来ずに計画を諦めた。
 プロドライブの場合、ノーズの耐クラッシュ構造はそのままで、クラシュテストどころか、B08-60の基本的な骨格やサスペンションパーツを流用しているため、大きな進歩が見込める訳ではない、と言うのが大方の見方だ。

Photo:Sports-Car Racing
 プロドライブワークスのローラアストンマーティンとSPEEDY・SEBAHのローラB08-60には、まったく同じプロドライブ製のアストンマーティンV12 GT1エンジンが搭載される。違うのは、ボディ外側に出たエキゾーストが、ローラアストンマーティンがマシン中央で接近していることだけだ。
 ちなみに、昨年と違って、2009年レギュレーションの場合、GT1エンジンの優遇処置は存在しない。しかし、同時に2009年レギュレーションは、“屋根付き”であれば、どのエンジンを搭載していても、無条件でリストリクター径が0.3mm大きくなる。ACOもワークスだけでなく、プライベートチームへの配慮はぬかりない。

 ではローラのオリジナルボディのB08-60とプロドライブが改造したローラアストンマーティンのどちらが速いのか?誰だって興味を持つだろう。都合が良いことに、今年プロドライブからアストンマーティンV12を買って、ローラB08-60と組み合わせたレーシングチームが存在している。スイスのSPEEDY・SEBAHは、ローラB08-60とアストンマーティンv12を組み合わせる計画を決定した時、プロドライブの計画は紙の上の存在に過ぎなかったそうだ。それどころか、2009年のルマンのエントリーが過密状態だったため、ECO SPEEDが居なくなったことによって、SPEEDY・SEBAHは最後の一枠の権利を手に入れたと言われている幸運なレーシングチームだ。ドライバー陣も、スイススピリットでも活躍したマルセル・ファスラーを除くと、ジエントルマンドライバーを集めてレーシングチームを組織していた。ルマンへのエントリーを真剣に検討するようになって、ニコラス・プロスト等名の知れた二世ドライバー等に声をかけていた。

 つまり、プライベートチームと言っても、決して第一級のレーシングチームではない。
 ところが、ポールリカールテストの結果、プロドライブが大々的に改良を加えたローラアストンマーティンを破って、2009年レギュレーションのマシンのトップタイムを記録してしまった。
 プロドライブは、1日目トーマス・エンゲのクラッシュによってNo.007が引き上げる手違いはあったかもしれない。また、トーマス・エンゲやステファン・モカ、そしてダレン・ターナー等はトップクラスと言えるかもしれないが、プロドライブが契約した他のドライバーは、どう贔屓目に見てもセミプロレベルだ。
 そう、今年のローラアストンマーティンは、昨年までのプロフェッショナルチームではない。
 その結果、残されたNo.009によって積極的に周回を重ねたと言っても、SPEEDY・SEBAHのローラB08/アストンマーティンのタイムを破る状況ではなかったのかもしれない。
 取り敢えず、最初の闘いはローラオリジナルに軍配は上がった。次はいよいよ実戦となる。バルセロナでも、プロドライブが負けるようなことがあれば、再びデビッド・リチャーズが声明を発表することとなるだろう。

3月10日
●ハンコックフェラーリが、ニュー997GT3RSRを抑えてGT2のトップタイム

Photo:Sports-Car Racing

 今回のテストはハンコックにとって、ヨーロッパで本格的なスポーツカーレースへのデビューの場となった。日本のSUPER GTで997GT3RSRを走らせているため、日本人にとってハンコックタイヤは珍しいものではなくなっている。しかも、時として速さを見せることで、ポルシェファンにとっては、タイサンと共に注目の存在となっている。
 SUPER GTへ参入する際、ハンコックがポルシェを選んだ理由は、世界中のスポーツカーレースで最も普遍的な存在だったからだ。SUPER GTでしか見ることが出来ないガライヤやヴィーマックで好成績を修めても、販売には寄与しないと判断したためだった。残念ながら、現在のポルシェGT2レースカーは、普遍的な存在ではあっても、最強のGT2カーとは言えない。最強のGT2レースカーはフェラーリ430GT2であって、ハンコックが次ぎのプロジェクトを実施するのであれば、ポルシェではなくフェラーリを選ぶものと考えられていた。

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 そしてLMSへの参入する際、予想通りハンコックは、フェラーリを走らせるファンバッファーレーシングと契約を結んだ。ファンバッハーは、日本でタイサンポルシェで活躍したドミニク・ファンバッファーの父親が運営するレーシングチームで、2年前までポルシェ997GT3RSRを走らせていた。現在でもALMSでは997GT3RSRを走らせているが、GTレースの事情に精通していて、ハンコックにとっても、打って付けのパートナーとなるだろう。
 2009年のファンバッハーは、日本で活躍したドミニク・シュワガー、そして2004年ヴェロックスアウディR8で活躍したピエール・カッファーとの契約を結んでいる。であるから、もし速くなければ、タイヤのせいにされてしまう状況だったが、ポールリカールテストでは、納車仕立てのIMSAパフォーマンスとフェルベルメイヤー・プロトンの997GT3RSRを終始圧倒してトップタイムを維持じ続けた。
 高速コースのポールリカールで、ファンバッハーフェラーリが最新型ポルシェを圧倒したことは、今年のGT2クラスの状況を判断する大きな材料となったかもしれない。

3月9日
●激戦のP2クラスは、伏兵ザイテックが大本命ポルシェを圧倒!

Photo:Sports-Car Racing

 2日目になって、ポールリカールは、地中海地方名物のミストラルと呼ばれる強風が吹き荒れるようになった。その名もミストラルストレート!と名付けられたバックストレートでは、強い追い風となる一方、ホームストレートでは向かい風となるため、非常に走り辛いコンディションとなっている。

 2009年のP2クラスは、圧倒的にポルシェが強いと考えられていたが、どうやら、ポルシェも油断出来ない状況であることが明らかとなった。既に公表している通り、2009年のジネッタザイテックは、従来の07Sをベースとして、新しくデザインしたボディを組み合わせた09Sを走らせる。一見変わってないように見えるが、ノーズとサイドポンツーンが新しく、ノーズ左右とサイドボディ中央に、地面と垂直の大きなフィンが取り付けられている。

 ポールリカールへは、STRAKKAレーシングが走らせるP1バージョンとポルトガルのASMチームが走らせるP2バージョンがやって来た。昨日4.5リットルエンジンを積むSTRAKKAレーシングのP1ジネッタザイテックは、3番手のタイムを記録している。トップタイムを記録したORECAは、2008年の幅2mのリアウイングを装着しているため、比較の対象とすべきでないため、ローラアストンマーティンに次ぐ事実上の2番手のタイムだった。
 2日目の朝になって、ASMの走らせるP2バージョンは、P1クラスの上位のタイムと遜色ない、1分43秒台という、とんでもないラップタイムを記録した。それまでのP2クラスのトップタイムが、ESSEXポルシェの1分46秒台だったことを見ても、ASMジネッタザイテックが驚異的なタイムを叩き出したことが判るだろう。

Photo:Sports-Car Racing
 複雑なカラーリングによって、分かり難いかもしれないが、ノーズ左
右と共に、イギリス国旗の部分が、ボディ外側に張り出したフィン。
この2つのフィンと共に、ノーズとサイドポンツーンが新しい。

 もちろんASMジネッタザイテックの速さを見たESSEXポルシェは、再びエマニュエル・コラールが乗り込んでタイムアタックを試みた。1秒差の1分44秒台までタイムを上げたが、ポルシェは直ぐにクラッシュしてしまった。ESSEXポルシェはジネッタザイテックを破ることが出来なかっただけでなく、このクラッシュによって、テストを午前中で切り上げて、ポールリカールを去ることとなった。完全なジネッタザイテックの勝利と言えるだろう。

 チームゴウから派遣されたスタッフも、ESSEXポルシェの仕事ぶりを見守っていたが、ポルシェが持ち込んだ、新しい空力パッケージが良い状態であるため、伏兵のジネッタザイテックの速さに脱帽と言う状況かもしれない。
 ジネッタザイテックの速さが証明されたため、2009年P2クラスで興味深い闘いが行われることが明らかとなった。

3月8日
●ポールリカール合同テスト開幕

Photo:Sports-Car Racing
1970年代初頭のポルシェ917そっくりと言うのがパドックの評価

 2009年のスポーツカーレースの状況を占う最後の機会であるポールリカールの合同テストがスタートした。残念ながら、急激な景気後退の影響によって、プジョーとアウディのワークスチームは公式テストへの参加を取り止めた。またルマンでプジョーを走らせるペスカロロも、準備が忙しいようで、一軍であるペスカロロスポーツは参加せず、P2チームのOAKレーシングのみがポールリカールにやってきた。このような事情から、今年のポールリカールの主役はローラ/アストンマーティンとORECAとなった。今年レギュレーションが変わって、40cm狭い幅1.6mのリアウイングを使わなければならない。そのため、新しい空力アイテムのテストを行うチームと、取りあえず去年のまま、幅の広いリアウイングでテストを行うチームが居るため、チームの状況は判っても、本当の速さを判断することは難しい状況となった。
                                                 
 アストンマーティンは、ルマンで3台が、プロドライブが手を加えたボディ付きで参加する。それに加えてSPEEDY・SEBAHも、オリジナルボディにアストンマーティンV12を搭載して参加する。ポールリカールテストには、アストンマーティンレーシングの2台とSPEEDY・SEBAHが参加した。アストンマーティン勢は、総て40cm狭い幅1.6mのリアウイングを取り付けてポールリカールにやって来た。しかしプロドライブが、新しい改良型ボディ付きのローラB08-60をレーシングスピードで走らせるのは、今日が初めてらしい。
 プジョーやアウディが居ないこともあって、2009年スペックのマシンとしてトップタイムをマークした。
 夕方気温が下がってきた時、トーマス・エンゲがクラッシュするアクシデントもあったが、順調に開発は進められている。ポルシェやザイテック等のように、特別な新しい空力パッケージは試みられてないようだが、ローラは、B05以降の(ローラアストンマーティンを含む)総てのローラスポーツカーが装着可能な、ノーズ左右に取り付けるアタッチメントを開発した。どちらかというとルマン専用のローダウンフォーストリムだ。今回のテストでもSPEEDY・SEBAHが取り付けて走行した。このような開発が行われていることを見ると、先日デビッド・リチャーズが行った発言の信用性は薄れてしまう。

Photo:Sports-Car Racing
理由は不明ながら、ORECAは幅2mの去年のリアウイングを使用した。理由が何であれ、ブルーノ・セナを乗り組ませる等、ポールリカールを拠点とするヒュー・ド・ショーナックは話題作りに余念がない。


 ORECAは、AIMエンジンを使うワークスチームの2台とシグナチュレのジャドV10付き1台、計3台がやって来た。ORECAの元々の拠点はポールリカールであるため、たくさんのゲストを引き連れてのテストとなった。既にORECAは、幅1.6mのナローウイング付きでテストを行っているが、ゲストの視線を意識したのか? 去年の幅2mのビックウイング付きで走行している。そのため今朝、アストンマーティンを出し抜いてトップタイムを記録している。
 ORECAは、今回のテストドライバーの1人として、ブルーノ・セナが乗り組んでいる。慣れないようで、決してトップタイムを記録するような状況ではないが、明るい話題であるのは間違いない。モデナフェラーリにマンセルの息子が乗り込み、ナイジェル・マンセルもやって来ているため、スポーツ新聞の見出しの多くはマンセルとセナとなるだろう。

 ポルシェは、チームゴウの面々が岡山に出張しているため、ESSEXが唯一ポールリカールにやってきた。ローラ/アストンマーティンのような派手さはないが、ポルシェは、早くも1.6mリアウイングに合わせた新しい空力パッケージのテストを行っている。フロントフェンダーとサイドポンツーンを繫ぐフィンが一枚の大きなものとなる他、フロントノーズも新しい。エマニュエル・コラールが乗り組んで慎重にテストを行っている。従来のフロントノーズも用意されているが、非常に良い状況であるようで、新しい空力パッケージのままテストは行われている。

Photo:Sports-Car Racing
 最も開発が進んでいるのは、新しい空力パッケージを施したボディを持ち込んだポルシェだった。違いが判らない方は、Sports-Car Racing Vol.18を参照してください。

 今日のテストは夜中12時まで行われる。そのため、セッティングがまとまってきたチームは、夕方になって次々とベストタイムを更新している。今回P1とP2がそれぞれ1台づつ、2台が参加したジネッタザイテックは、STRAKKAレーシングのP1カーが3位のタイムを記録した。2009年の幅が40cm狭い1.6mリアウイングカーとしては、アストンマーティンに次いで2番手だ。非常にコンディションが良いため、明日朝、もしかしたら、40cm狭いナローウイングであっても、とんでもないラップタイムが記録されることになるかもしれない。

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2月27日
●ACOが2009年のルマンのエントリーリスト発表       ECO Speedは行方不明!!

Photo:Sports-Car Racing

 2月26日ACOは2009年のルマン24時間レースのエントリーリストを発表した。昨年夏以降の急激な景気の後退によって、LMSやALMSへのシリーズ参戦を取り止めたアウディとプジョーが大量エントリーする一方、安価に販売されたローラは2桁に上るエントリー申請が行われて、P1とP2にそれぞれ4台ずつがエントリーを認められた。動向が注目されていたペスカロロは、噂通りプジョー908を1台走らせる。
 P2クラスのポルシェRSスパイダーも、実車の数より多い2桁に上るエントリー申請が行われたようだが、NAVIチームゴウ、ESSEXと共に、FIAGTのチャンピオンであるヴィータフォンの3台がエントリーを認められた。
 今年限りで消滅するGT1クラスは、エントリーの減少が心配されていたが、ワークスコルベットを中心として3つのメイクがエントリーを認められた。エントリー申請が遅れたことが知られているラルブルコンペティションのORECAサリーンはリザーブリストに加えられた。
 ポルシェは大幅に手を加えた2009年バージョンの997GT3RSRを登場させて巻き返しを図ったが、過去2年間に築かれたフェラーリ信仰は根強く、9台のフェラーリにたった3台で挑戦する。

 最も大きな驚きは、急遽今週月曜日になって、童夢S102による2009年の活動を発表したECO Speedの名前が見あたらないことだろう。童夢によると、現在ECO Speedの責任者であるフランク・フォン・ネウエンとは連絡が取れない状況であると言う。ECO Speedは童夢だけでなくエンジンディベロップメント(ジャド)やミシュラン等にも供給契約を求める一方、童夢やジャドやミシュランが知らない、何人かのドライバーとも契約書を交わしていたようだ。
 これらの総ての会社や個人が、水曜日頃からECO Speedと連絡が取れない状況であるようだ。

 元々大企業のスポンサーの支援を得ていると説明して、ECO Speedは契約を急がせた。しかし、月曜日にECO Speedが公表したS102のイラストは、そのスポンサーカラーではなかった。そのため非常に怪しい会社であると思われていた。
 童夢が決心した大きな理由の1つとなったスティーブ・ニコルズも、名前を使われただけだったかもしれない。
 先週末ECO Speedは、童夢に対して、イタリアの銀行からの送金を証明する文書を送付した。しかし、週が開けても金は振り込まれなかった。昨日ACOがエントリーリストを発表する直前、ECO Speedがルマンにエントリー申請すら行ってなかったことが明らかとなった。現在童夢は、ACOと共にECO Speedについて調査しているが、ECO Speedの行方は判らない
 近々林みのる自身によるコメントが発表されることとなるだろうが、長い間スポーツカーレースを支え続けている童夢に大きな影響がないことを願いたい。

LM P1
1  :Audi Sport Team Joest               Audi R15 TDI
2  :Audi Sport Team Joest               Audi R15 TDI
3  :Audi Sport Team North America  Audi R15 TDI
4  :Creation Autosportif                 Creation CA07 Judd
6  :Team LNT                               GinettaZytek 09S
7  :Team Peugeot Total                  Peugeot 908 HDI FAP
8  :Team Peugeot Total                  Peugeot 908 HDI FAP
9  :Peugeot Sport Total                  Peugeot 908 HDI FAP
10 :Team Oreca MatmutAIM           CourageOreca LC70 AIM
11 :Team Oreca MatmutAIM           CourageOreca LC70 AIM
12 :Signature Plus                         CourageOreca LC70 Judd
13 :Speedy Racing Team Sebah       Lola B08/60 Aston Martin
14 :Kolles                                   Audi R10 TDI
15 :Kolles                                   Audi R10 TDI
16 :Pescarolo Sport                      Pescarolo Judd
17 :Pescarolo Sport                      Peugeot 908 HDI FAP
20 :Epsilon-Euskadi                     Epsilon Euskadi EE2 Judd
23 :Strakka Racing                       GinettaZytek 09S
007:Aston Martin Racing              Lola Aston Martin
008:AMR Eastern Europe             Lola Aston Martin
009:Aston Martin Racing              Lola Aston Martin

LM P2
5  :NAVI Team Goh                     Porsche RS Spyder
24 :OAK Racing                          Pescarolo Mazda
25 :RML                                    Lola B08/80 Mazda
26 :Bruichladdich-Bruneau            Radical SR9 AER
30 :Racing Box                           Lola B08/80 Judd
31 :Team Essex                          Porsche RS Spyder
33 :Speedy Racing Team Sebah      Lola B08/80 Judd
35 :OAK Racing                          Pescarolo Mazda
40 :Quifel-ASM Team                  GinettaZytek 09S
41 :G.A.C. Racing Team              Zytek 07S Zytek
44 :KSM                                   Lola B09/86 Mazda
49 :Vitaphone Racing Team          Porsche RS Spyder

LM GT1
55 :IPB Spartak Racing               Lamborghini Murcielago R-GT
60 :Gigawave Motorsport           Aston Martin DBR9
63 :Corvette Racing                  Chevrolet Corvette C6.R
64 :Corvette Racing                  Chevrolet Corvette C6.R
66 :Jetalliance Racing                Aston Martin DBR9
68 :JLOC Isao Noritake             Lamborghini Murcielago R-GT
72 :Luc Alphand Aventures        Chevrolet Corvette C6.R
73 :Luc Alphand Aventures        Chevrolet Corvette C6.R

LM GT2
76 :IMSA Performance Matmut    Porsche 997 GT3 RSR
77 :Team Felbermayr-Proton      Porsche 997 GT3 RSR
78 :AF Corse                           Ferrari F430 GT2
80 :Flying Lizard Motorsport      Porsche 997 GT3 RSR
82 :Risi Competizione               Ferrari F430 GT2
83 :Risi Competizione               Ferrari F430 GT2
84 :Team Modena                     Ferrari F430 GT2
85 :Snoras Spyker Squadron       Spyker C8 Laviolette GT2R
87 :Drayson Racing                  Aston Martin Vantage V8
89 :Hankook-Farnbacher Racing Ferrari F430 GT2
92 :JMW Motorsport                Ferrari F430 GT2
96 :Virgo Motorsport               Ferrari F430 GT2
97 :BMS Scuderia Italia             Ferrari F430 GT2
99 :JMB Racing                        Ferrari F430 GT2

RESERVE
R1 :Team SeattleAdvanced       Ferrari F430 GT2 
                         Engineering 
R2 :Endurance China Team       Porsche 997 GT3 RSR
R3 :IMSA Performance Matmut  Porsche 997 GT3 RSR
R4 :Barazi Epsilon                   Zytek 07S
R5 :Gerard Welter                  WR Zytek
R6 :Epsilon-Euskadi               Epsilon Euskadi EE2 Judd
R7 :Team Felbermayr-Proton   Porsche 997 GT3 RSR
R8 :Snoras Spyker Squadron     Spyker C8 Laviolette GT2R
R9 :Larbre Competition           Saleen S7R
R10:Racing Box                     Lola B08/80 Judd

2月27日
●日本で行われるアジアンルマンシリーズは富士から岡山へ変更  4月30日にエントリーリスト発表

Illustration:ACO

 今年の秋ACOはアジアで2つのルマンシリーズを開催する。日本と中国の2カ所での開催が計画され、当初11月1日に富士スピードウェイで行われる予定だった。誤解がないように述べると、富士スピードウェイで行われる際、富士スピードウェイは場所を貸すだけで、ACOが開催必要な費用を提供することが条件だった。ところが、その後急激な景気後退によって、ACOにとっても、資金を捻出するのが容易でない状況だったらしい。

 そのような時、同じ11月1日、同じ日本の岡山でWTCCを開催することが決まった。元々WTCCは、他にカレンダーを組んでいたため、わざわざ11月1日にカレンダーを変更した理由は「FIAにルマンシリーズを潰す意図があるのではないか?」とさえ噂されていた。WTCCサイドにも、このような質問が相次いだようで、程なくしてWTCCは「元々のカレンダーであると、輸送が難しい」とコメントを発表した。たぶんWTCCに追加のイベントが加わるか、新たなアkレンダー変更が行われる可能性があるのだろう。

 しかしWTCCとACOの双方が困った状況であるのは変わらない。何らかの解決方法が求められていたが、ACOは、富士スピードウェイで行われる予定だったアジアンルマンシリーズを、同じ11月1日岡山で開催することを決定した。
 昨日ACOは岡山での開催を発表した。WTCCとのダブルヘッダーとなるが、詳しい概要は明らかとしなかった。

 また、岡山と上海で行われるアジアンルマンシリーズは、土曜日と日曜日に、それぞれ3時間レースを2回行うこととなるようだ。ACOは3×4=12時間レースと表している。
 今年のアジアンルマンシリーズの優勝者は、2010年のルマン24時間レースに正体されることも発表された。
 2月27日からエントリー受付を開始して、ALMSから10台、LMSから10台、日本と中国から4台が選出される。最終的なエントリーリストは4月30日に発表される。

2月26日
●ルマンに復帰するチームゴウ  2009年のRSスパイダーの実力は!

Illustration:NAVI TEAM GOH

 2007年7月ポルシェのヘルムート・クリステンは、2008年にヨーロッパをテリトリーとするレーシングチームに対してもRSスパイダーを販売することを公表した。そしてクリステンは、2008年にRSスパイダーを走らせるオランダのVan Merksteijnを支援していることを明らかとした。その頃スポーツカーレースの世界でVan Merksteijnは無名の存在だったが、ヨス・フェルスタッペンと契約する等、有能なレーシングチームであることは明らかだった。そして2008年、Van MerksteijnはルマンのP2クラスで優勝する一方、LMSのP2クラスのチャンピオンに輝いた。ところがVan Merksteijnは、2008年限りでスポーツカーレースから撤退してしまった。もちろん急激な景気の後退も理由の1つだっただろう。しかし本当の理由は、Van Merksteijnがスポーツカーレースを本業とするのではなく、彼らの本来のテリトリーが「パリ-ダカ」であるためだった。2009年南アメリカで行われた「パリ-ダカ」には、VWのワークスチームとしてVan Merksteijnは参加していた。この状況を考えると、スポーツカーレースとの二足のわらじは不可能だったのだろう。
 そしてVan MerksteijnのRSスパイダーは売りに出された。秋以降急激にユーロが下落したため、非常に良い買い物と考えられていた。しかし、2007年までと違って、現在のP2クラスはP1を破って総合優勝するのは不可能だった。にも関わらず、P1と大きく変わらない予算が必要とされた。ライバル達と比べると特にRSスパイダーは高かったかもしれない。そのため、Van MerksteijnのRSスパイダーはなかなか売れなかった。

 現在ユーロ安の影響が最も大きいのは日本だ。2004年にルマンで優勝した郷和道は、2008年末になって、Van MerksteijnのRSスパイダーが売りに出されていることを知った。そして価格を知ると、取りあえず手に入れることを決心した。なぜなら、2004年に成功した郷和道は、12月に翌年のプロジェクトをスタートしても、6月までに充分な体制を築くことが出来ないことを知っていたからだった。それどころか、チームを作るには2年が必要であると判断していた。
 しかし逆の見方をすると、チームを作り上げるのに2年が必要だとすると、最初の年は、取りあえずスタートラインに着くのが精一杯となる。郷和道は、ちょうど2002年のチームゴウがそうだったことを思い出した。
 しかし、あまりにも時間がなかった。親しいNAVIの加藤哲也にこのことを打ち明けると、加藤はNAVIが中心となってルマンに挑戦するプランを提案した。郷は加藤のプランを気に入って、取りあえず2009年のプロジェクトのディレクションをNAVIに任せることを決心した。こうして「NAVI TEAM GOH」が誕生した。
 チーム代表は郷が務めるものの、チーム監督にはNAVIの加藤が就任して、2004年までであれば郷が行っていただろう、ポルシェやミシュランとの交渉、うるさいメディアとの対応もNAVIに任せた。

 2009年ACOはプロトタイプカーのレギュレーションの一部を変更している。特に幅が40cmも狭いリアウイングを義務つけたことで、空力エンジニア達は、空力開発を0からやり直すこととなった。
 元々リアウイングの両端はリアタイヤの陰に隠れるため、多少リアウイングの幅を狭くされたとしても、極端に大きな影響を受けないと言われている。特に幅16インチの大きなタイヤを履くP1の場合、2009年も致命的な影響は受けないと考えられている。しかし、P1より2インチ狭い幅14インチのリアタイヤを履くP2にとっては致命的となる。
 現在ポルシェは、2009年の幅1.6mのリアウイングを装着した際の空力パッケージをまとめるため、全力で風洞実験を行っている。3月8日と9日にポールリカールで行われるLMSの公式テストの際、ポルシェは新しい空力パッケージを持ち込むと思われている。しかし、特にルマンで使われるようなローダウンフォースパッケージの方が影響が大きいと考えられるため、たぶん5月頃まで、最終的な2009年バージョンのボディが登場することはないだろう。
 昨年の“プチ-ルマン”の際、ペンスキーのRSスパイダーはホイールカバーを取り付けて登場した。もしかしたら、このような大胆なアイテムが盛り込まれることとなるかもしれない。

 P2クラスをターゲットとするNAVI TEAM GOHのポルシェRSスパイダーにとって、最大のライバルはザイテック09Sとローラの“屋根付き”のB08-80シリーズだ。エンジンとシャシーを一緒に開発しているザイテック勢はもちろん、2009年にリストリクターが拡大された“屋根付き”のローラB08-80シリーズは大きな脅威だろう。しかし、総てがプライベートチームであるため、P1クラスと違って、総合力の勝負となる。特に優秀なドライバーは、チームにとって大きな戦力となる。NAVI TEAM GOHは、2004年のルマン制覇の時もドライブした荒聖治、ポルシェのワークスドライバーであるサッシャ・マッセン、そして将来を見込んで、昨年マカオF3GPで優勝した若手の国本京佑と契約を交わした。
 童夢がそうであるように、彼らも準備が整わないため、3月8日と9日にポールリカールで行われるLMSの公式テストには参加しない。しかし、既にヴァイザッハでのテストを行っている。今年ACOは、急激な景気の後退を考慮して、従来ルマンの決勝レースの2週間前に行ってきた公式テストディを中止した。そのため、新規参入チームは、3月8日と9日のLMS公式テストに参加出来ないのであれば、自分たちでルマンを想定したテストを行わなければならない。NAVI TEAM GOHの場合3月末以降オートポリスで集中テストを行った後、ポールリカールでテストを行う予定を立てている。
 もしかしたら、ルマン前にテストを兼ねて実戦に登場するかもしれない。

2月24日
●2009年の童夢はスイスのECO Speedから登場   チーフエンジニアはスティーブ・ニコルズ!

Photo:Sports-Car Racing

 昨年夏以降の急激な景気の後退によって、林みのるは満足な体制を築くことが不可能であるとして、早々と2009年に童夢ワークスによるルマンプロジェクトを休止することを決心していた。しかし、童夢が2009年のトップレベルのスポーツカーレースへの参加を諦めた訳ではなかった。その頃童夢へは、世界中のレーシングチームからS102の購入とリースを申し込む連絡が舞い込んでいたため、林みのるは、それらの中から、優秀なチームを選ぶのを目論んでいた。
 ところが秋になって、深刻な事態が発生する。急激な景気の後退だけでなく、ユーロとポンドが急激に下落して、ユーロは円に対して30%、ポンドは50%も値下がりしてしまった。つまり、ヨーロッパのチームが童夢からS102を買う場合半年前から30%の値上げとなるし、イギリスのチームに至っては2倍の価格となってしまった。
 急激な為替の変動によって、逆に大幅な値下げが可能となったローラが大バーゲンセールを開催した結果、童夢とコンタクトを行っていた有力チームの幾つかも、童夢を諦めてローラのバーゲンセールに並んだ。

 このような状況であっても、童夢には幾つかのレーシングチームがコンタクトを続けていた。しかし、あまりにも急激な変化が続いて、時間を費やしたため、冬を迎えようとする時期の林みのるは、外部のチームにS102を販売したり、あるいは貸し出すとしても、大々的な活動を諦めて、純粋な遊びとしての活動を望んでいた。実際林みのるはモナコのミリオネラから持ち込まれたプランを気に入って、一時期モナコチームがS102をルマンで走らせると考えられていた。

 ところが、熱心に童夢との話し合いを続けていたスイス人達が存在した。最初スイス人達も、童夢の実力を探っているようなところがあったため、疑い深い林みのるの値踏みの対象となっていたのかもしれない。ところが年が明けた後、既に充分な準備を行うのが不可能な時期となっても、スイス人達は熱心に童夢を説得していた。
 2009年空力のレギュレーションが変わるため、1月になって準備を開始しても、6月のルマンで優秀なパフォーマンスを発揮するのは難しい。そのため童夢の興味を惹かなかった。ところがスイス人達は「2009年だけの計画ではなく2010年以降も継続した計画であって、2009年はむしろ準備の年」と説明した。
 さらに童夢とコンタクトしていたスイス人達が組織するRacePublicityは、直接レーシングチームを運営するのではなく、彼らが必要な資金を提供して、それを傘下のレーシングチームが走らせる計画で、ヨーロッパを中心として、大々的に活動するある大企業がスポンサーであることを公表した。さらに彼らのチーフエンジニアとして、マクラーレンF1で活躍したスチーブ・ニコルズが就任したことも明らかとした。
 充分な資金的なバックアップ、そしてアイルトン・セナが活躍した時代の伝説的エンジニアのスティーブ・ニコルズの登場によって、やっと童夢はスイスにS102を送ることを決心した。

 Race Publicity傘下のレーシングチームとは、Race Publicityの代表を務めるフランク・ファン・ニュウエン自身が率いるECO Speedだ。日本では昨年ルマンの際野田秀樹のマネージャーを務めた人物として名前を覚えている方も居るだろう。
 童夢は2009年スペックのS102の提供と技術サポートを行う。エンジンは最優秀ガソリンLMPエンジンと目されるジャドGV5.5S2、タイヤはミシュランだ。ドライバーはRace Publicityが育成中の若手の2人のイタリア人を起用する他、誰もが知っている大物ドライバーの加入が囁かれている。契約が済み次第ドライバーラインナップも発表されることだろう。残念ながら、3月8-9日にポールリカールで行われるLMSの合同テストは、準備が整わないため参加を見送らなければならない。4月5日にバルセロナで行われるLMS開幕戦がデビューとなるだろう。LMS全戦と共に、ルマン24時間、終盤のALMS、そして富士と上海で行われるアジアンルマンシリーズに参加する。
 どうやら、2009年のスポーツカーレースの最後のパズルが埋まったようだ。

2月16日
●ニッサンがGTRをFIA-GT1クラスへ公認申請

Photo:Sports-Car Racing

 現在のFIAGTは、“現行”のGT1クラスとGT2クラスによって行われている。しかし、“現行”のGT1クラスは、1998年までGT2と呼ばれていたカテゴリーであって、同様にGT2クラスは元々GT3と呼ばれて、FIAGTでは走ることが出来なかった。GT2クラスのためポルシェが作ったマシンが997GT3RSRと名乗る理由はここにある。
 しかも、以前メーカーしかた公認申請を行うことが出来なかったため、GTレースに相応しいクルマが存在しても、レースに出場することが出来ない場合が存在した。そこでFIAやACOは、GTレースカーとして出来上がった状態での公認申請を認めることとなった。この代表はプロドライブによる(フェラーリ)CARE550GTSだった。GTレースカーとして出来上がった状態とは、言うなればエボリューションモデルであって、その後FIAは25台(小メーカーの場合12台)の生産義務を明記した。残念ながら、この25台ルールは一人歩きして、25台生産してしまえば、どんなクルマでもFIAGTに参加出来ると思われるようになって、フェラーリは2mを超える横幅のマセラッティMC12を作ってしまった。FIAはマセラッティMC12の公認申請を条件付きで認めたが、ACOは却下した。

 これらのエボリューションモデルの解釈の問題と共に、もう1つの問題は禁止されている4輪駆動についてだ。最近の高性能車の多くは4輪駆動であるため、GTレースに熱心なアウディ、ランボルギーニ、ポルシェは、これまで再三4輪駆動の参加を認めるよう話し合いを行っている。しかし、FIAもACOも4輪駆動を認める考えは皆無であるため、ポルシェは2輪駆動の997GT3RSRを作って、ランボルギーニはガイヤルドを、つい最近アウディはR8をわざわざ2輪駆動で作り直してGTレースに送り込んでいる。そのため、今後もFIAとACOは4輪駆動を認める考えはない。

 2年前ステファン・ラテルは、2010年にGTレースのカテゴリーを整理することを明らかとした。最初“現行”のGT1とGT2を排除して、従来アマチュアのカテゴリーだったGT3とGT4のレースとすることを公表したが、反対意見が多数寄せられたため、“現行”のGT1を排除して、“現行”のGT2をベースとしたカテゴリーを新制GT1とする一方、“現行”のGT3を新制GT2とすることを決定した。新しいGT1クラスは、生産台数が300台となることも決定した。
 しかし、4輪駆動は認められなかった。そのためアウディは、4輪駆動のR8を2輪駆動に作り替えて、新レギュレーション施行の1年前にR8GT3として、300台を目指して、販売を開始した。
 これがFIAとACOの統一した考えであって、世界のGTレースの常識だった。

 ところが昨年秋になって、ニッサンがFIAに対して4輪駆動のGTRでの参加を求めてきた。もちろんアウディやポルシェは呆れて反論したため、FIAの会議はもう少しで荒れそうになった。その直後アウディやポルシェは、「既に4輪駆動は禁止されている」ことを確認するコメントを公表している。であるから、もしニッサンが正式にGTRをFIAに公認申請するとしても、2輪駆動に作り直すと考えられていた。

 2009年になって、ニッサンはJAFを通じてGTRのFIAGT1クラスへの公認申請を行った。去年の騒動を考えると、2輪駆動に作り直したクルマであると思われていたが、現在売られているGTRと同じ4輪駆動であるようだ。FIAが公認申請を認めたとしても、4輪駆動のままではFIAGTに参加することは出来ない。また、“現行”のGT1クラスは今年限りであるため、2010年以降も走るのであれば、2輪駆動に作り直すだけでなく、300台の生産義務が発生する。

 しかし、まったくGTRに走るチャンスが無い訳ではないようだ。現在のFIAGTでは、ファクトリーチームの参加を認めていない。もし、ファクトリーチームが参加を希望する場合、特例処置として、ポイント対象外での参加を認めている。また、ホモロゲイション問題で参加を拒否されそうだったマセラッティMC12に対して、(FIAと言うより)FIAGTのオーガナイザーであるステファン・ラテルは独断で、ポイント対象外で数レースに参加して、ポテンシャルを調整することによって、翌年正式に参加を認めている。

 現在最も高い可能性は、マセラッティMC12がそうだったように、2009年に特例処置として、300台の生産が終了してなくても、開発段階の2輪駆動のGTRが、ポイント対象外でFIAGTへ参加することと考えられている。
 1月にセパンでテストを行っていたGTRが、たぶん特例処置でFIAGTに参加を求める予定のマシンなのだろう。

2月14日
●急遽アウディはR15の写真を公表

Photo:AUDI AG
アウディの広報写真は、ヨーロッパでも北アメリカであっても、非常に高いクオリティを誇っている。スクープ写真を買い上げたのであるから、しかたがないのかもしれないが、この写真はアデディらしからぬ、ただ写っているだけの低レベル。取材するカメラマンもプロえあれば、このような低レベルな写真を公表すべきではない!

 プジョーが2009年前半の活動内容を発表した際、アウディは、数日以内にR15の姿が暴露されることを予言していた。それまでアウディは、社外でR15のテストを行ったことはなかった。しかし、その時期、アウディは、社外で始めてイタリアのバレルンガでテストを行うこととなっていた。プジョーが発表した頃、既にバレルンガでのテストを嗅ぎつけたイタリアのSportAuto誌から問い合わせを受けていたらしい。
 SportAuto誌は、提携していたイギリスのAUTOSPORT誌に連絡して、バレルンガでR15が走り始めると、早速スクープ写真を掲載することをアウディに連絡した。掲載の連絡を受けたアウディは、驚いて、取りあえず、社内で話し合うため1日だけ掲載を延ばすよう要求した。
 たぶん、SportAuto誌の取材にも、何らかの問題があったのだろう。そのため、SportAuto誌やAUTOSPORT誌は、最初低解像度の写真を公開することを決定した。どんなに隠したとしても、1ヶ月後にはセブリングで走るクルマであるため、1日後アウディは走行写真の公開を了承した。
 同時にAUDIは、AUTOSPORT誌から提供されたR15の写真を広報写真として、全世界に配信した。

 パノスモータースポーツの解体によって、職を失ったマイク・フラーはよほど暇らしく、ミュルサンヌコーナーのWEBやRaceCarEngineerring誌のWEBによって、既にR15の空力解析を行っている。しかし、本質を解明することは出来ないようだ。2007年に開発がスタートしたR15は、260kgに達する巨大な90度V12によってテイルヘビーとなってしまったR10の弱点を解消することを最大のテーマとして開発されている。R15の開発のため、アウディスポーツは2008年にR10と縦置き6速ギアボックスを組み合わせたテストを再三行っている。そのため、3月のポールリカールテストまで2008年のR10は縦置きの6速ギアボックス付きで登場すると考えられていた。同時に根本的にリア周りの軽量化をテーマとして、V10エンジンの開発に取り組んでいた。ディーゼルターボエンジンは1気筒あたり発生可能な出力が限られるため、シリンダー数を減らすことは、大きなデメリットと考えられていた。つまり、何らかな新たな開発が行われている。
 しかし、2008年9月ACOは、2009年のLMPカーに40cm幅が狭い幅1.6mのリアウイングの使用を義務つけることを発表した。その段階でR15の開発は進んでいたため、急遽アデウィスポーツは、R10に1.6mリアウイングを取り付けた走行テストを行った。その直後に行われたFIAのワーキンググループの席で、アウディは「1.6mリアウイングはダウンフォースが少ないため危険だ」と発言している。もちろん、他の出席者の「危険であれば、ゆっくり走れば良い」との発言によって、相手にされなかった。アウディスポーツが開発に苦労していた証明かもしれない。

 マイク・フラーが解析しているように、クルマの中で最も空気圧が大きいフロント部分を最大限に活用することを最大のテーマとしてデザインされている。大きく開けられたノーズ部分から、大きな空気圧がサイドポンツーンとリアウイングに導かれる。フロントボディー上部が高い位置に設けられているように見えるのはこのためだ。
 残念ながら、既にACOは、このようなスポーツカーらしくないデザインに対して、2011年以降認めないことを通告している。童夢がスポーツカーノーズでS102をデザインした理由もここにある。
 また、2週間前アキュラが発表した際、リアと同じ大きなサイズのタイヤをフロントにも履くことが、大きな疑問となった。アキュラの発表の際、ニック・ワースとミシュランの担当者は、アウディも同じタイヤを履くと話していた。しかし、バレルンガで走ったR15の写真を見る限り、フロントタイヤの方が小さく見える。大きなフロントタイヤの能力を活かし切れないでいるアキュラの状況を考えると、アウディが設計を変更したのかもしれない。

2月9日
●プジョーが2009年前半の活動内容を発表

Photo:Peugeot-media
昨年までの908と大きな違いは見られない。コクピットへの熱の進入を遮断するため、プジョーはキャビンをミラーコーティングしたと説明しているが、リア周りのカラーリングでも明らかなように、デザインでもあるようだ。昨年ルマン直前になって、大きなインタークーラーを納めるため、サイドボディ後部に盛り上がりが設けられている。写真で明らかなように、2009年最大過給圧が引き下げられても、大きなインタークーラーが使われているようだ。

 2月9日プジョーは、2009年のスポーツカーレース活動についての発表を行った。
 昨年9月シルバーストーンにおいて、プジョーは908HYハイブリッドカーを含めた壮大な2009年の活動を公表している。しかし、その後の急激な景気後退の影響によって、大幅に縮小した内容となった。
 まず、参加するレースについては、2009年ルマンまでが決定している。3月ALMS開幕戦セブリング12時間に2台の908を送り込む。続いてルマン24時間レースのシュミレーションを兼ねて、5月に行われるLMS第2戦スパ-フランコルシャンに3台の908を走らせる。そして、その3台が6月のルマン24時間も闘うこととなる。
 ルマン後の活動については、その後決定するとしている。

 完全なニューマシンの開発も行われていたようだが、公表されたマシンは従来の908の改良モデルだった。
 2009年ACOはレギュレーションを変更した。アクシデントが相次いだことから、速すぎるプロトタイプカーのリアウイングの幅を40cm狭い1.6mとする一方、P1クラスのディーゼルターボエンジンについて、10%パワーを削減するため、リストリクター径の縮小とターボの最大過給圧を引き下げた。
 昨年のルマン直前、プジョーは大きな過給圧を有効に活用するため、巨大なインタークーラーを納めるよう、新しいサイドボディを作ってルマンにやって来た。昨年までのACOのディーゼルエンジンのレギュレーションは、理論上850馬力を可能とすると考えられているが、昨年のルマン以降のプジョーは、限りなく850馬力に近いパワーを発生していたようで、アウディさえ圧倒する速さを発揮している。しかし、ディーゼルエンジンに対する優遇処置に非難が集まったことから、たった10%だけディーゼルのパワーが削減されることとなった。

 そのため、プジョーは、より効率を向上させる方向で開発に取り組んでいたようだ。大きな抵抗となっていた排出ガス浄化のためのパティキュレートフィルターは、DOWと共により効率の高いものを開発する一方、ディーゼルエンジンの要であるインジェクションシステムは、ボッシュと共に開発に取り組んだ。
 40cm幅の狭いリアウイングの対策は、空力開発だけでなく、ミシュランと共に新しいタイヤの開発に取り組んで、シャシー性能の低下を抑えている。しかし、2週間前セブリングでアキュラと共に発表された、リアと同じサイズの大きなフロンントタイヤは、フロント部分のディフューザーのスペースを減らして空力性能に影響を及ぼすこととなるため、ルマンを優先したプジョーは、予想通り使わなかった。たぶん童夢の2009年バージョンのS102も同じだろう。
 昨年アウデイは一足早く縦置きミッションの開発に取り組んでいたが、プジョーも開発に成功したようだ。

 2009年コクピットの室温を32℃以下に保つレギュレーションが厳密に運用されることから、これまで以上にコクピットの温度管理が緻密に行われる。それでも童夢と同様エアコンの採用には消極的であるようで、プジョーはキャビンを完全にミラーコーティングして熱の進入を抑えている。

 ドライバーラインナップも、より実戦を意識した内容となった。セバスチャン・ボーディー、デビッド・ブラバム、マルク・ジェネ、クリスチャン・クリエン、ペドロ・ラミー、ニコラス・ミナシアン、フランク・モンタギー、ステファン・サラザン、アレクサンダー・ヴルツの9人が契約した。今日のレセプションではセブリングで走る2台の組み合わせしか発表されなかった。No.7にミナシアン、ラミー、ボーディーが、No.8にモンタギー、サラザン、クリエンが乗り組む。しかし、この組み合わせはセブリングについてだけであって、そのままスパとルマンを走る訳ではないようだ。

 3月8-9日ポールリカールで行われるLMSテストへの参加は明言しなかったが、その直後プジョーはポールリカールで24時間テストを行う計画を立てているため、何らかのカタチで参加することとなるだろう。

2月4日
●ミキモト真珠がALMSのシリーズパートナーに

Photo:Sports-Car Racing

 GMとクライスラーが危機的な状況に陥っているだけでなく、アメリカは厳しい経済状況の中にある。しかし、そのような状況にあっても、ALMSは積極的な営業活動を行っているようだ。
 ALMSは、シリーズスポンサーとして、毎年様々な企業の支援を受けている。しかし、現在そのほとんどが自動車関連企業であって、かつて叫ばれたような、イメージを求めてサポートする企業は少なくなっていた。しかし、ALMSを率いるスコット・アタートンの積極的な売り込みもあって、今年日本の「MIKIMOTO」が、シリーズパートナーとしてALMSと契約することとなった。「MIKIMOTO」と言ってもピンとこない方々も多いだろうが、あの真珠のミキモトだ。

 日本では、御木本幸吉と言えば、真珠の養殖を確立して、それまでごく一部の富裕層の間でしか出回らなかった真珠を、高級装飾品として、世間に認知させた功労者として知られている。現在では、世界中で「MIKIMOTO」と言えば真珠の高級ブランドとして知られている。しかし、ブランドとして、世間一般に認知させるには、新たな戦略が必要だった。
 そのような時、ALMSから話が舞い込んできた。元々北アメリカの「MIKIMOTO」の顧客の40%はポルシェとBMWのユーザーだった。ポルシェやBMWが活躍する舞台で、共にブランドを認知させることが出来るのであれば、「MIKIMOTO」にとって、大きなアドバンテージとなると判断したようだ。

 そうして1月27日ウインターテストが行われていたセブリングで、「MIKIMOTO」とALMSは、シリーズパートナーとして契約を結ぶこととなった。
 「MIKIMOTO」は、ALMSを支援する他の自動車メーカーやタイヤメーカーと同じように、シリーズスポンサーとして名を連ねるが、GrandAmシリーズやルマン24時間におけるロレックスのような位置づけであるようだ。

2月4日
●2009年に10台のローラB08クーペが走る

Illustration:Lola Cars International Ltd
AERマツダの2リットル4気筒ターボエンジンを積むB08-80(86)クーペは、セミワークスと言えるダイソンがALMSで走るだけでなく、ヨーロッパではRMLとクルーゼはB08-86/AERマツダP2クーペを走らせる。RMLとクルーゼは、2009年ACOレギュレーションの幅1.6mのリアウイングを組み合わせる。

 昨年末ローラは新しいマネージングダイレクターとして、ロビン・ブランデルを迎えた。ロビン・ブランデルに求められた最も大きな仕事は、英ポンドの急激な下落を活かして、世界中にB08クーペを売り歩くことだった。1年前260円だった英ポンドはたった130円に急落していた。ロビン・ブランデルは、B08を半額とはしなくても、約30%安い価格で販売した。その代わり顧客が2台目を注文するのであれば、さらに30〜40%のディスカウント価格を提示した。
 ローラのこのような値引き戦略は、ザイテックや童夢を警戒しただけでなく、ポルシェがRSスパイダーによって市場を席巻することを防ぐ理由があったと考えられている。
 9月にACOは2011年以降のレギュレーションを公表している。2011年レギュレーションでP1クラスは、現在のP2クラスと同じ3.4リットルNAエンジンを使うため、現在最強のP2カーであるRSスパイダーをポルシェから買えば、2011年以降も使い続けることが可能と考えられていたことが理由だったかもしれない。

 その結果、次々とローラはB08クーペの販売に成功した。北アメリカでは、それまでポルシェRSスパイダーを走らせていたダイソンに2台、ヨーロッパではレーシングボックスが2台、レイ・マロック(RML)、クルーゼが次々とB08クーペを購入した。既にB08-80を購入していたSpeedy Sebahは2008年に作られたアストンマーティンV12を積むB08-60 P1カーも買った。GT1クラスから撤退したプロドライブは、それまでシュロースが行っていたB08-60クーペによるアストンマーティンP1プロジェクトを、アストンマーティンのプロジェクトとして、プロドライブが引き受ける体制を築いた。

Illustration:AstonMartin Ltd
2009年アストンマーティンがトップカテゴリーに復帰する。過渡期であることを象徴するように、シュロースと提携して、昨年シュロースが走らせたB08-60クーペを引き継いで、それをプロドライブが改良したマシンを走らせる。2台の内の1台は、シュロースで活躍したヤン・シュロース、トーマス・エンゲ、ステファン・モカが乗り組む。

 使われるマシンは、昨年シュロースが走らせたB08-60クーペを含む2008年に作られた2台のB08-60をベースとしてプロドライブが手を加えるもので、ローラとアストンマーティンの2つのシャシーナンバーを持つ。B05以降のローラスポーツカーは、カナダのマルティマチックが多くの部分の開発を行っているが、アストンマーティンの2台はプロドライブが、その役目を行っているようだ。しかし、公表されたCGを見る限り、より速さを追求したと言うより、よりアストンマーティンらしさを表現するためであると考えられている。

 その結果2009年世界中のスポーツカーレースで10台のB08クーペが走ることとなった。ALMSでは“屋根無し”のB06とB07が2台走ることから、ローラが圧倒的なシュアを誇ることとなった。
 しかもこれらの総てのB08クーペが、2月末までにチームにデリバリーされる。既に先週ダイソンはセブリングでテストを開始しているし、3月8日と9日にポールリカールで行われるLMS合同テストには、残る8台(アストンマーティンB08-60 P1×2、Speedy Sebah B08-60 P1+B08-60 P2、レーシングボックスB08-80 P2×2、RML B08-80 P2、クルーゼB08-80 P2)が勢揃いする。


1月29日
●8年ぶりにスポーツカーレースに復帰するBMW

Photo:Sports-Car Racing

 2001年BMWは、4リットルV8エンジンを積んだE46型M3 GTRによって、ポルシェの牙城であるGT2クラスに挑戦した。しかし、当時V8エンジンを積むE46型M3 GTRは、全世界で販売されていた訳ではなかった。BMWがE46型M3 GTRのホモロゲイションを取得した時、ポルトガル等、ほんの一部の国でしたM3 GTRは売られてなかった。当時ACOのGT2カーのホモロゲイションは、25,000台生産されたロードカーを基本として、その発展型としてレーシングバージョンや、レーシングバージョンの基となる所謂ホモロゲイションモデルを25台生産することで、ホモロゲイションを与えていた。当時GT1クラスが、たった1台でもロードカーが存在するのであれば、ホモロゲイションを取得出来、レースカーを作ったコンストラクターでもホモロゲイションを取得出来たのに対して、GT2はあくまでもロードカーの発展型とのアイデンティティを堅持したため、非常に複雑で困難だった。
 もちろん、直ぐに高性能モデルを25,000台も作ることは出来なかったため、特認条項であった25台ルールに目をつけて、BMWは25台生産してしまえば、取りあえずホモロゲイションを取得出来ると判断した。それでもBMWは、FIAとACOに対して、シーズン終了までに、基本である25,000台を生産することを約束してシーズンをスタートした。

 シュニッツァーとPTGの2つのワークスチームによって、ポルシェと激戦を繰り広げた結果、BMWがポルシェを破ってチャンピオンを獲得することに成功した。ところがシーズン終了後、M3 GTRのホモロゲイションが怪しいのではないか?との指摘が出されて、ACOがBMWに対して資料の提出を求めた結果、2001年末であってもM3 GTRのホモロゲイションが成立してないことが判明した。
 25,000台の生産は当然行われてなかった。BMWは25台が存在することを証明したが、そのほとんどがレーシングカーだった。25台レーシングカーを作ったのでは、当然ながらロードカーのホモロゲイションを取得することは出来ない。
 今日でもGTカーのホモロゲイションは非常に複雑で難解であるため、理解するのは難しい。BMWだけでなく、その直後フェラーリも勘違いしてマセラッティMC12を作ってしまった。
 そのため、違反であっても、故意に違反したのではないことが認められたため、タイトル剥奪だけは免れた。しかし、その後BMWはスポーツカーレースから遠ざかることとなってしまった。
*注:Sports-Car Racing Vol.10を参照してください


Photo:Sports-Car Racing

 そのBMWは、3年前からACOルールのALMSに復帰することが噂されていた。当時BMWのワークスチームではなくても、ALMSではPTGは直列6気筒エンジンを積むE46型M3を走らせていた。直後にデビューすることとなるE92型M3には待望のV8エンジンが搭載される予定だった。その後E46型M3の戦闘力低下によって、PTGはパノスを走らせるようになった。一時期レクサスISの参加が予定されたため、BMW M3と共に、GT2クラスにセダンのクラスを作ろうとの動きがあって、GT2SクラスとしてレクサスとBMWは登場することが見込まれていた。しかし、クルマを作っていたにも関わらずレクサスはプロジェクトをキャンセルして、BMWの計画は非常にゆっくりと進んでいた。

 そして2009年BMWは、ボビー・レイホールのレーシングチームと共にALMSにE92型M3V8で登場してきた。
 E92となってもM3が背の高いセダンであることは変わらないため、BMWは、重心が高くならないよう、低い位置にコンパクトなカタチでロールケイジを設けてフレームを作り上げた。新たにホモロゲイションを取得することを前提として開発が進められたため、リアにデフと一体の横置きトランスミッションを設けたトランスアクスルとなった。
 V8エンジンによる大きなパワー、そして優れた前後重量配分によって、大柄なセダンタイプのボディであっても、ポルシェやフェラーリに匹敵するポテンシャルを発揮出来ると考えられていた。
 BMWはミシュランと契約することを目論んでいた。しかし、長い間スポーツカーレースから遠ざかっていたBMWとミシュランは合意に達することが出来なかった。その結果急遽ダンロップとタイヤ供給についての契約を結んだ。

 ここで大きな誤算が生じた。BMWはミシュランでなくても、素晴らしいタイヤを供給出来ると判断した。特にダンロップは、他にALMSで有力チームと契約してなかったため、専用のタイヤを用意出来ると考えていた。ところが、ダンロップには、ポルシェ用のタイヤしか用意出来なかった。ノーズが重いフロントエンジンでなくても、日本のSUPER GTを見ても明らかなように、最近のGTレースカーは、フロントにもリアと同じ大きさのタイヤを履くようになっている。にも関わらず、ボビー・レイホールのE92 M3V8は、フロントに直径650mmの小さなポルシェ用のタイヤを履いて走ることとなった。ヨコハマと契約しているPTGが現在パノスを走らせているため、BMWは遠慮したのかもしれないが、BMWがヨコハマに連絡していれば、このような問題はなかっただろう。

 それでもボビー・レイホールと共にBMWは8年ぶりにスポーツカーレースに復帰した。今後ダンロップがBMWに合わせて大きなフロントタイヤを開発するのであれば、高いポテンシャルを発揮することとなるだろう。
 最後にもう1つBMWは問題を抱えている。現在のところ、リアにデフと一体のトランスミッションを設置したE92 M3のホモロゲイションが下りていないのだ。8年前のようにギブアップすることがないのを願いたい。

1月27日
●セブリングALMSウインターテストスタート アキュラ、ポルシェ、BMWがニューマシンを公開

Photo:Sports-Car Racing

 毎年1月にセブリングで行われて、その年のスポーツカーレースの動向を占うことが出来るALMSウインターテストがスタートした。今年は急激な景気の後退の影響によって、新しいR15を持ち込むと思われたアウディを初めとして、幾つかのメーカーやチームが参加をひかえた。しかし、アキュラ、ポルシェ、BMWがニューマシンを持ち込む一方、マツダも新たに契約したダイソンによる最初の仕事をスタートした。
 アキュラは、ハイクロフトとジル・ド・フェランの2チームが新しいP1カー“ARX-02a”を走らせる一方、フェルナンデスは歴戦のARX-01b P2カーを走らせた。2009年のALMSは、P1クラスはACOレギュレーションを使用するため、幅1.6mのリアウイングと取り付けてARX-02aはやって来た。ちなみにP2クラスは、車重が825kgに増やされるだけで、リアウイングは従来通り幅2mのものが使われる。
 昨年までと違って、P2クラスの車重が増やされたため、P1クラスが有利なシーズンとなるのは明らかだが、1.6mリアウングを組み合わせたARX-02aが走行するのは2回目であるため、様々なセッティングに時間を取られて、フェルナンデスが走らせるP2カーがトップタイムを記録するセッションもあった。
 午後になると、夜サーキットの隣のシャトーエランで行われるHPDの発表会に備えて、ハイクロフトのマシンは姿を消して、ジル・ド・フェランだけが走行した。そして、予定通りトップタイムを記録した。

Photo:Sports-Car Racing

 昨年であっても、ALMSのGT1クラスはGMワークス以外、有力なエントリーはなかったが、今年カテゴリーを維持することが困難な状況に陥っている。ウインターテストには1台もGT1カーはやって来なかった。
 それに対して、GT2クラスは非常に面白い状況となっている。3日前ポルシェは、997GT3RSRの2009年モデルをセブリングでデリバリーすることを発表した。早くも今日からフライングラザードとファンバッファ・ロールの3台が走り始めた。ノーズにレイアウトされるラジエターのエアアウトレットが、総てボンネット上面に設けられているのが2009年モデルの特徴で、もちろん昨年7月に登場した4リットルエンジンが組み合わせられる。
 今日走った3台は、総てがシェイクダウンだったため、様々なチェックのために走行した。フライングラザードは、2008年バージョンも同時に走行させて、様々な比較を行いながらセットアップを行った。フライングラザードは、セットパセットアップが進んでいる2008年バージョンに、ボンネット等様々な2009年モデルのパーツを取り付けたマシンでGT2クラスのトップタイムを記録する一方、完全な2009年モデルが2位のタイムをマークした。
 今回のテストはフェラーリがやって来ないため、本当の実力を探ることは出来ないが、ポテンシャルが向上していることは間違いないようだ。


Photo:Sports-Car Racing

 このような状況の中、コンスタントに素晴らしいタイムを記録したのは、ドランが開発したフォードGTを走らせたロバートソンモータースポーツだった。昨年も時折速さを披露することはあっても、フォードGTにとって、開発の年となってしまった。コンスタントに速さを発揮したため、期待のシーズンとなることだろう。GT2クラスは非常に拮抗した速さを実現しており、ライリーテクノロジーが開発したコルベットZR6も好タイムを記録した。
 BMWは、新しいM3 GT2カーをボビー・レイホールに託して、セブリングにやってきた。背の高いセダンベースのGTレーシングカーだが、低い位置にロールケイジを設ける等重心の引き下げに配慮した素晴らしいフレームを持つ斬新なGTレースカーだ。しかし、予定したタイヤが使えないため、辛いスタートとなった。
 デイトナからやって来るダイソンは、明日から走行する予定だ。

Photo:Sports-Car Racing

1月24日
●巧みに生き残りの道を探るペスカロロ 兄弟チームのセルニエはOAKレーシングと改名

Photo:Sports-Car Racing

 昨年秋以降の急激な景気後退によって、世界中のレーシングチームは過酷な状況に晒されている。2005年から2007年まで最高のプライベートチームとして大活躍したペスカロロも厳しい状況にあるようだ。
 2007年秋アンリ・ペスカロロは、当時セルニエレーシングを買収したばかりだったジャック・ニコレと共にペスカロロオートモビルを設立した。その結果ペスカロロスポーツとセルニエレーシングは兄弟チームとして活動することとなった。ペスカロロがワークスチームを相手とするプロフェッショナルなレーシングチームで、セルニエがジェントルマンドライバーを対象としたカスタマーサポートのためのチームだった。

 と言っても、ペスカロロが、容易に最高の体制の2台のプロフェッショナルなレーシングチームを維持してきた訳ではない。2007年のルマンで起きた騒動を見ても、この状況は容易に理解出来るだろう。これまで、ペスカロロが素晴らしいレーシングチームを維持し続けている理由の1つは、フランスの英雄であるペスカロロを支援するファンが存在するからだ。ペスカロロオートモビルの共同オーナーでもあるジャック・ニコレはその支援者の代表だろう。ペスカロロと契約してルマンを闘いたいドライバーは、優秀であるだけでなく、それらのペスカロロの支援者から認められなければならない。エマニェル・コラールやブノア・トレルイエが乗り組んだ理由はここにある。
 それでも活動資金が不足する場合に限って、スポンサーの支援を受けたドライバーと契約している。

 日本から見ると素晴らしい環境に恵まれているように思えるが、それでも急激な景気後退の影響は避けられないようだ。元々2011年以降を見据えて、ペスカロロは、BMWのロードカーベースの4リットルV8エンジンを開発中のソデモと契約していた。しかし、開発段階のエンジンであるから、それなりのコストが必要となる。そこでフランスマツダが4気筒ターボエンジンを売り込んできた時、価格の安さに注目したジャック・ニコレは、セルニエレーシングが走らせる2009年のP2カーに採用することを決定した。同じように価格の安さから、ミシュランに代えてダンロップと契約した。

 ペスカロロがルマンを拠点とするのに対して、セルニエレーシングがマニクールをベースとすることも関係しているかもしれない。今後もペスカロロの兄弟チームであることは変わらないが、無い袖は振れないということだろう。
 2007年セルジュ・セルニエからセルニエレーシングを買収した後も、ジャック・ニコレはセルニエレーシングから名前を変えてなかったが、現在セルジュ・セルニエはプジョーのマネージャーを務めているため、以前から煩雑であることが指摘されていたため、今年ジャック・ニコレはセルニエレーシングからOAKレーシングに改名することを決定した。
 OAKレーシングについて連絡してきたエンデュランスインフォは、ジャック・ニコレとペスカロロの関係は変わらないと明言しているため、急激な景気後退だけが、今回の変更の理由だろう。

 謂わばペスカロロの二軍であるジャック・ニコレのOAKレーシングについては、2009年の概要が見え始めたが、一軍であるペスカロロスポーツの体制は、ほとんど伝わってこない。もちろん、急激な景気後退が大きな理由だろうが、これまでペスカロロを支援してきた支援者達の中には、独自に活動を目論むミリオネラも存在するようだ。これらのミリオネラの中には、かつてのISRSチャンピオンチームで、FIAGTで活躍するJMBを支援するモナコ人達が存在する。彼らは、JMBによって、新たな活動を目論んでいるようだ。

1月23日
●ポルシェは2009年モデルの997GT3RSRを1月26日セブリングで発表

Photo:Sports-Car Racing

 昨年ポルシェは265台のレーシングカーを作った。もちろん、その多くは世界中で行われているポルシェカレラカップで走るCupカーだが、GT2カテゴリーのための997GT3RSRも多数含まれている。
 かつてのGT2クラスはポルシェの独壇場だったが、フェラーリ430GT2の登場によって、現在GT2クラスは、ポルシェとフェラーリによる熾烈な闘いが繰り広げられている。昨年7月この状況を打開するため、ポルシェは997GT3RSRに対して4リットルエンジンを投入した。早速ALMSを闘う997GT3RSRに搭載されてフェラーリを破った。
 2009年モデルの997GT3RSRの目玉は、この4リットルエンジンだ。7,800rpmで450馬力を発生する4リットルフラット6は、大きな威力を発揮することだろう。
 もう1つのポイントは、昨年までとくらべると、非常にリーズナブルな価格設定がなされていることだ。何とベース価格は41,5000ドルに抑えられた。内容を考慮すると、昨年よりも約1万ドル安くなっている。
 2009年997TG3RSRは、来週1月26日から28日まで3日間にわたってセブリングで行われるALMSのウインターミーティングで発表される。ヨルグ・ベルグマイスターとヴォルフ・ヘンツラーがドライブする予定だ。

2009 Porsche 997GT3RSR
Engine        :水冷水平対向6気筒、102.7mm×80.4mm、3,996cc
                  :450bhp(7,800rpm) 430Nm(7,250rpm)*29.5mm×2のリストリクター付き 許容回転9,000rpm
Transmission  :ポルシェ製6速シーケンシャル、LSD付き(45/55%)
Suspension      :Fマクファーソンスプリングストラット+ザックス製ガスタイプショックアブソーバー
                     :Rマルチリンク+ザックス製ガスタイプショックアブソーバー
Brakes            :F380mmベンチレーテッドディスク+6ピストンキャリパー
                     :R355mmベンチレーテッドブレーキ+4ピストンキャリパー
Wheels           :F BBS製3ピース11J×18-34、R BBS製3ピース13J×18-12.5
Weight           :1,225kg(ACO) 1,245kg(FIA)

1月20日
●アウディがR10をプライベートチームに売却、ターゲットはLMS?

Photo:Sports-Car Racing

 現在アウディは新しいR15の開発を進めている。最初の予定に従うのであれば、昨年12月に発表して2009年はALMSとLMS、そしてルマン24時間レースに参戦するハズだった。ところが、昨年後半に勃発した急激な景気後退によって、アウディはALMSとLMSへの参戦を棚上げとする一方、R15を発表することさえ控えている。アウディ自身と言うより、ライバルの中には、会社の存続を疑われるメーカーも存在するため、アウディが自粛していることは理解出来るだろう。

 ところが、これまで10年間にわたってスポーツカーレースを引っ張ってきたアウディの自粛によって、ALMSとLMSは、非常に辛い状況に陥っている。既にヨーロッパで行われるLMSは、金曜日のスケジュールを取り止めて、土曜日と日曜日だけの2ディイベントとすることを決定した。それでも、来週セブリングで行われるALMSのウインターミーティングに何台が参加出来るか?1週間前となっても、誰も判断出来ない状況となっている。

 このような辛い状況であっても、アウディスポーツは、様々なレーシングチームから「R10を買いたい」と言う申し込みを受けていた。昨年アストンマーティンV12を搭載したローラによって活躍したシュロースが、童夢へS102購入を打診する一方、アウディスポーツにR10の購入を要求していたことが知られている。しかし、アウディスポーツは、シュロースに対して、R10ではなく、R8のV8ガソリンターボエンジンを提供することを連絡している。
 チェコで(アウディとも関わりのある)スコダのディーラー網を持ち、昨年大活躍のシュロースの申し出を断ったことから、アウディはR10を販売しない、と考えられていた。

 しかし、年が明けてALMSやLMSの状況が明らかになるにつれて、アウディスポーツは、間接的ながらLMSを支援することを決心したようだ。その結果、昨年DTMにA4で参戦していたDr.コリン・コレスのレーシングチームにR10を提供することを決定した。

 昨日アウディスポーツは、Dr.コリン・コレスのレーシングチームにR10を売却して、アウディスポーツのバックアップによって、彼らが活動することを発表した。実際にどのシリーズやレースに参加するのか?については言明を避けたが、発表の内容から推測すると、Dr.コリン・コレスのレーシングチームは、LMSとルマン24時間レースに参加することとなるらしい。
 アウディスポーツは、アウディスポーツのワークスチームではなく、プライベートチームの参戦であることを明言している。しかし、予算はDr.コリン・コレスが工面したとしても、全面的にアウディスポーツが関与するプロジェクトであるのは明らかだろう。第一Dr.コリン・コレスのレーシングチームは、アウディスポーツが存在するインゴルスタッドに近いグレーディンクに存在するのだ。

 アウディスポーツは2006年にR10を登場させた後、2007年に軽量モノコックを作って、2008年にはこの軽量モノコックを全車に採用した。2008年彼方此方でテストを行ったR10は、R15用と思われる縦置きの6速ミッションが組み合わせられていた。
 つまり、R10には2種類のモノコックと2種類のギアボックスが使われている。本当にプライベートチーム活動であるなら、2年落ちの重いモノコックと5速ミッションが使われるだろう。しかし、プジョーに対する対抗馬として送り込むのであれば、アウディスポーツは軽量モノコックと縦置きの6速ミッションを組み合わせた、事実上のV12のR15をデリバリーするだろう。
 昨日の発表の中で、アウディは、どのR10を販売するのか?一切明らかにしなかった。

1月8日
●カローラアクシオを選んだAPRの目論み

Photo:TOYOTA

 APRが開発していたカローラアクシオのGT300レースカーが完成した。今日正式に写真も公表され、明日から開催されるオートサロンの会場で、1号車も公開される。
 昨年「APRの目論み」を掲載した際、カローラアクシオGT300レースカーは、ほとんど完成していた。発表前であるため、車名を明らかに出来なかったが、トヨタのラインナップから、アクシオであることは、ばれていたかもしれない。

 APRがGT300レースカーのベースとしてカローラアクシオを選んだ最大の理由は、2.6mのホイールベースだ。昨年まで彼らが使ってきたMRSのホイールベースが、たった2.45mであるため、APRは、様々な工夫を凝らすことが求められていた。
 ホイールベースが短いことによって、軽く丈夫なフレームを実現することが可能となる。このアドバンテージを活かして、APRは、まるでフォーミュラカーのように長いアームを使ったサスペンションをMRSに装備した。
 長いアームを使うことによって、サスペンションの位相変化を少なくすることが可能となるため、限界付近でも、非常に扱い易い操縦性が可能となった。
 その結果、MRS GT300レースカーは、フォーミュラカーのようなクイックな操縦性を特徴として、大活躍を披露した。

 MRSで実現した長いアームのサスペンションは、カローラアクシオでも使われる。
 MRSの場合、非常にクイックな操縦性は可能となっても、短いホイールベースによって、神経質に感じるドライバーも少なくなかった。若いTDPドライバー達がドライブしたこともあって、逆の見方をすると、MRSを乗りこなして走ることが出来るドライバーは、好成績を記録して、次々とステップアップを果たした。
 カローラアクシオでは15pもホイールベースが長くなることで、クイックな操縦性はそのまま、乗り易さが加わると考えられている。

 4ドアセダンをベースとすることによって、誰もが、前面投影面積の大きさを心配するだろう。四角いフロント部分による空力性能の低さも、課題となるかもしれない。
 しかし、ロードカーが履くタイヤの直径が550mm〜580mmであるのに対して、GT300のレギュレーションは、タイヤの直径を711mmまで認めている。現在のGT300レースカーは、例えミッドシップカーであっても、フロントにリアと同じ直径711mmのタイヤを履いている。と言うより、フロントにもリアと同じ大きなタイヤを履くようなシャシーを実現することが、エンジニアには求められている。
 低いロードクリアランスとして、オリジナルより直径が170mmも大きなタイヤを履いた場合、四角いフロント部分であっても、大きなタイヤを納めるには、ボンネット上に大きな張り出しを設けなければならないのだ。

 と言っても、「屋根の高さはデメリットだろう」と指摘する方々も居るかもしれない。
 確かに屋根が高いことによって、前面投影面積そのものは大きくなる。屋根が高いことによって、リアウイングを高い位置にレイアウトすることが可能となる。低い屋根のNSXが、リアウイングの効果を高めるため、大きな苦労をしていることは知っているだろう。そのため、高い屋根であることは、決定的なデメリットとは考えられていない。

 MRSでも高性能を発揮した尾川チューンのトヨタ2GR 3.5リットルV6エンジンにも、さらに開発が加えられているため、、カローラアクシオGT300レースカーのポテンシャルを1日も早く見たいと考えてしまう。しかし、大きな注目を集めていることもあって、現在完成したカローラアクシオGT300レースカーの1号車は、彼方此方のショーで展示されることとなったため、直ぐに開発テストを開始することが出来ない。
 現在の過密スケジュールを考慮すると、2号車が完成した後、シェイクダウンテストは2号車によって行われることとなるだろう。

 



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