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    2012
    2011

    2012 10月31日 SpecialEdition SuperGTとDTMの提携の現状
    2012 10月17日 SpecialEdition Super GTとDTMが2014年から車両規則を統一
    2012 8月21日 SpecialEdition 2013年アジアンルマンシリーズについてACOとGTAが提携 GT300の出走が可能に!
    2012 6月20日 SpecialEdition 2014年ルマンLMPレギュレーション草案
    2012 5月7日 SpecialEdition ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが付き合う方法
    2012 3月4日 SpecialEdition クアトロを可能とした2012年のLMPレギュレーション 
    2012 2月2日 SpecialEdition ルマンへ復活する童夢  ペスカロロ童夢の誕生!

    10月31日
    SpecialEdition SuperGTとDTMの提携の現状

    Photo:Sports-Car Racing

    ●ミッドシップを実現しようとする日本人、総てがFRと思っていたドイツ人
     10月16日GTAとITRは、SuperGTのGT500クラスとDTMの提携について、正式に契約を交わした。正式に契約を交わすまで、ITRはGTAに対して、DTMカーについて細かな情報を公開しなかったし、GTA自身、日本の3つのメーカーの総てが、FRマシンで参加する訳でなく、ホンダがミッドシップのNSXを走らせる計画を持っていることを明言しなかった。
     GTAとITRが正式に契約する数日前、富士スピードウェイでWECが開催されていた際、アウディのウルフガング・ウルリッヒは、GTAとITRが正式に契約して、日本とヨーロッパでDTMカーが走ることを歓迎していた。しかし、その段階でさえ、ウルフガング・ウルリッヒは、日本の3つのメーカーも、ドイツの3つのメーカーと同じFRマシンを走らせると考えていた。ホンダがミッドシップカーを走らせる計画を持っていることは、知らなかったようだ。

     ITRは、その後15日にミーティングを行って、今年導入したばかりのDTMカーを走らせるのは2013年までであることを確認した。そして16日正式にGTAと契約した後、ITRは、現在のDTMカーを走らせるのは2013年末まであることを公表した。
     DTM側の慌てようを見ると、ここまでの段階では、日本人が自分達の主張を押し通して、ドイツ人を翻弄しているようにも見える。
     もちろんITRが現在のDTMカーの使用を2013年までとする理由は、2014年からGTAと提携して、SuperGTのGT500がDTMと同じパーツを使ったマシンを走らせるからだ。長い間交渉を行っていたことを考慮すると、本当にITRが、日本の3つのメーカー総てがFRマシンをGT500で走らせると考えていたとは思えないが、少なくとも、そのように判断していたようだ。

     GTAは、ホンダのミッドシップカーに対しても、他のマシンと同じFRマシン用のモノコックを使う方針だった。しかし、FRマシンのためにデザインされたモノコックをミッドシップカーで使った場合、クラッシュテストをクリアすることは出来ない。
     何も対策を行わないのであれば、フロントからクラッシュした際、モノコック後方にマウントされる重いエンジンがモノコックに激突してしまう。DTMカーは、モノコック左側にドライバーが存在して、ドライバーの右側に燃料タンクをレイアウトしている。つまり、モノコックの左右で大きく構造が違う。燃料タンクの後方には、開口部さえ設けられているため、クラッシュした際、重いエンジンがモノコック右側の燃料タンクに大きなダメージを与えることとなってしまう。

     FR用のモノコックを使ってミッドシップカーを実現した場合の、このような危険性を排除するため、GTAは、GT500に使うモノコックについて、DTMと同じデザインであっても、ミッドシップでの使用に耐えるよう、作り替える方針だった。そのため、GT500で使うモノコックは、日本のコンストラクターが作ることをITRに認めさせていた。
     当初当方は、同じデザインでありながら、GT500で使うモノコックを日本のコンストラクターが作る理由について、日本のコンストラクターの仕事を確保するためと考えていたが、実際には、日本で作らなければならない理由が存在したようだ。

     この段階で、外側のデザインが同じであっても、FRのみを対象としたモノコックとミッドシップも可能なモノコックの2種類が存在することとなった。つまり、DTMとSuperGTのGT500は、見た目は似通っていても、まったく違う存在となってしまった。
     この大きな食い違いを是正して、外側から見たカタチだけでなく、中身も同じモノコックを使うことが、ITRの発表の理由と考えられる。現在のところ、もちろんドイツ人達は、日本人に振り回されていると考えているようだ。
     2014年から本当にDTMとGT500が同じモノコックを使うのであれば、当初ITRが目論んでいたように、本当の意味でコストダウンも可能となる。しかし、その場合、ドイツと日本で別々に作るのではなく、どちらか一方で作るのが条件となるだろう。

    Photo:DTM

    ●共通パーツは50アイテム 日本独自のパーツは20アイテム それでも独自の開発は可能?
     このような食い違いはあっても、当初ITRが目論んだ通り、共通パーツの使用についての話し合いは進行している。現在のところ、約50の同じパーツが、DTMとGT500の双方で使用されることとなりそうだ。現在約50と目される共通パーツは、ITRの発注に基づいて、ドイツを中心としたヨーロッパのコンストラクターによって生産されているが、GT500へ導入される際、直接レーシングチームや日本のメーカーが、これらのヨーロッパのコンストラクターへ発注するのでなく、日本のメーカーが使用する分については、GTAから一括してITRに発注してGTAが購入する。GTAは、GT500へ参加する日本の3つのメーカーに対して、これらのパーツを販売して、それらの日本のメーカーがレーシングチームへパーツを供給する仕組みだ。

     2リットルターボエンジンやミッドシップカーの存在等によって、日本独自のパーツの開発が不可欠となったが、現在のところ、約20のパーツを日本独自で開発することが求められている。これらの日本独自の約20のパーツについても、各レーシングチームや各メーカーが勝手に作るのではなく、GTAが指定するコンストラクターが開発と生産を行って、GTAが一括して発注して、日本の3つのメーカーに販売して、さらにメーカーからレーシングチームへ供給される。ここら辺はDTMとの共通パーツを供給する際とまったく同じ流れとなるようだ。

     これらの共通パーツの使用によって、1台1台のコストは低下すると考えられるが、共通パーツに指定されなかったパーツメーカーは、SuperGTから去ることを強いられる。現在のSuperGTにとって、自動車メーカーに次ぐ支援者は、これらのパーツメーカーであって、レースと関係ないスポンサーは非常に少なくなっている。であるため、各レーシングチームは、コストの総額が減っても、多くの場合、従来と違う資金の出所(スポンサー)を見出さなければならないため、大きな苦労を強いられることとなるだろう。

     完全に同じディメンションで、ほとんどが同じパーツを使って作られるため、2014年以降、独自に自由な開発を行うのは不可能だ。これまでGT500マシンを開発してきた日本のコンストラクターの多くは仕事を失うこととなるだろう。
     レーシングチームを母体とするGTAは、「メーカーだけでなくチームが考える部分を残す」と主張するが、2014年のGT500マシンが、ドイツを経由した日本版NASCARであるのは、疑いようがない。

    Photo:Sports-Car Racing

    ●2014年以降、GT500とDTMに参加するのは、現在参加している6メーカーのみ 新しいメーカーの参加は不可!
     しかし、日本とドイツのどちらで作られるとしても、基本的に同じモノコック、そして、ほとんどが同じパーツを使って、まったく同じディメンションのマシンであることから、現在DTMやGT500に参加していないメーカーであっても、エンジンさえ用意すれば、容易に参入出来そうにも思える。メーカーでなくても、これらの共通パーツを購入したコンストラクターが、6メーカー以外のメーカーのマシンを作ることも可能であるように見えるかもしれない。

     ところが、これらの共通パーツは、ITRやGTAから直接コンストラクターやレーシングチームへ販売されるのではなく、6つのメーカーだけにしか販売されない。レーシングチームがこれらの共通パーツを欲しければ、現在参加している6つのメーカーから手に入れなければならない。もちろん、それらのメーカーが、自分達と違うメーカーのマシンに使うパーツを販売することはないため、2014年以降、GT500とDTMへは、これらの6つのメーカーだけしか参加することはない。

     どうして、このような事が許されるのか?と言うと、これらの共通パーツの開発費用は、6つのメーカーが負担しているからだ。
     DTMとGT500のレギュレーションの統一について、ITRがGTAに対して話しを持ち込んだ時、最初の段階で、それらのパーツをドイツから購入するだけでなく、ITRはパーツの開発費用の負担を求めている。その段階で大きな問題は、開発費用の負担だけでなく、ドイツで開発して生産したパーツを日本のレーシングチームへ買うことを義務着けることによって、日本のコンストラクターの仕事を奪ってしまうことだった。日本のモノ作りの文化が途絶えることが、大きな問題と考えられていた。
     当時DTMは、参入しているメーカーが主導して、中国でエキシビジョンレースを開催する等、ドイツメーカーによる販促の場となっていたため、どうして、日本人がドイツのメーカーの販促の手助けをしなければならないのか? 大きな問題となった。

     現在でも、この考えは、完全に排除された訳ではない。しかし、その頃のDTMが充分な観客を集めることが出来なかったのに対して、SuperGTは、ほとんどのレースでたくさんの観客を集めていたこともあって、ITRはGTAに対して、執拗に提携を迫っていた。
     日本人が、共通パーツの多くをドイツで作って、日本へ輸入するのを毛嫌いしているのを察知したITRは、GT500で使うモノコックは、日本のコンストラクターが作ることを認める等、様々な点で譲歩をしたことによって、GTAとITRは、提携について、本格的な話し合いをスタートすることが可能となった。

     では、モノコックをはじめとする共通パーツの開発費用やクラッシュテストの費用等は、ITRとGTAが負担するのか?と言うと、正確には、そうとは言い切れない。実際にそれらの費用を負担するのは、DTMとGT500に参加するメーカーなのだ。1メーカーが負担しなければならない費用は少なくないが、従来のGT500において、各々のメーカーが独自に開発するのと比べると、数分の一の費用に過ぎないようだ。であるから、参戦コストの捻出に苦慮する日本のメーカーは、例え、日本のコンストラクターの仕事を奪い、モノ作りの文化が途絶えることとなっても、DTMとの提携について最初の段階から前向きだった。

     もし、7つめのメーカーがGT500やDTMへの参入を望むのであれば、彼らも1/7の費用を負担しなければならない。
     つまり、北アメリカのNASCARがそうであるように、2014年以降のGT500とDTMは、費用を分担したメーカーによるクラブイベントだ。日本とドイツの2つのシリーズにおいて、6つのメーカーが勝ち負けを繰り広げるだけであれば、何の問題もない。

    *注:Sports-Car Racing Vol.20を参照してください

    Photo:Mercedes-Benz

    ●2013年の5月か6月に3メーカーが同時にシェイクダウン
     現在のところ、ミッドシップ用のモノコックの問題が解決してないため、具体的な内容は判らない。DTM側の慌てようから推測すると、モノコックについて、具体的な内容は何も決まってないかもしれない。しかし、既にDTM側が、現在のルールは2013年末までで、GT500と提携する2014年から新しいクルマの使用を公表したため、ミッドシップでも使えるモノコックを使った2014年のGT500とDTMカーは、2013年に次々とテスト走行を開始することが見込まれる。

     GTAによると、各々のメーカーが単独でシェイクダウンするのでなく、5月から6月にGT500へ参加する3つのメーカーが同時にシェイクダウンする、公開イベントを実施するのを目論んでいるようだ。5月から6月にかけて、SuperGTは海外遠征を行うことから、実現すれば、日本のファンの興味を維持するイベントとしても、大きな価値を持つことだろう。

     また、現在のSuperGTがDTMと大きく違う点は、5つのタイヤメーカーが参加していることだ。GT500だけでも4つのメーカーが参加して、熾烈な開発競争を繰り広げている。GTAによると、GT500に参加する3つのメーカーのクルマが、各々総てのタイヤメーカーと提携している訳ではないが、3つのメーカーに対して、総てのタイヤメーカーのタイヤに対応するシャシー開発を行うことを義務着ける方針だ。この話しを公表した際、GTAは3つのタイヤメーカーと表現したが、現在GT500には4つのタイヤメーカーが参加しているため、4つのタイヤに対応した開発と判断すべきだろう。

     わざわざGTAが、このようなプランを公表した理由は、シーズンオフの間、各々のタイヤメーカーが単独で開発テストを行うことから、それらのタイヤメーカーの開発テストに対して、3つのメーカーが平等に対応することによって、レーシングチームが選択すべきタイヤメーカーの範囲が増えることを見込んでいるようだ。
     もちろん、GTAの目的は、共通パーツの使用を義務着けることによって、レーシングチームがパーツメーカーから資金を導入するのが難しくなるため、残されたタイヤメーカーからの資金ルートを確保したい、と言う目論みであるだろう。

    Photo:Sports-Car Racing

    ●ワールドワイドな展開を目論むドイツメーカー 日本に固執する日本メーカー メーカータイトルの実施を目論むGTA
     もちろん、これほど譲歩したのであるから、ドイツの3メーカーは、全世界への展開について非常に前向きだ。既にITRが公表しているように、ロシア、中国、インドへの展開を目論んでいる。2013年にはロシアでレースを行うが、以前エキシビジョンレースを行った中国について、ITRは目論んでいるかもしれないが、ドイツのメーカー自身は少々トーンダウンしているようだ。
     インドについて、DTMの具体的なプランは判らないが、ドイツのメーカーによると、もし、海外でSuperGTと共同のイベントを開催するのであれば、インドの可能性が高いとの意見が聴かれた。しかし、GTAによると、具体的なプランは無いようだ。

     このようにドイツメーカーやITRはワールドワイドな展開を望んでいるが、GTAによると、日本のメーカーには、そのようなビジョンは無いらしい。少なくとも、現在SuperGTに参加している日本の担当者は、ワールドワイドはプランは持っていないようだ。GTAによると、このような日本メーカーのビジョンも考慮して、GT300によるアジア地域への展開を目指していると言う。

     現在のところ、もし、GT500とDTMが一緒にレースを行う場合、DTMのメーカーが検討したように、2013年11月に富士スピードウェイで行われるエキシビジョンレースが、最も可能性の高いイベントであるかもしれない。このレースはスプリントレースであるため、DTMマシンが、大きな変更無しで走ることが可能だ。しかし、単発イベントであるため、性能調整を行うのが難しいことから、余程巧妙に互いの性能を把握しない限り、実現するのは難しいように思える。

     このように性能調整を実施するため、現在のところ、ITRとGTAは、共に自分達のシリーズに対して、相手のマシンがスポット参戦するのは好ましくないと判断している。シリーズ参戦を前提とするだけでなく、もし、ドイツのメーカーがGT500へ参加する場合はGTAが、逆に日本のメーカーがDTMに参戦する場合はITRが、性能調整を行うことで一緒に走ることを想定している。

     ちなみに、ドイツのメーカーは、現在走っているDTMカーの使用を2013年末までで取り止める。これらのDTMカーについて、DTMに参加しているドイツメーカーは、プライベートチームへの販売を検討しているようだ。具体的に1年落ちであれば可能と回答したメーカーも存在する。GT300で走っているFIAGT3カーと比べても、比較的低コストと考えられるが、現在GTAは、メーカータイトルの設定を検討しているため、残念なことに、これらの型落ちのDTMカーが、成功出来るチャンスは少ないだろう。

    Photo:Audi

    ●SuperGTの2013年カレンダー変更について     ポイントはマレーシア
     既に明らかとなったように、GTAが2013年のSuperGTのカレンダーを発表した後、様々なレースとバッティングしていることが明らかとなった。特に、今年同様ルマン24時間レースとセパンがバッティングしてしまった。5月19日に韓国のヨンナムで行われるエキシビジョンレースはニュルブルクリンク24時間レースとバッティングしてしまった。9月22日に富士スピードウェイでアジアンルマンシリーズが行われることから、レースとレースの間隔を2週間空けることを求めるルールによって、当初、その1週間後に予定されていたオートポリスのレースも移動を余儀なくされてしまった。

     これらの問題の中で、オートポリスについては10月6日に移動することが決まった。明日JAFから発表されるだろう。ニュルブルクリンク24時間レースとバッティングしてしまった韓国のエキシビジョンレースについては、該当するレーシングチームがドライバーを変更することによって、そのままのカレンダーを維持する方針であるようだ。問題は6月のセパンだ。

     元々セパンは6月23日に予定されていた。その後、元々6月15日から16日に予定されていたルマン24時間レースが、1週間後に移動したことによって、バッティングしている。マレーシアの国教がイスラム教であるため、後ろに移動すると、ラマダンと重なってしまうことから、前にしか移動することは出来ない。先週GTAは、セパンのカレンダーを1週間前の6月16日へ変更すると公表した。しかし、現在のところ、セパン側の承諾を得たカレンダーではないらしい。既にセパンのオーガナイザーであるJPモータースポーツとの契約は、一旦2012年までで終了している。新たに2013年以降の契約をGTAとJPモータースポーツが交わさなければ、2013年のカレンダーを決定するのは、JPモータースポーツとしても出来ない話であるだろう。

     2013年の5月から6月のSuperGTのスケジュールは、セパンへ遠征することを前提として、マレーシアへ行く途中で韓国へ、場合によっては、マレーシアから帰る途中で沖縄に寄ることで組み立てられている。セパンのイベントが無くなってしまったら、これらのスケジュールの総てを作り直さなければならないのだ。今週末か来週、つまり11月前半、GTAはJPモータースポーツと交渉を持つと予想されているが、そこら辺が、現実的なデッドラインと言えるだろう。

    Photo:Sports-Car Racing

    *2013年最終戦まで、DTMは、従来と同じレギュレーションと速さのレベルを堅持

    *SpecialEdition Super GTとDTMが2014年から車両規則を統一

    10月17日
    SpecialEdition Super GTとDTMが2014年から車両規則を統一

    Photo:Sports-Car Racing

    ●世界中への展開を望んだDTM
     現在SuperGTのGT500とDTMは非常に似たカテゴリーだ。違うクルマの速さを整えるため、ツーリングカーでありながら、大幅に改造を許した結果、事実上のシルエットフォーミュラであることは、この2つのカテゴリーに共通する最大の特徴だ。ところが、シルエットフォーミュラと言っても、1970年代のグループ5と違って、出来る限り同じディメンションの車体と同じスペックのエンジンを組み合わせたクルマであるため、他の世界中のどのカテゴリーともかけ離れている。
     2000年、現在のDTMが成立した時、早くもDTMを運営するITRは、SuperGT(当時はJGTC)を統括するGTAに対して、ラブコールを送っている。ITRのラブコールに応えて、GTAは当時の事務局長をニュルブルクリンクまで派遣している。

     その後ITRは、2つのカテゴリーが非常に似たアイデンティティを持つため、DTMとSuperGTの提携を望むようになった。
     しかし、この点については注釈が必要だ。なぜなら、その頃のDTMは、アウディとメルセデスの2つのメーカーしか参加してなく、ニュールンベルクの公園の仮設コースで行われるノリスリンクのレースとオランダのザンドフールトだけが、観客席をいっぱいに出来るイベントで、他のレースの場合、観客席は空席が目立った。そこでITRは、3つ目のメーカーの参加を促進する一方、ワールドワイドのカテゴリーとして認知されることによって、成長することを狙った。もちろん、ワールドワイドなカテゴリーと認知された場合、3つ目のメーカーも勧誘し易くなるとの判断もあっただろう。ITRは、2012年にスタートする新しいDTMレギュレーションに合わせて、SuperGTを統括するGTAだけでなく、北アメリカのGrandAmとも提携を目指して話し合っている。

    Photo:Sports-Car Racing

    ●相容れない存在だったDTMとGrandAm
     ITRにとって、自分達のルールが世界中で使われることを目的として交渉と行っていたため、2012年のDTMレギュレーションが世界中で使われるとを前提として話し合っている。2012年のDTMは、コストダウンと高い安全性を目的として、基本的に同じディメンションのボディ、同じカーボンファイバーコンポジットのモノコック、同じトランスミッション、同じサスペンション、同じブレーキを使う。モノコック等の基本的なパーツは、総てITRが管理して、同じ業者から購入する。SuperGTやGrandAmがDTMと同じレギュレーションを採用した場合、SuperGTやGrandAmへ参加するメーカーやコンストラクターも、ITRの指定業者から主要なパーツを購入しなければならない。この条件が、大きな問題となった。

     ITRが盛り込んだ、共通パーツのルールは、既に10年も前からGrandAmが実施しているシステムだ。GrandAmの場合、指定パーツとして認定したパーツだけしか使用出来ない。エンジンやシャシー等、ほとんど総てのパーツが指定パーツであるため、当然ながら、エンジンを作るメーカー等が指定業者に名を連ねている。2000年に現在のDTMが成立した際、ITRもトランスミッションやブレーキ等を指定パーツに設定している。ここら辺を理由として、ITRはGrandAmとの提携を目指したのだろうが、既にGrandAmは、DTM以上に指定パーツのシステムを徹底して採用して、既にたくさんのプライベートチームに、このシステムは浸透していた。ITRの世界中でDTMレギュレーションを採用させる目論みをGrandAmが認めることはなかった。
     DTMに参加するクルマの総てが、メーカーが資金を投じて開発していたため、レギュレーションを変更した場合、たった2つのメーカーが納得すれば実現可能だったが、GrandAmに参加するレーシングチームは、総てがプライベートチームで、マシンを開発していたのはコンストラクターだった。GrandAmとDTMは、この点が根本的に違っていた。

     早い段階でGrandAmとの提携は発表されている。しかし、当時GrandAmに確認したところ、GrandAmのレースにおいてDTMルールのクルマが走ることを認めたものであることが判明した。その後、GrandAmはALMSとのジョイントを決定して、2014年から1つのシリーズとして行われることとなったことから、DTMの話しは、事実上消滅したと考えられている。
     つまり、ITRにとって、日本の大メーカーが参加して、日本国内では常に観客席を満員とする一方、アジア地域への展開を実現しているSuperGTだけが、本当の意味で提携交渉を行うべき相手となった。

    Photo:DTM

    ●SuperGTがDTMレギュレーションを採用する方法
     SuperGTのGT500に参加するレーシングチームは、その総てがメーカーが資金を負担して開発したマシンを走らせている。この点はDTMと同じだった。SuperGTのGT500とDTMは、レギュレーションを統一するだけであれば、何も問題はないだろう。
     ところが、DTMのレギュレーションの条件は、DTMのために開発したパーツを使うことだ。SuperGTに参加する日本のメーカーは、ドイツで作ったパーツを購入して、マシンを作らなければならない。言い換えると、日本のコンストラクターは仕事を失ってしまうのだ。GrandAmがDTMカーの参加を認めても、DTMルールの採用を躊躇した大きな理由はここにある。

     ITRとGTAが本格的な交渉を開始したのは2010年からだ。その頃GTAの板東社長は、定例記者会見の際口を滑らせて、ITRからモノコックをはじめとするパーツの開発費用の分担を求められていることを語っている。事実上メーカーがオーダーして開発したパーツであるから、チームに販売される価格は安価でも、分担すべき開発費用は半端な金額ではない。この金をGT500に参加する3つのメーカーが負担するとしても、主要パーツのほとんどがドイツから買ってきたものであれば、日本の自動車メーカーも素直に承諾するのは容易ではない。もちろん、日本の自動車レース産業の保護を目的とするJMIAは黙っていない。

     しかし、SuperGTのGT500へ参加する3つの日本のメーカーがDTMへも参加するのであれば、それらのメーカーは、開発費用の分担を拒否する理由も少なくなる。2011年幾つかの日本のメーカーのモータースポーツの担当者は、ドイツのDTMを訪れて、様々な調査を行っている。早くも日本のメーカーがDTMへ参加すると報じたドイツのメディアも少なくない。

     また、SuperGTのGT500は、日本のドメスティックフォーミュラであるフォーミュラニッポンと同じエンジンを使うことによって、メーカーによる資金の捻出を配慮している。つまり、例えDTMのレギュレーションを取り入れるとしても、完全にDTMと同じレギュレーションをGT500で採用するのは不可能だった。

     2009年にGT500は新しいレギュレーションを施行している。DTMは2012年に新しいレギュレーションを施行する計画だったことから、もし、GT500が2012年にDTMのレギュレーションを採用するなら、JAF技術部会が長い時間をかけて作り上げたレギュレーションは、たった3年で消滅することとなってしまう。現在のGT500のレギュレーションは、コストを削減するため、同じシャシーを最低3年間使用することが義務着けられている。2009年に現在のGT500レギュレーションは施行されても、当時リーマンショックの真っ直中だったことから、ホンダは2010年にHSV GT500マシンを登場させている。たった2年でマシンを捨てるのであれば、やっと予算を確保してSuperGTへ参加したホンダの担当者の顔を潰してしまう。

     ドイツから買ってきたパーツを組み立てたマシンについては、日本国内において相当な障害となった。モノコックをはじめとする同じパーツを設定したことによって、DTMはFRレイアウトに限定されてしまった。ところがホンダは、ミッドシップのNSXをベースとしたマシンをSuperGTで走らせる方針だった。しかも社長自ら、ミッドシップのNSXをSuperGTで走らせることを公表してしまった。FRマシンのために開発したモノコックを使って、ミッドシップカーを作るのは容易ではないだろう。
     ホンダがミッドシップのNSXを想定していることが明らかになって、DTMとのレギュレーション統合の話し合いは崩壊したかと思われた。しかし、DTMレギュレーションの採用は、既定路線だったようで、消滅することなく、話し合いが続けられた。

     SuperGTがDTMのレギュレーションを採用するとしても、完全に同じ内容は不可能であることから、DTMのレギュレーションを基本としたレギュレーションが構想されることとなった。GT500には3つのメーカーしか参加しないことから、GT300の場合JMIAが草案を作成したのと違って、JAFマニファクチュラー部会を中心として、レギュレーションは構想された。
     最終的にGT500は、DTMと同じデザインのモノコックを採用するものの、そのモノコックは日本で作られることが決定した。このFR用として作られたモノコックをミッドシップのNSXも使うことが決定した。つまり、プロペラシャフトが通るフロアトンネル付きのモノコックをミッドシップのNSXも使うこととなる。FRの場合エンジンが存在するスペースには、ノーズの耐クラッシュ構造とモノコックを結ぶアタッチメントが設けられ、フロントサスペンションが取り付けられる。
     エンジンは次期FN(スーパーフォーミュラ)と同じ2リットル4気筒ターボエンジンを採用することも決定した。

     SuperGTがDTMレギュレーションを採用するため苦労していた頃、DTM側も、一部のレギュレーションを変更して、GT500との調整を行っていた。例え違うレギュレーションで作られたマシンだとしても、将来、同じレースで一緒に競い合うことが出来るのであれば、SuperGTとDTMの双方、そして、ドイツと日本のメーカーにとって歓迎すべき出来事だった。
     元々DTMは900kgの車重と幅12インチのタイヤを想定していた。GT500はGT300との関係があるため、タイヤ幅は14インチで車重は1,100kgだった。そこでDTM側も、GT500と同じ1,100kgの車重と幅14インチのタイヤを採用することとなった。

    Photo:DTM

    ●2014年のSuperGTのGT500とDTM
     これらの努力によって、完全とは言えないが、2014年にSuperGTのGT500によるDTMレギュレーションの採用が実現した。
     クルマのディメンションは、完全に同じで、全長4,650mm、全高1,150mm、全幅1,950mm、ホイールベース2,750mmだ。オーバーハングもフロント875mm、リア1,050mmで変わらない。昨日車重は公表されなかったが、既にDTMが1,100kgと公表している。
     モノコックや空力部品は、GT500の場合、日本で作られるが、形状はDTMと同じものだ。

     タイヤの大きさは、GT500とDTMは同じで、フロントは300/680R18、リアは320/710R18となる。現在のGT500の場合、前後共幅14インチで、一般的にトラクションを考慮してリアタイヤのホイール径を17インチとしているが、SuperGT側も譲歩したようで、フロントタイヤを少々小さくして、リアタイヤには従来のフロントタイヤと同じサイズを採用している。
     DTMの場合ハンコックのワンメイクだが、SuperGTのGT500の場合様々なタイヤメーカーが開発したタイヤの使用が可能で、速さについて、この点が、最も大きな違いと言えるかもしれない。

     ちなみに、DTMは1時間のスプリントレースだが、SuperGTは300km〜1,000kmのセミ耐久レースであるため、ドライバー交代を考慮して、DTM同様全車左ハンドルとなる。DTMの統一モノコックはドライバーの右側に燃料タンクが設置されているため、燃料補給の際の火災を考慮して、エキゾーストの位置も変更される。つまり、DTMで走っているクルマを日本へ持ってきても、これらを変更しない限り、SuperGTへ参加するのは不可能だ。

     これらの変更を行えば、GT500とDTMは相互乗り入れが可能だが、DTMがコストを圧縮することを目的として、ワンメイクタイヤだけでなく様々なルールを設けている。ブレーキローターに至っては、1台あたり年間6枚のカーボンローターしか使えない。エンジンも年間1基しか使用が許されていない。DMSBによると、共通部品を使用する新しいレギュレーションによって、年間40〜45%のコスト削減が可能であると言う。しかし、SuperGTの場合、タイヤメーカーが凌ぎを削っていることもあって、エンジンだけでなく、ブレーキについても、SuperGTが独自のルールを設けることとなるようだ。

     また、FRマシンと同じモノコックを使用するミッドシップのNSXについては、何らかのハンデが課せられる可能性があるようだ。このハンデはJAF技術部会ではなく、GTAによって設定されることとなる。
     同様に、DTMへGT500マシンが参加する場合、逆にSuperGTへDTMマシンが参加する場合の性能調整について、基本的なルールは両者によって決められるが、最終的な性能調整は、DTMの場合ITRが、SuperGTの場合GTAによって行われる。

     クルマのサイズが完全に同じであるため、現在のDTMはドイツ版NASCARだ。それを違うクルマに見せるため、各メーカーのデザイナーが力を発揮することとなるだろう。現在のDTMの場合、ラジエターグリルだけでなく、様々なボディデザインの違いが明らかであるため、クルマの寸法が同じでも、それぞれのファンは違うクルマと認識しているようだ。
     しかし、日本のファンが、新制GT500に納得するのか?少々疑問だ。なぜなら、現在でもGT500のレーシングチームは、メーカーの指示かもしれないが、エンジンにはカバーを被せて見せようとはしない。新制GT500にとって、誰もが判る唯一の違いは、違うエンジンを積むことだ。日本のファンが、どのような判定を行うのか?非常に興味深い。

    Photo:DTM

    8月21日
    SpecialEditionn 2013年アジアンルマンシリーズについてACOとGTAが提携 GT300の出走が可能に!

    Photo:Sports-Car Racing

    ●性能調整によってカレラカップカーとGT300を同じGTCクラスから出走させる
     6月のルマンの際ACOは、2013年からアジアンルマンシリーズを開催することを発表した。その後実際のオーガナイザーがS2Mであることも明らかとなった。しかし、現在のアジア地域にルマンルールのスポーツカーは、ほとんど存在しないため、どこからアジアンルマンシリーズのエントリーがやって来るのか?謎のままだった。
     今年2月ACOは、GTAに対して協力関係を構築することを申し込んでいる。ACOがSuperGTについて多くの情報を持たなかったこともあって、ACOの提案は、アジアンルマンシリーズについて、GT300マシンの出走についてだった。その後6月のルマンの際、GTAの面々がルマンを訪問して、GTA側からも、具体的な協力内容について提案している。その時にGTAが提案した内容が、GT500チャンピオンマシンのルマン24時間への出走とGT300のためのクラスを設けることだった。

     その後ACOとGTAは細かな話し合いを行ったが、互いの情報不足だけでなく、様々な行き違いによって、具体的な話し合いを行ったのは、鈴鹿1000km開催中の鈴鹿となった。
     ACOは、アジアンルマンシリーズについて、LMP2、GTE、フォーミュラルマンの3つのクラスと共に、GTCクラスを設けることを決定した。GTCクラスとは、北アメリカのALMSではポルシェカレラカップのクラスとして運用されている。ACOは、アジアンルマンシリーズにおいて、同じGTCの名前ながら、違う運用を行う方針だった。アジアンルマンシリーズにおけるGTCクラスとは、既存のGTカテゴリーであるGTEから外れた総てのGTカーのクラスとして運用される。ALMSと同じポルシェカレラカップカーだけでなく、FIA GT3カー、そしてSuperGTのGT300クラスで走るJAF-GT300マシンもGTCクラスから出走することが可能となる。

     2012年のSuperGTの場合、FIA GT3カーとJAF-GT300マシンは同じ速さとなるよう、JAF-GT300マシンのルールを変更しているが、ポルシェカレラカップカーとFIA GT3やJAF-GT300の間には速さに大きな差があり、一緒に走らせるのは非常に難しい。そこでACOは、これらのクルマが同じ速さで走ることが出来る様、性能調整を行う方針だ。この性能調整について話し合うため、ACOは、テクニカルダイレクターであるダニエル・フェルドリックスを鈴鹿まで派遣している。
     しかし、同じ日本の中で性能調整を行う場合でも、様々な行き違いが生じるように、概念の違い2つの団体の間で行う性能調整は、大きな困難が予想された。第一GTAの坂東正明社長自身が通訳の能力を疑問視するような状況であったことから、今回GTA側の担当者としてACOのダニエル・フェルドリックスと性能調整の話し合いを行ったのは鮒子田寛であったようだ。
     日曜日にGTAとACOが記者会見を行った際、GTCクラスの性能調整値は決定していなかった。しかし、ダニエル・フェルドリックスによると、基本的にSuperGTと大きく変わらない内容を想定しているようだ。

    ●アジアンルマンシリーズのエントリーは何処からやってくるのか?
     アジア地域において、LMP2カーは1台も存在しない。もちろんフォーミュラルマンも存在しない。GTEカーも日本に数台が存在するだけだ。FIA GT3カーとJAF-GT300マシンは、SuperGTのGT300だけでなく、GTアジアでも走っているが、現在アジアンルマンシリーズが抱える最も大きな問題は、エントリーが何処からやって来るのか?と言うことだ。ACOのレミー・ブルアールは、6月にルマンでアジアンルマンシリーズについての発表を行った後、30チームからのコンタクトを受けたと説明している。しかし、現在のところ、エントリーを表明したチームは居ないことも語っている。
     この状況を解消するため、ACOは、2013年のアジアンルマンシリーズの4つのクラスでチャンピオンを獲得したチームに対して、2014年のルマン24時間レースの出場権を与えることを決定している。しかし、ルマン24時間ではGTCクラスは存在しないため、FIA GT3カーやJAF-GT300マシンでGTCタイトルを獲得した場合、GTEクラスから、GTEマシンによって参加する権利を与える。しかし、これだけで、アジアンルマンシリーズへの参加を決定するチームは居ないだろう。

     鈴鹿1000kmの際、前座レースとしてGTアジアが開催されていた。鈴鹿におけるGTアジアは21台のエントリーを集めて、非常に賑やかなレースであることをアピールしていた。GTアジアは、アジア地域において、SuperGTのGT300クラスと共に、たくさんのFIA GT3カーが参加する賑やかなシリーズとして定着している。
     つまり、現実的にACOが目指すのは、GTアジアのエントラントを勧誘するか?GTアジア自体をアジアンルマンシリーズに取り込んで、21台のエントリーを確定すべきと考えられていた。

     ところが、現在のところ2013年のアジアンルマンシリーズへGTアジアのチームが参加する可能性は非常に小さいようだ。
     なぜなら、現在GTアジアは、2013年も今年と同様のカレンダーを組む計画だ。つまり、4月にマレーシアのセパンのF1GPの前座レースとして開幕して、6月のSuperGTセパンの前座レースまで、マシンをセパンに置いておく計画だ。GTアジアのGTマシンがマレーシアにある4月から6月、アジアンルマンシリーズは中国のズーハイと上海でレースを行う。GTアジアのエントラントの1/3は香港のミリオネラだ。しかし、香港から直ぐ側のズーハイでアジアンルマンシリーズがレースを開催しても、その時彼らのGTマシンはマレーシアにあるため、GTアジアのエントラントはアジアンルマンシリーズへ参加するのは難しい。
     彼らがアジアンルマンシリーズへ参加する可能性は、9月の富士スピードウェイのイベントだけだろう。
     では、2013年のアジアンルマンシリーズのエントリーは何処からやって来るのだろうか?

    Photo:Sports-Car Racing

    ●GTAとACOの提携
     元々GTAは、SuperGTのエントラントが他のレースに参加した場合、占有テストと判断して、何らかのペナルティを課すルールを設けている。つまり、SuperGTのエントラントは、他のレースへは参加出来ない。GTAとACOが提携する際、このルールの対象外イベントとすることが決定されている。つまり、SuperGTのGT300へ参加するレーシングチームとマシンが、他のレースへ参加しても、ペナルティを受けることはない。しかし、既に非常にスケジュールが混雑しているため、GTアジア同様、9月の富士スピードウェイ以外、SuperGTのレーシングチームが参加可能なアジアンルマンシリーズのイベントは存在しない。 

     シリーズチャンピオンに対しては、翌年のルマン24時間レースへ招待されても、たった1つのレースだけに参加するだけであれば、大きな魅力を見出すことは難しい。そこでACOと提携するGTAは、富士スピードウェイで行われるアジアンルマンシリーズに参加した場合、SuperGTのエキストラポイントを与えるプランを検討している。
     このエキストラポイントのプランは、日曜日に行われた発表会の際、突然明らかになった。そのため、現在のところ、何一つ具体的な内容は決まっていない。しかし、アジアンルマンシリーズに参加することによって、SuperGTにおける何らかのエキストラポイントが与えられるのであれば、たくさんのGT300チームが参加することだろう。
     現在のところ、富士スピードウェイ以外のアジアンルマンシリーズへ参加するエントラントを見出すことが出来ないことから、もしかすると、富士で優勝したチームは、ルマン24時間レースへの招待権を与えられるかもしれない。

     非常に不透明なシリーズだが、来日したレミー・ブルワールは、SuperGTの有力なエントラントを訪問して、アジアンルマンシリーズへの参加を募っている。残念ながら、当方は2013年のアジアンルマンシリーズへの参加を確定したレーシングチームを見出すことは出来ないが、少なくとも、9月に富士スピードウェイで行われるアジアンルマンシリーズについては、多数のGT300チームが興味を示している。
     ちなみに、当初ACOは、中国のズーハイと上海、モンゴルのオルド、インドネシアのセントュール、日本の富士スピードウェイの5つのイベントでシリーズを構成することを発表したが、鈴鹿の記者会見の際、新たに、もう1つの国で開催する可能性があることを公表している。鈴鹿では、どの国のどのサーキットであるのか? 明らかとしなかったが、4月から6月にマレーシアのセパンで開催するのであれば、GTアジアのレーシングチームの参加が見込める。7月から10月に日本で開催するのであれば、SuperGTのGT300とGTアジアのレーシングチームの参加も見込める。他の時期であっても、日本で開催されるのであれば、SuperGTのGT300チームの参加が見込めるため、シリーズの成立を考慮すると、最低限の選択であると考えられている。


    6月20日
    SpecialEdition 2014年ルマンLMPレギュレーション草案

    Photo:Sports-Car Racing

    ●プライベートチームに対して2011年エンジンルールの適用 5.5リットルエンジン復活
     14日定例記者会見においてACOは、2014年レギュレーションの草案を公表した。2014年レギュレーションは、今年のルマンでも明らかとなった、ファクトリーチームとプライベートチームの間に存在する、極端な性能差の是正、メーカーが望んでいる技術の向上、そしてコストの圧縮、そして大きなアクシデントへの対策等を大きなポイントとして構想されている。

     今年のルマンの場合、ファクトリーチームとプライベートチームの間には6秒以上のラップタイムの差が存在した。6秒とは、常識的に判断すると、別のクラスと判断すべき、極端に大きな差だ。
     最も困った問題は、勇敢なプライベートチームが参加を望んでも、優秀なエンジンを手に入れることが出来ないことだ。50馬力も少ないジャドDB3.4V8を採用しなければならなかったペスカロロやOAK、そして童夢の悲劇を見ても容易に理解出来る。
     50馬力も少ないにも関わらず、次々と壊れるのであれば、プライベートチームは参加しなくなってしまう。

     そこでプライベートチームについては、2011年までのルールの適用を構想しているようだ。2011年までのルールとは、最大5.5リットル以下のNAレーシングエンジン、アストンマーティンの様なGT1エンジンに象徴されるロードカーベースのエンジンが検討されているようだ。同時に、排気量の大きさに制限を設けず、排気量の大きさに応じて、最大4barのブースト圧を許すターボエンジンが提案されている。排気量の大きさを自由として、排気量に応じたブースト圧を設定するターボエンジンについても、一昔前のアウディやAERを想定しているようだが、ターボエンジンの場合、何らかの性能調整を盛り込む意図があるようだ。

     また、第二段階として、現在使用しているエタノールを10%含有するE10燃料に代えて、エタノールの含有量を20%としたE20燃料の使用が提案されているようだが、E10と違ってE20の場合、燃料の保管とエンジン対する腐食、そしてコストの問題が生じる可能性が大きいため、E20については、インフラが整うことが条件となる。
     コストの圧縮を考慮して、ディーゼルとガソリンの両方について、一般的なロードゴーイング燃料の使用も検討されている。

     また、100%電気エネルギーで走行するマシンの参加についても、話し合いが始まった。
     ハイブリッドのエネルギー源となっているエネルギーリカバリーシステムについては、カテゴリーを細分化することによって、ルマンのサルテサーキットの場合、1周毎0〜8MJの出力の放出を許す方向で話し合いが行われている。

    Photo:ACO

    ●車幅1.9m タイヤ幅14インチ ドライバーの目線はフロントフェンダーより上!
     2011年アラン・マクニッシュのアウディがGTEカーと接触して大きなアクシデントに発生したことを反省して、クルマのディメンションを根本的に変更するプランが採用されることとなりそうだ。
     まず、クルマの速さを抑えるため、車幅を現在の2mから1.9mへ10cm狭く、タイヤ幅も現在の16インチから14インチへ2インチ狭くすることとなりそうだ。逆に車重については、ファクトリーチームの場合850kg、プライベートチームの場合830kgまで軽くされることとなりそうだ。ちなみに、これらは、2014年ルールを適用したクルマに限定した項目で、5.5リットルエンジンを採用するプライベートチームについては、現在のところ、何も決まっていない。

     現在のLMP1カーは、ほとんどリアと同じ大きさの巨大なタイヤをフロントにも履く。そのため、ドライバーの視界は極端に狭くなっている。アラン・マクニッシュだけでなく、接戦の場合、最も重要な斜め前の視界が皆無であるため、ほとんどのLMP1ドライバーが危険な経験をしているようだ。ルール上タイヤの大きさはフロントとリアは同じであるため、タイヤ幅を14インチまで狭くするだけでなく、ドライバーの着座位置を高めることとなりそうだ。現在ドライバーの目線がフロントフェンダーの上端より高くすると共に、左右方向の視界を確保するため、ドライバーとコクピット後端(サイドウインドー後端)の距離を確保するため、ソライバーの着座位置を前方へ移動することを目的としてルール作りが行われている。

     しかし、このドライバーの視線を確保するルールを盛り込んだ場合、現在のLMP1カーのコクピットではドライバーが納まらない。より高いキャビンとすることが、このルールを盛り込む条件となる。

    Photo:ACO

    ●徹底したエアロダイナミックスの制限
     2012年ルールの要は、前後の4つのタイヤハウス上に、完全な穴の設置を義務つけたことだ。床下に空気が溜まることを防止するだけでなく、空力性能の低下が見込まれるルールだったが、今年のルマンのラップタイムを見ても明らかな様に、決してラップタイムは低下してない。また、床下へ溜まる空気を完全に防いだ訳ではなかった。
     そこで、2014年レギュレーションは、4つのタイヤハウスの内側にも穴を設けることを求めている。

     また、フロントノーズ左右に設けられるカナードウイング等のセッティングデバイスについても、よりシンプルなアイテムに限定するプランが話し合われている。しかし、カナードウイングは、セッティングの最後の砦であるため、空力開発により大きな時間とコストが求められるとして、反対するチームは多い。
     2014年レギュレーションは、2月15日の午後話し合いが始まったばかりだ。プライベートチームに対する2011年ルールの
    適用等、性能指数については、9月に発表されることとなりそうだ。全体ルールの正式発表は2014年1月1日だ。もちろん、1月1日にルールを発表されても、3月のセブリングでニューマシンを走らせることは出来ないことから、最終的な発表のことだ。
     ちなみに、プライベートチームに対する2011年エンジンエンジンの使用については、今年のルマンにおけるファクトリーチームとプライベートチームの間の極端に大きな差を考慮して、2014年以前に施行されることとなりそうだ。
     今年ジャドと契約して悲劇を味わったチームだけでなく、今年活動を休止したチームの幾つかは、2013年に施行されることを望んで、トヨタやHPDだけでなく、2011年ルールの大排気量エンジンの採用を検討し始めている。

    ***ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが付き合う方法

    ***クアトロを可能とした2012年のLMPレギュレーション

    ***2012年のルマンはFIAレギュレーションで行われる

    5月7日
    SpecialEdition ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが付き合う方法

    Photo:Sports-Car Racing

    ●2%ルール
     ACOは2004年レギュレーションによって、LMP1クラスにディーゼルエンジンのレギュレーションを設けた。メーカーの興味を集めるため、当時ディーゼルエンジンは850馬力を可能とする有利なレギュレーションを与えた。2006年アウディがルマンへディーゼルエンジンを持ち込む一方、2007年にはプジョーもディーゼルエンジンによってルマンへ復帰を果たした。アウディとプジョーのディーゼルエンジンは、2008年にはレギュレーションの限界と思われた850馬力を発生していたと考えられている。
     ところが、大多数のプライベートチームはガソリンエンジンを使っていた。2008年のガソリンエンジンのルールはせいぜい630馬力だった。2006年と2007年ペスカロロは、ACOに対して、ディーゼルエンジンカーとガソリンエンジンカーの速度差について、ルマンのサルテサーキットの彼方此方の速度のデータを示して、ルールの改正を求めている。

     残念ながら、ACOにとってメーカーの参加は重要であったことから、段階的に、事実上メーカーだけが使っているディーゼルエンジンの性能を引き下げる一方、ガソリンエンジンの性能を少しずつ引き上げた。と言っても、ほんの少しだけ大きなリdストリクターを与えられた2010年のガソリンエンジンが660馬力を絞り出しても、対するファクトリーチームのディーゼルエンジンは750馬力以上を発生していたため、どう贔屓目に見てもイコールコンディションとは判断出来なかった。

     速過ぎるLMPカーを遅くすることを目的として、2011年ルールが構想された際、FIAとACOは、エンジンの大きさを縮小するだけでなく、これまで批判の的となっていたディーゼルエンジンとガソリンエンジンの性能を整えることもテーマとなった。
     ガソリンエンジンについては、2010年までのLMP2エンジンをベースとして、NAの場合3.4リットル、ターボの場合2リットルに排気量まで縮小することが決まった。当初ディーゼルエンジンについても、3.4リットルの排気量が提案されたが、ある理由から、300cc大きい3.7リットルが許されることとなった。ディーゼルエンジンは、もちろんターボであるから、再び批判が巻き起こった。
     予算や技術が限られるプライベートチームが使うガソリンエンジンがたった3.4リットルのNAで、ふんだんな予算と大きな技術力を持つファクトリーチームが使うディーゼルエンジンが300cc大きいターボエンジンでは、批判も当然だった。
     そこで、FIAとACOは、ラップタイムが2%以上違うと判断された場合、性能調整を実施することを発表した。

    Photo:Sports-Car Racing

    ●性能調整は行われるのか?
     性能調整は、シーズン最初の2つのレースでのラップタイムが対象となった。2011年の場合ILMC、ALMS、LMSの3つのシリーズが存在したが、既にALMSは性能調整を実施していたため、ILMCの最初の2つのレースでデータを得ることとなった。そして2011年の場合、実際にFIAとACOは性能調整を実施して、ルマンでは性能調整を行った状態でレースが行われている。
     性能調整が必要である程速さに差があるため、2012年は最初からディーゼルエンジンの性能を7%引き下げる一方、2011年同様最初の2つのレースで速さを判定して、再度性能調整を行うことが決められた。

     2012年も最初の2つのレースが性能調整の対象となっている。2012年の場合、明確にWECの最初の2つのレースを対象としているが、WECとALMSの開幕戦だったセブリング12時間の場合、2012年ルールで参加したWECエントリーのLMP1カーは、HPDの2台とOAKの1台だけだった。唯一のファクトリーチームであるアウディのディーゼルエンジンカーでさえ2011年ルールだった。
     ちなみにセブリングに参加したアウディは、2011年ルールのクルマに2012年の7%性能を引き下げたエンジンを組み合わせている。2012年ルールは、4つのタイヤハウスの上に大きな開口部の設置を義務付けているため、大きく異なる空力開発が行われている。1月に発表会を行ったトヨタが、タイヤハウスの開口部でなくスリットを設けていたため、アウディも神経質になっていたようで、2月にアウディが2012年バージョンのR18を公開した際、タイヤハウス上の開口部だけでなくタイヤハウスそのものを巧妙にカモフラージュしていた。

     2012年ルールによって大きく空力性能が落ちると考えられているため、これでは性能調整のデータを収集できない。つまり、セブリングでは性能調整のためのデータを収集する条件が整っていなかった。現在のところ、2日前に行われたWEC第2戦スパ-フランコルシャン6時間で得られたデータだけが性能調整の指針となると考えられている。

    Photo:Sports-Car Racing

    ●性能調整の方法
     WECのレギュレーションによると、2%以上ラップタイムの差があることが確認された場合、リストリクター、車重、燃料タンクの3つによって性能調整を行う旨が記載されている。2日前に行われたWECスパ-フランコルシャン6時間の場合、ディーゼルエンジンカーとガソリンエンジンカーは、速さについては2%以上の大きな差があった。少なくとも、レースにおける、1スティント毎の周回数もディーゼルエンジンカーの方が2%以上有利だった。実際に補給した燃料の量が不明であるため、燃費については、少々曖昧だが、少なくとも、速さと燃費の両方でディーゼルエンジンカーの方が2%以上有利であったと考えられている。
     つまり、充分に性能調整を行う条件を満たしている。

     問題はアウディの唯一の対抗馬と考えられるトヨタが参加しなかったことだ。ご存じのように、スパのレースに参加せず、マニクールでテストを行うトヨタに対して、FIAは記者会見の実施を要求した。アウディも列席する少々曖昧な記者会見だったが、当然ながら、トヨタは性能調整の対象とはならない。と同時に、トヨタ抜きで性能調整を行う場合、少々困った事態が発生しているようだ。

     アウディの性能を引き下げた場合、アウディの唯一の対抗馬であるトヨタが有利となってしまう。つまり、アウディの性能をそのままとして、プライベートチームが走らせるガソリンエンジンカーの性能だけを引き上げるプランが有力だ。
     ところが、昨年を例にとると、大きなリストリクターを与えられても、ジャドは対応することが出来なかった。今年プライベートチームが使っているガソリンエンジンは、ペスカロロとOAKのジャドエンジン、レベリオンのトヨタFNエンジン、HPDのホンダエンジンの3つが存在する。ペスカロロの場合、新しいペスカロロ03はルマンでデビューするため、性能調整の対象とはならない。同じペスカロロの童夢もセブリングに参加しなかったため、少々微妙な状況だが、少なくともOAKは性能調整の対象だ。トヨタのFNエンジンを使うレベリオンとホンダエンジンは大きなリストリクターに対応出来るだろうが、それもチームとの契約次第と言えるだろう。
     つまり、昨年同様、大きなリストリクターより、車重の減量が、性能調整に盛り込まれる可能性が高い。

     速さについての性能調整は、何らかの方法が可能であるかもしれないが、問題は燃費の性能調整だ。この点についても、アウディの燃料タンクを小さくしたら、トヨタが有利となってしまう。と言うことは、再びガソリンエンジンを使うプライベートチームに苦労を強いることとなるのだろうか?例えばガソリンエンジンのプライベートチームに対して、10リットル大きな85リットル燃料タンクの使用を認めるとかだが、同時に燃料補給のパイプの直径を拡大しなければ、ピットインに要する時間が長くなってしまう。

     非常に苦労させられそうな状況だが、昨年と同じであれば、来週FIAとACOは、性能調整の内容を発表するだろう。 

    *注:Sports-Car Racing Vol.20において、2011年レギュレーションの特集記事が掲載されます。少々お待ち下さい。

    Photo:Sports-Car Racing


    3月4日
    SpecialEdition クアトロを可能とした2012年のLMPレギュレーション
     
    Photo:AudiAG
     
    ●4輪駆動を可能とした2012年のレギュレーション
      2月29日夜アウディは、ミュンヘン空港に隣接するアウディの施設において2012年のLMPプログラムを発表した。今年のアウディのLMP活動の目玉は、R18をベースとしたハイブリッドカーを走らせることだ。現在のハイブリッドカーのルールは非常に複雑だ。2011年のルールは、それでも多少明快だった。前輪もしくは後輪のどちらか一方からしか回生することは許されなかった。そして、電気モーターによって駆動出来るのも、前輪か後輪のどちらか一方だけだった。 しかし、4輪駆動を禁止するルールが存在するため、エンジンによってリアを駆動しているクルマの場合、電気モーターをフロントに設置して、フロントで回生だけでなく駆動を行うことは禁止されていた。 一般的には電気モーターは、リアのみに設置するのが許されると判断されていた。

     ブレーキングの際、大きな能力を発揮するのは前輪だ。つまり、ブレーキングによって回生する際、前輪の方が大きな能力を発揮出来る。つまり、何もルールを設けなければ、ほとんどのエンジニアは前輪に電気モーターを設置して、前輪で回生と駆動を行うことだろう。しかし、4輪駆動を禁止するルールによって、前輪に電気モーターを設置しても、そのモーターが許される仕事は回生だけだった。
     ところが、回生と駆動が同軸であることは義務つけられてなかった。回生だけを行う電気モーターをフロントに設置してフロントで回生する一方、リアにも電気モーターを設置すれば、駆動を後輪で行うことが可能だった。
     また、あり得ないが、エンジンをフロントにれいあうとして前輪を駆動しているFFのLMPカーであれば、後輪で回生を行って、前輪を駆動することも許されている。この複雑なルールが設けられた理由は、厳格に4輪駆動を禁止しているためだ。

     しかし、フロントに回生を行うだけの電気モーターを設けて、リアには駆動だけを行う電気モーターを設けた場合、重くなる。第一フロントに電気モーターを設けると、貴重なノーズのディフューザーのスペースを浸食してしまう。
     そのため、空力的なデメリットを覚悟して、機能が限られる電気モーターを2つも設ける理由は無いと考えられていた。

     全世界の路上にハイブリッドカーが普及しようとしているにも関わらず、このままではハイブリッドのLMPカーを登場させるメーカーが現れない。そこでACOとFIAは、さらに複雑な2012年のレギュレーションを編み出した。
     4輪駆動のアドバンテージは、大きなトラクションを得ることが出来ることだ。特に低速域で大きな能力を発揮する。
     前輪に電気モーターを設置しても、駆動出来るのが、トラクションへ寄与しない速度に限定すれば、周囲を納得出来るとACOとFIAは判断した。そしてACOとFIAは、120km/h以上の速度の場合、フロントを駆動するのを可能とする2012年のレギュレーションを作った。

    Photo:Sports-Car Racing

    ●フロントに電気モーターを設けた場合のメリットとデメリット
     既に数年前からトヨタは、4輪総てに電気モーターを備えるハイブリッドLMPカーを作って走らせていたと考えられている。2012年に条件付きながら、前輪の駆動を認めるルールが出来たことで、最も参加が期待されたのはトヨタだった。
     実際トヨタは、2012年のデビューを目指してLMPカーの開発に取り組んでいた。東日本大震災の影響によって遅れたかもしれないが、トヨタは、前輪と後輪の両方に電気モーターを設置可能なTS-030ハイブリッドLMPカーを開発している。前輪用電気モーターをアイシンが、後輪用をデンソーが開発する一大プロジェクトとなっていた。
     2012年に条件付きでフロントの駆動を許したレギュレーションが設けられる以前、数年前から慎重に研究を行っていたらしいトヨタは、前輪に電気モーターを設けた場合のメリットだけでなくデメリットも知っていたようだ。

     充分な能力を発揮する電気モーターは、重いだけでなく、決して小さくはない。現在のLMPカーは、前車軸後方へのレイアウトが義務つけられるドライバーのつま先部分を上方に設けて、ノーズ床下に大きなフロントディフューザーを設置している。フロントのディフューザーはメインのディフューザーの能力を左右する存在であるため、どのエンジニアも妥協することなく、自由に大きなスペースとカタチをデザインしたい。そのため、前輪に電気モーターを設置する場合、設置する場所を確保するのが非常に難しい。
     第一、どのように工夫しても、フロントのディフューザーの上に電気モーターを設けるため、重心が高くなってしまう。
     これらの理由から、1月にポールリカールで走り出したトヨタTS-030は、後輪に電気モーターを備えていた。

     また、ACOは2回のブレーキングの間にハイブリッドによって取り出すことが出来るエネルギーについて、2011年から0.5MJ以下としている。「2回のブレーキングの間」と言う意味を、判り易く述べると、1回ブレーキングすれば、次にアクセルを踏み込んだ際、新たに0.5MJのエネルギーを取り出せることだ。このルールにも幾つかの条件が設けられ、ルールを回避するため、便宜上ブレーキペダルを踏むだけの簡単なブレーキングはカウントされない。1秒以上のブレーキングが対象となっている。
     現在トヨタが後輪に設置している電気モーターは非常に大きく、300馬力相当と言われている。300馬力をKwに換算すると220Kwを超えてしまう。と言うことは、トヨタは2回のブレーキングの間に電気モーターによって駆動出来る時間は2.3秒以下に過ぎない。
     逆の見方をすると、ハイブリッドカーに積む蓄電器は、どのようなシステムであっても0.5MJを貯める容量で充分だ。

     トヨタが新たに開発した3.4リットルV8エンジンの出力は、どんなに少な目に見積もっても530馬力以下とは考えられない。530馬力+300馬力=830馬力であるから、後ろの2つのタイヤだけでトラクションを確保するのは難しい。
     ポールリカールで走り出した際TS-030は、タイトコーナーから加速する際、大きくテイルスライドさせて加速していた。
     つまり、電気モーターによって大きなパワーを手に入れても、後ろの2つのタイヤだけで、その大パワーを使いこなすのは難しい。

    Photo:Sports-Car Racing

    ●常に大パワーを発揮出来るトヨタ   120km/h以上でフロントを駆動するアウディ
     2011年のプチ-ルマンの際、アウディはハイブリッドカーを開発していることを認めると共に、リアに備える電気モーターによって、ブレーキングの際、瞬時に0.5MJを回生するのは難しいと説明していた。その時点から、我々はアウディがフロントに電気モーターを設置するハイブリッドカーを開発していることを予想していた。
     同時にアウディは開発しているハイブリッドシステムについて、以前RfHにおいて童夢を走らせていたイアン・フォーリーが開発したフライホイールハイブリッドであることを認めていた。イアン・フォーリーのハイブリッドシステムは、我々は童夢が買い取ると思っていたが、結局KERSを求めていたウイリアムズが専門の会社を設立して、開発することとなった。その後ポルシェが買い取って、997GT3Rハイブリッドレーシングカーを開発したことで、開発が順調に進んでいることが明らかとなった。
     ポルシェ997GT3Rハイブリッドレースカーは、正式なルールに基づいたクルマではなく、あくまでもテストカーだ。もちろんフロントに電気モーターを備えてフロントを駆動していた。つまり、電気モーターを作動させる場合4輪駆動だった。

     元々ディーゼルターボエンジンを使うアウディは、R18の3.7リットルV8でも800Nm以上の巨大なトルクを持っている。ディーゼルエンジンだけでも、後ろの2つのタイヤでトラクションを獲得するのは難しい状況だった。トヨタの様に300馬力に達する大出力でなくても、新たに電気モーターの出力を後輪で受け持たせるのは不可能と考えられていた。
     アウディがR18のために開発したイアン・フォーリーのハイブリッドシステムは、これまた、ポルシェのものと瓜二つな、フロントに設置される2つの電気モーターを採用している。出力も2011年のポルシェと同じ75Kwであるから、同じ電気モーターであるかもしれない。
     前輪を駆動する電気モーターは、デフを排除するため、左右別々に75Kwのものを2つ設置している。最も困難な電気モーターの設置場所だが、アウディが公開したイラストを信じるのであれば、助手席のつま先のあたりだ。もちろん、フロントのディフューザーによって、ハイノーズとなっているため、かなり高い位置に電気モーターは設置されている。このイラストを信じるのであれば、通常のR18と同一のモノコックを使っているようで、少なくとも、同じ2012年バージョン同士であれば、カタチの違いはない。
     こうして完成したR18ハイブリッドカーにアウディは、伝説のクワトロの名前を与えた。

     フロントに電気モーターを設置してフロントを駆動するR18クワトロは、75Kwの電気モーターを2つ備えるため、合計しても150Kwにしかならない。220Kw以上のトヨタと比べると非常に小さい。しかし、2回のブレーキングの間に取り出せる0.5MJから計算すると、3.3秒以上アシスト出来る。先に記した通り、トヨタは2.3秒以下と考えられるため、アウディの方が約1秒長く電気モーターを使用出来る。
     常に220Kw以上のパワーで後輪をアシストが可能なトヨタと違って、アウディがフロントを駆動可能な状況は120km/h以上の速度であるから、コーナーを立ち上がる際、ディーゼルエンジンだけで加速を開始して、120km/hを超えたら電気モーターが3.3秒作動する。
     しかし、ノーズのディフューザーの上にレイアウトされる電気モーターによって、フロントの重心が高くなるため、コーナーリングの際、特にコーナーに侵入する際弱点が出るかも知れない。
     トヨタが、ブレーキングの際、後輪から0.5MJを回生可能だとすると、加速する際、常にトヨタは220Kwのパワーでアシストすることが出来る。しかし、タイトコーナーから加速する際、限られるトラクションによって、アシスト量を減らさなければならない。
     どちらが優れているのか? 5月のスパ-フランコルシャンでの対決を楽しみとして待つことにしよう。
    *注:Sports-Car Racing Vol.20に特集記事が掲載されます。

    2月2日                                                                                
    SpecialEdition ルマンへ復活する童夢  ペスカロロ童夢の誕生!

    Photo:Sports-Car Racing
    ペスカロロと提携することによって、カラーリングも大きく変わるようだ。
    このイラストは検討中のカラーリング案の一つ。

    ●童夢の復活
     2008年のルマンが終了した時、童夢の面々は、「次の段階への橋渡しは完了した」と判断していた。ところが、その直後リーマンショックが勃発した結果、童夢の計画は崩壊してしまった。リーマンショックのほとぼりが冷めると、童夢は、密かにS102の開発を再開した。2009年には1.6mリアウイングが義務着けられ、多少なりともダウンフォースを取り戻そうとしたエンジニアの努力によって、スワンネックが一般的に使われるようになった結果、童夢はS102にスワンネックでマウントされる幅1.6mのリアウイングを取り付けた風洞実験を行っている。2011年にシャークフィンが義務着けられると、シャークフィン付きのS102による風洞実験が行われた。2010年には、部分的にアップデイトしたS102によってテスト走行も行われた。
     充分なテストが行われた訳ではないが、可能性を見出すには充分だった。しかし、テスト走行まで行ったにも関わらず、林みのるは、魅力に乏しいとして、童夢自身によるルマンプロジェクトを棚上げにしてしまった。

     林みのるがルマンへの魅力を失っていた時期でも、童夢には様々なレーシングチームからジョイントの話しが持ち込まれた。幾つかの名の知れたレーシングチームだけでなく、送金依頼書を偽造してまで童夢とジェイントしようとしたレーシングチームも存在している。エントリーの期限が過ぎて、心配した童夢の担当者が連絡したところ、呆れた状況が発覚したこともあった。

     2011年夏頃から、再び林みのるはルマンへの魅力を見出したようだ。当時、その後ヨーロッパをどん底に陥れる通貨危機の勃発前だったことから、ルマンではアウディとプジョーが激戦を繰り広げていた。2012年にはFIAによってWECが行われ、富士スピードウェイでも開催される予定だった。しかし、林みのるの興味は少々違うところにあったようだ。

     当時ACOとFIAは、ディーゼルエンジンが圧倒的に有利だったレギュレーションの見直しを行っており、2012年には7%ディーゼルエンジンの性能が引き下げられる予定だった。
     到底ディーゼルエンジンのアドバンテージは7%だけとは考えられないが、林みのるは、童夢がルマンに復帰する良い機会と判断した。早速様々な調査が行われ、10月に林みのるは、2012年童夢がルマンへ復帰することを決心した。

    Photo:Sports-Car Racing
    この写真でも判る様、2008年のS102は、アウディを手こずらせる速さを披露した。

    ●待望の大きなフロントタイヤとジャドV8を使用するS102.5
     林みのるの決定が10月で、既に童夢がS102と言う、優れたベースモデルを保有していることを考慮すると、充分に早い決定であったと思われた。しかし、2011年ACOは新しいレギュレーションへ移行しており、ガソリンエンジンの排気量は3.4リットルに制限されていた。2011年は移行期間として、従来の大排気量マシンも、小さなリストリクターを装着することで参加が許されたが、2012年にはACOとFIAは、完全に新しいルールを施行する方針だった。

     林みのるの最初の計画は、2月中に日本でシェイクダウンテストを行って、その後ヨーロッパへマシンを送って、充分なテストを実施する計画だった。しかし、2月に新しいエンジンを搭載するマシンを走らせる場合、10月の決定は少々遅かった。
     高性能な3.4リットルのガソリンエンジンは、日本のFNやGT500でも使われているため、ジャドやザイテックだけでなく、少なくともルール上はトヨタ、ホンダ、ニッサンのFN/GT500エンジンも使用可能だった。ホンダの様に、北アメリカのHPDによるLMP1専用エンジンも存在した。2009年までLMP2に参加したポルシェも有力なエンジンビルダーだった。

     ところが、FNとGT500はルマンとはディメンションのルールが違うため、最適なLMPエンジンではない。このことは、2011年にトヨタのFNエンジンを搭載したローラをILMCで走らせたレベリオンの成績でも、容易に判断出来るだろう。
     2009年まで強さを見せつけたポルシェ、そして、そのポルシェと激戦を繰り広げたHPDは有力候補だろう。しかし、現在のトップレベルのLMPカーは、トランスミッションにパドルシフト機構が盛り込まれている。もし、これらのエンジンを使うのであれば、トランスミッションも含めた開発をやり直す必要があった。

     S102には、ジャドのGV5.5S2 V10エンジンと、ザイテック製のパドルシフトシステムを組み合わせたXトラック製トランスミッションが使われていた。ザイテックのパドルシフトシステムは電磁石を使い、非常に素早く確実な作動を行うが、ジャドのエンジンコンピューターと適合しなければ、確実な作動は得られない。2007年秋から2008年にかけて童夢は、ジャドのエンジンをコントロールするコンピューターとザイテックのパドルシフトシステムをコントロールするコンピューターの最良のセッティングを確立するため、何度もテストを行い、ジャドとザイテックのコンピューターの最良のセッティングを見出している。
     ザイテックエンジンは可能かもしれないが、もし、HPDやポルシェのエンジンを使うのであれば、この開発をやり直さなければならなかった。つまり、林みのるが定めた2月に走ることは到底不可能だった。
     その結果、従来のデータを活かして開発することが可能なジャドDB3.4 V8を使用することが決定した。

     S102の大きな特徴は、モノコックフレームの内側にエンジンを取り付けていることだ。カーボンファイバー製の特徴的なリアフレームを備えて、エンジンはその内側にレイアウトされている。元々S102が搭載していたジャドGV5.5S2 V10エンジンのバンク角が72度であるのに対して、DB3.4 V8エンジンのバンク角は90度であるため、我々素人は、S102のスリムなリアフレームの内側にエンジンが入るのか?と心配してしまうが、バンク角は広くでも、DB3.4 V8の全長はGV5.5S2 V10より100mmも短いため、一切フレームを改造することなく、DB3.4 V8エンジンはS102のフレームの内側に取り付けることが可能だった。

     S102が、このような特徴的なフレームを採用した理由は、可能な限り大きなフロントタイヤを履き、その大きなフロントタイヤの能力を引き出すため、前後の重量配分を極端に前寄りとするためだった。残念ながら、2008年にS102が誕生した時、ミシュランは、大きなフロントタイヤを間に合わせることは出来なかった。翌2009年ミシュランは、リアと同じ幅370mm、直径710mmの大きなサイズのフロントタイヤを開発した。しかし、大きなフロントタイヤの能力を引き出そうとすると、逆にリアのトラクションが失われてしまい、結局ミシュランは、新たなサイズのタイヤの開発に取りかかることとなった。

     そうして誕生したのが、幅を10mm狭い360mmとした新しいフロントタイヤだった。
     リアタイヤより幅が10mm狭くても、従来と比べられないくらい大きなフロントタイヤであるため、フロントタイヤに充分な荷重を与えることが、能力を引き出す条件となる。つまり、2008年からS102が求めていた最適なタイヤを手に入れた。
     軽量コンパクトなV8エンジンと大きなフロントタイヤを採用したことから、童夢らしくS102からS102.5と改名された。

    Photo:Sports-Car Racing
    2010年に作られたテストカー。テストカー故ジャドV10を搭載して、従来と同じ小さな
    フロントタイヤを使うが、既に後方が盛り上がったリアフェンダーとスワンネックでマウン
    トされる1.6mリアウイングが使われている。

    ●最良の空力性能と最良の操縦性を目標としたS102.5
     ほとんどリアと変わらない大きなフロントタイヤの能力を引き出すには、前後の重量配分をフロント寄りとするべきだが、前後長が100mmも短いエンジンを組み合わせることによって、S102.5は前後の重量配分を50:50とすることが可能となった。計算上リアよりもフロントに大きな荷重を与えることさえ可能であるようだ。
     しかし、大きなフロントタイヤによって、フロントノーズ床下のフロントのディフューザーのスペースは大きく削減されてしまう。2008年に童夢がミシュランへ大きなタイヤを求めた際、控えめに要求した最大の理由はここにある。

     大トルクのディーゼルターボエンジンを搭載するアウディ、そして強力なトルクを誇るハイブリッドのトヨタも同じタイヤを履くため、S102.5が成功するには、大きなフロントタイヤを活かす、絶妙な前後の重量配分が求められる。巨大なディーゼルターボエンジンを搭載するアウディは、3mを超える極端に長いホイールベースを採用することによって、前後の重量配分を前寄りとしている程であるため、少々空力性能に不安を抱えている。もし、トヨタがフロントに電気モーターを備えるのであれば、充分に前寄りの前後重量配分が可能となるだろうが、その場合、ノーズ床下のディフューザーのスペースが限られてしまう。
     新しいミシュランの大きなフロントタイヤの能力を引き出すことが出来るのは童夢だけと考えられている。

     しかし、フロント寄りの前後重量配分とした場合、ブレーキングやターンインで速さを発揮出来るが、リアの荷重が減るため、トラクションが確保し難くなってしまう。しかも、2009年以降ACOは、LMPカーに対して、幅1.6mの小さなリアウイングの使用を義務着けているため、リアのトラクションを確保するのが、デザイナーにとっての重要な仕事となっている。
     この相反する要求を満足させるため、エンジニア達は慎重な開発が求められている。
     現在のところ、S102.5の前後重量配分は極秘となっている。どうやら、セッティングに応じて、いくつかの選択が検討されているようだが、パワーを持たない童夢がルマンで成功する重要なポイントであるのは間違いないだろう。

     また、アウディのような巨大な3.7リットルデーゼルターボエンジンは当然だが、ハイブリッドにおいても、インバータやキャパシタ、そして電気モーターを冷やすため、大きな冷却能力が求められる。つまり、大きなラジエターが必要となるため、サイドポンツーンを低くコンパクトに仕立てるのは不可能だ。ところがガソリンエンジンの場合、たった3.4リットルの8つのシリンダーを冷やすだけであるため、非常に低くコンパクトなサイドポンツーンしか必要とされない。

     S102.5のサイドポンツーンは低くコンパクトであることから、デーゼルターボエンジンやハイブリッドカーよりも前面投影面積を小さく納めることが可能だ。ディーゼルターボのアウディやハイブリッドのトヨタがどんなに素晴らしい加速性能を発揮することが可能でも、前面投影面積が大きいことから、たぶん、最高速度は童夢S102.5の方が速いことだろう。
     大きなフロントタイヤの能力を引き出して、素早くターンインする操縦性、そして速い最高速度が可能なら、充分に蜂の一差しを期待することが出来るだろう。

    Photo:Sports-Car Racing
    この写真も少々前の風洞実験。シャークフィンが取り付けられ、後方が盛り上がったリ
    アフェンダーと1.6mリアウイングが組み合わせられているが、ボディ全体はS102と大き
    く変わらない。リアフェンダー上のスリットも存在しない時期。

    ●ペスカロロと連携する童夢   ドライバーは既にニコラス・ミナシアンとセバスチャン・ブルディと契約
     日本のレーシングチームにとって、ルマンやWECへ参加するには、新たなレーシングチームを組織しなければならないことが、非常に大きなハードルとなっている。2012年の計画のため童夢は、独自にレーシングチームを組織するのは難しいと判断していたようだ。つまり、ヨーロッパの優秀なレーシングチームと提携すること検討していた。
     2011年夏以降ヨーロッパで通貨危機の嵐が吹き荒れる中、様々なレーシングチームが活動を見直していたため、場合によっては、それらのレーシングチームの活動を肩代わりすることも可能だったかもしれない。この時期の童夢は、様々なヨーロッパのレーシングチームと交渉しているが、最も強力と思われたペスカロロとの提携を選択することとなった。

     2011年に復活したペスカロロのスポーツカーチームは、現在ペスカロロチームと呼ばれている。2010年まるまる1年間活動を休んだにも関わらず、フランスの英雄アンリ・ペスカロロが率いるスポーツカーチームは、テクニカルディレクターのクロード・ガローピンと共に、昔ながらのメカニック達が集結した。そして復活初年度、LMSにおいてシリーズ2位を獲得した。
     2011年の場合、ジャック・ニコレをはじめとする支援者の助けも大きかったかもしれないが、その実力は非常に素晴らしい。2012年の活動に向け、ペスカロロはチーフトラックエンジニアとしてリカルド・ディヴィラと契約していた。リカルド・ディヴィラは日本でも様々なレーシングチームで仕事を行っていたエンジニアであるため、知っている方々も多いことだろう。この様に復活したペスカロロへは、優秀なメカニックとエンジニアが集結しようとしていた。

     リカルド・ディヴィラは童夢とも旧知の仲だった。ペスカロロの強力な体制を知った童夢はペスカロロと話しを進めて、2012年の活動について、ペスカロロのスポーツカーチームと提携することを選択した。
     童夢はペスカロロと契約するまで、S102.5を日本でシェイクダウンさせた後ヨーロッパへ送り出す計画だったが、優秀なスタッフを抱えるペスカロロと契約したことによって、S102.5はルマンのペスカロロの工場で組み立てられることとなった。もちろん、シェイクダウンテストはルマンのブガッティサーキットで行われる。

     ペスカロロと提携することによって、ほんの少し余裕が出来たことから、現在シェイクダウンテストは3月初めに行うことを計画しているようだが、その時期ルマンシリーズの合同テストがポールリカールで行われる。
     童夢とは別にペスカロロは、01Evoの発展型にS102.5と同じジャドDB3.4 V8を組み合わせたニューマシンを用意している。ペスカロロは、このニューマシンの耐久テストをポールリカールのルマンシリーズテストで行う予定だが、同じ時期に予定されているS102.5のテストはシェイクダウンであるため、予定通りブガッティサーキットで行われる可能性が高い。

     既に童夢へはペスカロロのスタッフが入って仕事を行っている。充分な開発を行うため、多くのテストが予定されているが、童夢では、テストだけでなく、ルマン前のWECでもS102.5を走らせる計画を立てている。ルマン前に行われるWECはセブリング12時間とスパ-フランコルシャン6時間しかないため、もちろんスパ6時間でS102.5はデビューする。
     スパではトヨタもTS030をデビューさせるため、ゴールデンウィークの予定が決まってない方々は、渋滞の中富士を目指すのを止め、A380でフランクフルトへ飛び、スパまでアウトバーンを走るヨーロッパ旅行を計画するのも一考かもしれない。
     童夢とペスカロロの契約はルマンまでで終了するが、童夢は10月に行われるWEC富士はどうするのだろうか?

     ドライバーについては、既にニコラス・ミナシアンとセバスチャン・ブルディと契約した。セバスチャン・ブルディはプジョーのエースドライバーだったと考えられている。プジョーの計画が崩壊したことによって、何人かの元プジョードライバーがペスカロロと童夢へ売り込んだ結果、童夢は最も有能と考えられたセバスチャン・ブルディと契約したようだ。
     林みのるは日本人ドライバーを一人乗り組ませる計画だが、5月に行われるWECスパと同じ週にSuperGT富士が開催される予定であるため、現在のところ、最終的な決定を得ていない。もちろん、誰でも知っている優秀な日本人ドライバーだ。彼が乗らない場合、3人総てがプジョー出身のスプリンターによって、S102.5は操られることとなるかもしれない。
     しかし、ワークスチームと対抗出来る強力なドライバー陣であるのは驚くばかりだ。

     2012年の童夢は、これまでと違って、遊びや虚仮威しは皆無で、実質的な面で非常に強力な内容だ。もしかしたら、ドライバー陣まで含んだ内容は、史上最強の童夢スポーツカーチームと言えるかもしれない。
     蜂の一差しどころか、2012年のスポーツカーレースの行方を左右する大きな存在であるかもしれない。

    Photo:Sports-Car Racing
    ほんの少し前のS102.5。大きなフロントタイヤを履きながら、ノーズ床下の空気を吸い
    出すため、フロントフェンダー後方を小さく絞っていることに注意。リアフェンダーやリア
    ウイングの翼端板は、明らかに最終バージョンとは違う。

    *Sports-Car Racing Vol.20にて特集記事が掲載されます。


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